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ただのファッションなんていらねえ

かつてはアパレル業界に属していたが、今は服飾とは関係のない生活を送っている。

懐かしい時もあるが、今となっては遠い過去の出来事に過ぎず、当時と同じ様な事をしたいとは思わない。
勿論、楽しい時もあったが、飲食業界と同様、華やかに映る業種だと思われる反面、実際はあらゆる職業の中でも末端に属する仕事だ。

先ず理由として挙げとかなくてはならないのは給料が安い点だ。
そして拘束時間が長い。
今は当時と比べると、だいぶ改善されていると思われるが、サービス残業など当たり前で、制服代(店頭に立つ際に着用する服)は社割があるとはいえ自腹が基本である。
そうなると生活は苦しいのは当然であり、かなり無理をせねばならなかった。
安い給料の大半が服に消えるので、若い頃は遊び盛りなのに無理をし過ぎて借金をしてまでも背伸びをしていたものだ。

わーお!

勿論、楽しい点もある。
どの業種よりも新しいものが発見できる事と、服に関するディテールや同業者と仲良くなれる点も大きいだろう。
後者の場合、情報交換ができる部分はメリットが高い。
現在の様にインターネットが存在しない時代故、海外で流行っている服やカルチャーなどHOTな情報を得る事は若い頃は興奮したものだ。

当時ボキが務めていた勤務先は輸入物に強い店であった。
特にバイヤーが買い付ける聴き慣れないブランド品を公の場に紹介される前に目の当たりにできた事は特権と言えよう。

その頃はジョン・ガリアーノとジャン・ポール・ゴルチエが話題になる一歩手前の時だった。
この二つのブランドはまだ大手が買い取る前であったので、かなり大胆で自由度の高いデザインを楽しんでいた。
因みに場所は都内の原宿にあったのだが、ヴィヴィアン・ウエストウッドも話題にはなっていたが、当時は同じ原宿の裏道に属していた「ア・ストア・ロボット」という小さな店が代理店であった。

コレクション用に洗練された女性服は恵比寿(因みに今はない)の店に用意されていたが、ボキの興味の対象は本店に当たる原宿店で「セディショナリーズ」が一時的に復刻されていた品だ。
休憩時間にこの店にお邪魔し、安くはない「セディショナリーズ」のTシャツなどを無理して買っていたっけかな〜。

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中には大胆なデザインもあった。

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因みに商品の画像は参考品だ。

で、ヴィヴィアン・ウエストウッドというと、一般的には「パンクの女王」などと称されるが、この作品を観るとだいぶ考え方が変わるはずだ。

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タイトル「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」だ。

先ほど紹介した「セディショナリーズ」の事も話題に出るが、現在に至るまでの経営状態や、これまで歩んできた道のりは平坦ではなかった事が中心に本人の口から語られている。

ヴィヴィアンといえば真っ先にセックス・ピストルズの事が気になるだろう。

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だが、本人は彼らの事は振り返りたくないと言い、この事に触れなかった。
そもそも「セディショナリーズ」はセックス・ピストルズのメンバーが着用し話題となった。
メンバーらはデビューする前は店の常連客であり、ヴィヴィアンの当時の恋人であるマルコム・マクラレーンがプロデューサーとなりバンド活動をする様に勧めた。
音楽が大好きな筋金入りのバンドマンではなかった為、楽器とは無縁だったメンバーで構成されていた。
マルコムはバンドマンというよりはアイドルをプロデュースしたのに近いだろう。

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当時を振り返り、マルコムの才能に対しリスペクトをしていたヴィヴィアンだったが、彼女が成功する度に嫉妬し、いちゃもんを述べたり、仕事の邪魔をする事も頻繁に起こったそうだ。
ある時からマルコムをリスペクトをしなくなった理由をヴィヴィアンは、以前はハッタリでも考え方と価値観が揃っていたのだが、どちらもギクシャクとした行動に対し嫌悪感を覚えたそうだ。

