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ナポリを見て死ね

人は荒波に耐えられるだけの力を備えていない。

この一文は自身が二十代半ば頃に考えた詩の一説だが、その頃に訪れたイタリアのナポリに着いた時に身体中に響き渡る。

ナポリを訪れる前、フィレンツェやローマ、ミラノといった主要都市を訪れたが、殆どが英語よりも現地の言葉(イタリア語)でで話しかけられる。
こういった事に慣れていたせいか、ナポリに着くなり見知らぬ人から英語で声を掛けられた。
よく聞き取れなかったのだが、明らかに金を持っているかと尋ねられたのだ。
当然ないと答えると、「ファック・ユー!」と中指を立てられたのだ。

街並みも他の主要都市と比べ随分と垢抜けた様子が目に入る。
そして、東京に似た近代的な建築物や、訪れた事はないがアメリカの西海岸を思わせる椰子の木が聳え立つ光景が目立つ。

何よりも唐突に失言を浴びた事に対し、今もこの地へ立ち入る際に不可欠な儀式なのだろうか?
または土地柄独自の洗礼なのかは定かではないが、余所者(よそもの)として戸惑いながらこの地を訪れた事を懐かしく思う。

これらは今から20年以上前の話なので、現在は随分と変化を遂げているかも知れない。
で、懐かしさもあり、ナポリ繋がりでこの様な映画を紹介したい。
邦題「愛と銃弾」

この作品を説明するには一筋縄では解決しない。
つうのも、ノワールありーの、アクションありーの、ロマンスありーの、で、で、なぜか突然ミュージカル?!なシーンがありーのなのだ。

簡単なあらすじを説明すると、舞台はナポリ、水産市場を仕切るヴィチェンツォが突然マフィアに襲われる。
その現場へ直ぐに対応したヴィチェンツォの護衛であるタイガーと呼ばれる二人組だ。
不幸中の幸いか、ボスのヴィチェンツォは尻に銃弾を浴びたが大事には至らず病院へ搬送する。

ヴィチェンツォの妻マリアは夫の容態を気にしつつも、よからぬ計画を考える。
夫が死んだ事にし周囲の目から遠ざかり、マフィアにも狙われない様な生活をしようとタイガー他、周囲の部下に漏らすのだ。
その代わりそれぞれに資産を分け、お互いwin-winで余生を暮らそうではないかと焚き付けるのだ。
マリアの意見に殆どが賛同するが、タイガーの片割れであるチーロだけが腑に落ちない様子だ。

しかし、夫が死んだ事にするには遺体が必要だ。
そこでマリアは部下達に行きつけの靴店で夫に似た店員がいるので、その人物を殺害し夫の代わりに葬儀をしようと企む。

後にマリアの計画通り靴店の店員はあっさりと殺され、葬儀までは成功するも、そこに至るまでがあらゆる物語が交差するのだ。

話が戻り、夫のヴィチェンツォは尻に銃弾を浴びるが幸いな事に軽傷で済む。
そこで担当医を買収し、俺が死んだ事にすれば所有しているフェラーリを譲ると申し出る。
担当医は迷う事なくヴィチェンツォの申し出を受け入れる。

このまま話が進めば何事もなく結末するのだが、生きていては不都合なヴィチェンツォは麻酔が効いた体で病室で休んでいた。
そこに看護婦であるファティマが訪れ、ヴィチェンツォと目が合う。
ファティマはかの有名な水産市場を仕切るヴィチェンツォとは知らずに部屋を後にするが、ヴィチェンツォは自分の顔を見られた事が気まずいと察し、護衛のタイガー二人に自分と接した看護婦を殺す様に命令をするのだ。

二人は手分けして看護婦を探す。
看護婦は病室を周り仕事をしていた。
するとチーノが先に看護婦を見つけると、その看護婦は突然、「チーノ?」と反対に声を掛けられる。
実はチーノにはかつての恋人が存在した。
まだチーノが護衛として雇われる前、ファティマと共に小さな町で育った。
やがて二人は恋人となり、チーノの父は事故に遭い帰らぬ人となった。
そこで幼かったチーノは復讐するかの如く、ファティマと小さな町を捨て護衛という名の殺し屋へと変貌を遂げる。

またもや話が戻り、久しぶりにチーノとファティマが再会すると、ボスであるヴィチェンツォの命令に従い看護婦であるファティマを殺さなくてはならなかった。
チーノとファティマが話している光景をチーノの同僚であるタイガーの片割れであるロザリオが近付く。
するとチーノは盟友であるロザリオを裏切り、ファティマと共にその場を去るのだ。

やがてチーノは裏切り者の烙印を押され、かつての友人や知人から命を狙われる事になる。

この物語は随所に映画の名シーンがミュージカル仕立てで現れている♪
例えば、え?フラッシュ・ダンス?!
または、インファナル・アフェア?!
と思わせるシーンが満載なので、映画好きの方はこういった細かな部分を見つけるのも楽しみの一つかも知れない♪

そうそう、この作品を手掛けたマネッティ・ブラザーズは映画はもとより、音楽や昔の映画をこよなく愛しているのだと伝わる。
アクションシーンも飽きさせない内容に仕上がっている。

何より最後は予想を大きく裏切る結果を招くので、瞬きをするのがもったいないくらいな展開へと誘(いざな)う。


後は本編を観て実感して欲しい☆

つくづくと思う事、映画を通してだが人生は順風に流れるとは限らないものだと…

わーお!

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