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中世の職業について(日本編)

こんにちは(こんばんは)。
最近は日本とヨーロッパ(ドイツ)の中世に関する本を立て続けに探して読んでいます。中でも日本中世に関しては網野善彦さんの本、西洋中世に関しては阿部謹也さんの本、その中で様々な職業の移り変わりにとても興味が湧いています。読んでいく中で、自分なりに考えをまとめてからnoteに書こうと思っていたのですが、とてもまとまりそうも無いので今回は思いついたままに。

中世は資本主義が発生する前の段階であり、人々が日々生きていく為に手工業をはじめとして多様な職業が生まれています。いわゆる商店街のような世界で一人一人が何らかの職を手にしている面白さがあります。ただ、この頃は商店街のように店先に商品を並べるのはまだまだ都市の一部であり、大半は外の世界に行商に出ていました。

手工業の職業では鋳物師(いもじ:鋳物を作り)や轆轤師(ろくろし:焼き物を作り、轆轤を使い木工品を作りの木地師”きじし”も同様)、鍛冶、樵(きこり)、仏師、壁塗など。ほぼ自ら作って自ら行商に出ます。
また、一部商人としては薬売、油売、餅売、鍋売、麴売、等があります。
中世社会で特徴的なものは陰陽師、傀儡子(くぐつ:人形遣い)、巫女、宿曜師(すくようし:占師)などでしょうか。まだまだ宗教や呪術が実生活に根差している中世では、これらも普通の職業でした。

職能民はもちろん商売を行うわけですから、税金の管理と合わせて朝廷・幕府の管理下にある中で、徐々に職能と人が固定されて、一族的な要素を持っていきます。この後には供御人(くごにん)、神人(じにん)、寄人(よりうど)という呼び名で天皇や朝廷、仏や神に仕える職能集団を形成していくようになります。

興味深かったのは、市場での商売というのが原始の贈与互酬の関係から大きく変質したという所です。お互いに普段から顔の見える中での贈与互酬の密接な関係であれば1つの村の中だけの小さな世界となりますが、外の世界同士が繋がりあう市場はモノと貨幣という媒介物により、日常とは縁の切れた関係(無縁)となります。逆に、それ故に市場というのは聖なる場所であり、世俗権力や争いごとは効力を失う世界とされました。ですから先ほど書いた供御人や神人、などの呼称が出来たのかもしれません。

金融業の出発点らしきものが中世に見られます。「出挙(すいこ)」という律令国家以頃の制度で、これは神に捧げた初穂、最初の神聖な収穫物を倉庫に収める事から始まります。その中で特に穀霊の強いとされる稲を春に種籾として農民に貸し出し、その後に収穫が得られると秋には神に対する返礼として、利息をつけて再び初穂を返却する制度です。

いわゆる租税の始まりでもあるのですが、これを「公出挙(くすいこ)」、民間で行われていたものを「私出挙(しすいこ)」といい、金貸しの起源とされています。
これらは「上分(じょうぶん)」とも呼ばれ、神に捧げられた上分米や上分銭が金融の資本になっていきます。

先に述べたように、職能民には市場という「無縁」の場での活動や行商人として各地を売り歩く交易商人の顔がありました。外の世界、異世界を渡り歩く人々は官の庇護下にあり、各地の特産物や税金を収める義務負うと同時に売買する資格を受けた供御人として認知されます。また、陰陽師や巫女などの呪術・神系は、聖なる力を持つ職能集団として定義、畏怖される存在となりました。遊女も官の庇護下で職能集団を形成していました。日本と西洋では職能民の集団が同様に組織化(日本中世では寄人や神人、西洋ではツンフト)していきます。

しかし、一部の職能民がある時期までは特別視されていながら、時代が過ぎると卑しめられた存在に転落していく事が起きます。神の時代でもあった中世における穢れの意識とも関連があるようで、”神の奴婢”という立場で穢れを清める役割の犬神人(いぬじにん)が、聖なる位置から被差別民へ変化します。また”遊女”も同じく、それまでは朝廷で職能集団として認知された聖なる位置から転落していきます。

一定の尊敬・畏れの対象であった職能民が、被差別側に転落していくのは西洋中世でもありました。阿部謹也さんの本では共同浴場が町の中心であり、都市や農村の中心であったのに徐々に賤民視されていく浴場主の事が書いてあります。

逆に乞食などは隷属民のような扱いから、1つの社会的存在として認められたようです。これは中世で仏教やキリスト教の信仰が深まるにつれて、慈悲の対象者として一見哀れな人々が必要であったためです。つまり、人々が善行を積むためには彼らのような哀れな存在が必要であり、彼岸における救済を得るために乞食が必要な存在となっていたのです。

これ以外にも、定住する人々と遍歴商人のような旅をする人々との関係は読み解いていければ興味深いものが出てきそうです。お互いを警戒したり、畏れたり、はたまた蔑んだりと時代状況により大きく変化していきます。中世ならではの信仰と穢れの意識や、または農耕民族と遊牧民族のように、昔から定住する民と移動する民では人々の思考からしてかなりの違いがあるのかもしれません。

やはり全然話がまとまらなかったのですが、書こうとすると自分自身で考えるので、もっと早い段階でこまめにアウトプットするのがいいのかもしれません。note見ていると文章がとても読みやすい人がいて尊敬します。

最後に読んだ本の紹介を・・・

この本が一番参考にしたかも。表紙の職業は博打と巫女です。
網野さんと阿部さんの対談本です。日本と西欧の様々な中世的世界を知る事ができます。
「ハーメルンの笛吹き男」の次に読みました。副題の通り中世の生活が丁寧に書かれています。
この本も読みやすかった、上の本の方が参考にしたかな。
前半では様々な職能民の話、後半では京の様子が詳しく書かれています。
一人の商人を題材に、地域をまたぐ交易商人の世界を教えてくれます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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