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中世絵巻物の世界に少しずつ その2

暑い日が続きますね、私は神戸にいるのですが関東の暑さは強烈そうです。皆さまご自愛くださいませ。

以前に国立国会図書館デジタルコレクションに収められている『一遍聖絵』の世界について記事にしました。今回はその後の続きで、中世の世界について他の本で書かれている内容を、この絵巻物の画像データから探して紹介したいと思います。

扇の骨の間から見る

扇で顔を隠しつつ、その骨の間から”見る”というしぐさの人が絵巻物の中で描かれています。団扇のように扇であおいでいるわけではないようです。

7巻より 右側の店の前にいる人です。
拡大してみました。他の人と比べてちょっと違和感ありますね。

この『一遍聖絵』には他の巻でもこのしぐさの人が描かれています。また同じく中世の絵巻物である『年中行事絵巻』や『法然上人絵伝』にも登場します。いくつかの本に、このしぐさについての言及がありました。何か日常と違う光景を目にしてしまい、その影響を受けないようにする魔除けの意味があったのでは、という説もありました。ただ、上の絵を見る限りはそれ程に異常事態が発生しているようには思えません。しかも大勢の中で二人だけのしぐさというのも気になります。『年中行事絵巻』の場面は、年中行事の一つである闘鶏を見ている人のしぐさでした。ですから、こちらも特別な場面ではないように思います。

顔を隠すという意味では、女性が袖で顔を隠すしぐさは絵巻物の中でいくつも出てきます。ただ、扇の骨の間から見るというしぐさは、この絵巻物の中でも僅かしか出てきません。扇の上側(こういう表現があっているのか)から覗き見るなら、もしかしたら口元を隠すつもりのような気もします。わざわざ扇の骨の間から見るのは何か意味があるのか無いのか、気になります。

かぶり物

絵巻物の世界で男性は、ほぼ帽子を被っています。いわゆる烏帽子で、何もかぶっていないのは牛飼い童や子どもくらいです。当時は寝る時も帽子を被ったままだったと言います、今は考えられないですね。女性も旅では笠が必需品です。『一遍聖絵』は旅の様子も多く描かれており、老若男女問わず、服装も本当に多彩です。ただ、よく探すと大人の男性で無帽の人もいます。そして、この人たちは服装から職業が判別しにくいのです。何者なのでしょうか。

6巻より 旅の様子では女性は笠姿ですが、この笠も様々な種類があります。
成人男性は皆さん帽子ありです。
6巻より 額を地面につけて熱心に拝んでいるのに従者?らしき人はマネしません。
ここでも成人男性は帽子ありです。
12巻より 一遍上人の臨終に集まった信者の人々です。赤枠の人が気になります。
左の赤枠拡大しました。髭があるから男性と思いますが無帽です。
ちなみに左の覆面の3人はライ病などに罹患した乞食、という見方があります。
右の赤枠です。なんだか旅芸人の一座、のように見えます。この4人は何故か無帽です。

時代が進んでいくと、帽子を被る人もだんだん減ってくるようです。何だかウォーリーを探せ!みたいになってきました。大勢の中で少し周りと異なった人がいたら、どういう人か想像してみるのも面白いですよ。私も先に関連する本を読んだので気を付けて見ましたが、普通は気づかないですね。

今回は主に下記資料より参考にさせてもらいました。
・絵巻物による日本常民生活絵引 澁澤敬三編著
・日本の歴史をよみなおす 網野善彦
・異形の王権 網野善彦
・姿としぐさの中世史 黒田日出男
・国立国会図書館デジタルコレクション『一遍聖絵』

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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