意外だったのが、マルコムは相当なやきもち焼きで、ヴィヴィアンの手柄を横取りする困ったおじさんだったのだそうな。

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作品の中でも語られているが、今でもヴィヴィアンの会社は独立した企業だ。
先ほど紹介したジョン・ガリアーノもジャン・ポール・ゴルチエも大手に買収されてしまった。
従って独立していた時期に比べコレクションもショーも保守的となった。
要するにリアル・クロージングに成り下がってしまったのだ。

かといってこういった事柄に対し責めるつもりは毛頭ない。
様々な企業が揃い、それぞれ理念があり、抱えている社員を育てなくてはならない。
だが企業の大小に関わらず社員を育てる点はいずれにも共通した役目でもある。
映画でも語られているが、「小さな企業は大きな企業に比べ三倍働く必要がある」と。
この言葉に独立の意味が含まれているのだろう。
それだけ独立は守る必要と続ける意義が存在する。
要するに妥協したら食われるのみ。
まさに弱肉強食を上手くまとめた答えだと痛感する。

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またヴィヴィアンは環境保護にも積極的に活動している。
恐らくこれは個人的な見解だが、ファッションという業種は必要なものと不要なものを創り出している。
一見すると矛盾した言い回しだが、ファッション自体は生活に不可欠とは限らない。
乱暴に例えるならば、あってもなくてもいい職業でもある。
今では環境問題に積極的なアパレル企業も増えたが、新しいものを優先するあまり環境に適さない素材やプラスチックなどが消化できないまま自然に放置されている。
結果的に生態系を崩したり環境そのものを壊している事に繋がる。
そしてレザー(革)商品も挙げられる。
動物保護を考えると毛皮などはエコロジーとは真逆の素材である。
こういった観点からヴィヴィアンは矛盾と真っ向から立ち向かっているだろう。

久しぶりにヴィヴィアン・ウエストウッドについて述べたが、若い頃に憧れた時期に憧れていた人々がこぞってヴィヴィアンの服を着用していたもんだ。

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中でも「タイニー・パンクス」と名乗っていた藤原ヒロシと高木完だ。
当時の彼らはトレンドセッターで雑誌「ポパイ」でおしゃれについて連載していた。
そして彼らが誇らしげにヴィヴィアンの服や先ほど紹介した「セディショナリーズ」と「ワールズエンド」の服を見せびらかしていたっけかな〜。

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ボンテージ・ジャケットと、

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ボンテージ・パンツ。

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「ワールズエンド」は反骨的なメッセージ性の強い服が多かった。

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つま先が四角い「スクエア・トゥ」の認知度を高めたのも「ワールズエンド」である。

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マウンテン・ハットも当時のおしゃれさんの必需品だ。
最近だとファレル・ウイリアムスが着用し、復刻版が瞬く間に売れたそうだ。

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そういやぁ、この当時はモデルの中川比左子もヴィヴィアンの服がお気に入りでよく着用していたっけかな〜。

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中川比左子以外も、当時のおしゃれなお姉さんは皆ヴィヴィアンの虜だったよ、まじで。

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それにしても、中川比左子お姉さんは今見ても個性的だよ。

またも、それにしても、藤原ヒロシはややオバサンっぽいのは内緒だ。

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決して悪意はございません。

それと残念つうか、ライセンス製品は日本だけと語っていた。
というのも、ヴィヴィアンの息子が将来的に母親の資産として日本の企業がライセンス料を莫大な金額を提示し、後の保険として契約したそうな。
因みに今のヴィヴィアンの夫は猛反対だった。
そりゃそうさ。
ブランド価値が下がるのは目に見えているものだしね。
だからヴィヴィアンを満足に知らない若い子が身に着けている光景を街でよく見かけるのだ。

…うぅ、無念…

まぁ、個人的な意見はさておき、やっぱ急に結論付けるけれど、単なるファッションつうか、流行しか追わないファッションよりも、刺激となるパッション!の方が痛快で楽しいよな〜♪

きゃっ🌟

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