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さそりは物音を立てずに強かに刺す

物事は矛盾だらけだ。
そういった事を若い頃はよく感じたものである。
いや、今もなおと、語るべきか…

てな具合で、矛盾はまた不条理に似た解消されない不可解なものだ。
こういった事柄に真っ向から挑む映画が「女囚701号/さそり」であると個人的に考えるのであ〜る。

あっは〜ん☆

この物語は裏切りにより人生が改ざんされた一人の女性の復讐劇なのだ。

梶芽衣子が演じる松島ナミは平凡な生活を送っていたが、夏八木勲が演じる警視庁の刑事である杉見次雄に出会った事で人生が一変した。

杉見次雄は野心家でもあった。
出世のためであれば人を踏み台にしてまでものし上がるタイプだ。

松島ナミと知り合った頃、杉見は麻薬取締法でヤクザ組織を捕らえる。
その際、婦女暴行の罪も合わせようと恋人であるナミがヤクザ組織に襲われる事を想定しながら潜入させる。
事実を知ったナミは当然ながら杉見に復讐をする。

持っていた包丁で杉見を殺害しようとするが結果的に未遂となり、ナミは刑務所に送られるのだ。

ここからがナミにとって地獄の日々を送る事となる。
囚人達からも嫌われ、刑務所内の職員からも煙たがれる。
それはナミが人に媚を売る事なく自立した性格から来るものなのだろう。

次第にナミは囚人達から目をつけられリンチの対象となる。
それでもナミは弱みを見せる事なく鋭い眼光で相手を睨みつける。

またこの刑務所内は特殊だった。
その理由を挙げるならば、所長をはじめ刑務所内は独裁国家の様だったのだ。
男尊女卑は勿論のこと、時には欲望に任せ囚人を襲う事も珍しくはなかった。

次第に囚人達は標的をナミから刑務所の職員へと変わる。
些細な事から暴動が起きると刑務所内は戦場と化す。

しかし囚人のリーダー的存在の片桐は日頃からナミに対し嫌悪感を募らせていた。
暴動の中、実は杉見からナミを暗殺する様に命じられていたのだ。
片桐は執拗にナミを銃で狙う。
ナミもまた片桐から逃げる。

全ての囚人がナミを嫌っている訳ではなかった。
特にナミを快く思っていた由起子は、片桐が狙う銃がナミを標的にしている所を察知すると被弾される。

人生が狂い始めた時からナミは孤独だったのだ。
彼女の救いとなるものは復讐しか残されていなかったのだ。

脱獄後ナミは処刑人と化す。
人生を陥れた人間への復讐だ。
ナミは鬼というより、もはや感情のない冷酷なさそりの様に、無惨な形で殺戮を繰り返す。

物語は至ってシンプルな構成だが、やはりこの作品は梶芽衣子の存在なしでは語れない。
仮に主人公ナミが梶芽衣子でなかったとしたら話題にもならなかったはずだ。
何よりも梶芽衣子を絶賛する一人である、映画監督のクエンティン・タランティーノはヒット作「キル・ビル」の発想は出てこなかったかも知れない。

現在の梶芽衣子は成熟した女優と開花したが、今もなお美しくもあり危険なかほりを秘めている。
この様な女優というか俳優は日本では稀な存在といえよう。

以前にクエンティン・タランティーノがインタビューで梶芽衣子に対し、「どうして早くから海外へ進出しなかったのか?」といった問いに梶芽衣子は、「日本で完璧になれないから…」といった簡素な答えを出した。

梶芽衣子にまつわる武勇伝は幾つか聞かされた事がある。
ある大女優に今では珍しいアフレコ(後から台詞を入れる作業)の際、下手だの何だの言われた事に対し、「あなたは最初からできたのか?」と啖呵を切ったエピソードは有名だ。
この作品の主人公ナミと同様、梶芽衣子は常に自律した女性であり、俳優なのだろう。
その答えがクエンティン・タランティーノに出した答えなのだろうと勝手に解釈する。

やはり、この作品に欠かせない「恨み節」は最高だ♪
ご存知の通り、クエンティン・タランティーノ監督作品「キル・ビル」でもこの曲が流れていた♪
監督自ら絶賛する様に梶芽衣子をリスペクトしているのだろう☆

なお、どうでも良い事柄ではあるが、ボキが幼少期に憧れた年上の女性は梶芽衣子と夏木マリという点は内緒だ。

きゃっ☆

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