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読書記録:三千円の使いかた (中公文庫) 著 原田 ひ香 

【節約を目的にせず、幸せになる為の手段として用いる】 


【あらすじ】
就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?

知識が深まり、絶対「元」もとれちゃう「節約」家族小説!

あらすじ要約

御厨家の女性達が直面する、人生における試練と将来の不安を、お金を節約する事で乗り切る物語。


人生にはどうにもならない事が沢山ある。
例えば、年齢、病気、性別、時間。
そんなどうにもならない事は受け入れるしか無い。むしろ、変えられる事に眼を向けた方が建設的。 お金を管理する事はやろうと思えば誰でも出来る。働く事が、人生の意味になるのは虚しい。
その貯めたお金で何がしたいか、それが重要。
日々を節制してコツコツと地道に生きる事で。

お金や節約は、人が幸せになるための物。
それが目的になってはいけない。
これから先、何が起こるか分からない人生、自分に合った生き抜く知恵がある。
そして、結局、お金とは使い方によって、如実にその人の人間性が出る物で。
お金の価値観とは、性別や年齢によってかなり変わってくる。
無駄な事にはビタ一文も使いたくない人もいるだろうし、思い切って沢山お金を使いたい人もいる。

周囲やSNSを見てはやるせない気持ちになって、それを誤魔化す為に、お金を貯める事が漠然な正義なのだと錯覚してしまう。
しかし、お金をいくら貯めても、心の底から欲しい物は手に入らない。
他人を羨むのではなく、今自分が持っている物に感謝を捧げて、自他境界線をしっかりと敷く事。

人生設計とは、何も書かれていない地図に思い思いに自分の願望を書いていく素敵な物だけれど。
その裏では、本人しか知り得ない葛藤や苦悩が存在して。
その冷酷な現実との問題は切っても切り離せない。

言ってしまえば、お金を貯めたり、稼いだりするのが幸せなんじゃなくて。
節約、貯金の先で自分にとって重要な物を掴んで叶える事が一番大切なのだろう。

今は他人の幸せが容易に可視化出来て、どうしても自分の境遇と比較してしまうが。
その妬み嫉みを越えた先で、自分なりの質素な生活を送る事に幸福を感じられる事こそが、本当の幸せなのだろう。
高望みせず、自分の身の丈にあった、分相応な生活を慎ましく送っていれば、いずれこれから先の人生は拓けていく。

時間を重ねるにつれ、経済的な格差は広がる一方である。
ボードゲームのような物だ。
時間があれば、能力と経済力が高まり、能力と経済力があれば資金が増える為だ。
けれど、他人に羨ましがられるか、他人よりもいいか生活かどうかは、個々それぞれの判断基準にすぎない。

何歳であっても新しい職を始めるには勇気が少なからず必要だけど、自分を必要としてくれる場所を見つけに行くのは素敵な事で。
社会と何かしら繋がって、他者に貢献する事で、自分の居場所を確立していく事は人生を長く生きていく為には必要な事だ。
いくら、過去に戻っても同じ選択をするだろうから。
現状を出発点として、どんな事ににも挑戦出来る好奇心とバイタリティーこそを養うべきだ。

三千円をどう使うかで人生が決まるとは確かに言い得て妙だ。
その三千円で一日をどう使うのか。
はたまたその三千円さえも貯蓄に回すのか。
その使い道を一生懸命に考えて、やりたい目的を見定めていく。
きっと、その積み重ねが人生なのだから。
その為に、投資や資産形成など推奨されるが、もっと敷居を低めにして、毎日家計簿をつけてみるのも良いかもしれない。
普段生活している中で、何気なく出費している物が明確になってくると、自分の今の現状がよく分かってきて、惰性で物を買う事が減って、無駄なお金を倹約しようとする気持ちになってくる。

ここでの登場人物の多くが、他者と比較して悩む事になるのだが、人生はお金が全てではない。
奨学金があるから結婚を取りやめようとしたり、安月給だから結婚した事を後悔したり。
そんな風に、あり得たかもしれない可能性を切り捨てて、お金に振り回されるような人生は送りたくない。

今まで堅実に貯めてきたお金を人生における節目で、ここぞって使っていく。
それこそがお金を活かすという事なのかもしれない。

そうやってお金と上手く付き合っていけば、思いもよらない人生の変化に気付くのだろう。










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