ぐるっと回って僕らは帰る
私の、物語好きの原点というと、やはり栗本薫になるのかなと思います。
もちろん、小さな頃から溢れんばかりにさまざまな本やマンガを与えられて、物語にはずっと触れていたのですが、意識的に、自分から求めた最初の作者でした。
親のコレクションの大JUNE、小JUNEを初めて読んだ時の衝撃は忘れられません。
とくに、小説に特化した小JUNEばかり読んでました。
最初に読んだ作品は、タイトルは忘れましたが吉原理恵子の双子を描いた短編でした。
それから、影の館、銀のレクイエム、暗闇の封印と読み進め、しかし、この方は後になるほど私の好みから外れてしまいます。残念。
そのあと、大JUNEも読むようになり、竹宮惠子挿絵の、ジュスティリーヌ・セリエを好きになりました。
異端で、怪奇で、美しかった。
その正体は栗本薫でした。
私は、大JUNEに掲載されていた美少年学入門を読み始めます。
少年、それは一つの思想である、と始まるこのエッセイは、少年愛というものに無知だった私に、様々な影響を与えました。
やはり大JUNEに連載されていた小説道場。
中島梓が、投稿されてくる小説をバタバタと切り倒していく、痛快な読み物でした。
これでデビューされた作家も多い。
野村史子、石原郁子、江森備、須和雪里、鹿住槇…すぐ出てくるのはこれくらいかな。
野村史子は、デビュー作の、レゾナンスコネクションがとても好きで、絶賛だったテイクラブは実はそこまで…
石原郁子は、今も月の男を持っています。
江森備は、高弟でしたが、あまり好きではなかったです。三国志に全く興味なかったので、作者のせいではありません。
須和雪里の、いつか地球が海になる日、だったかな。あれはよかった。
鹿住槇は、何年か前にKindleでプラスチックの雨が売ってたので買ってしまいました。
秋月こうって、小説道場出身だったかなー。
やはり、JUNEの金字塔、真夜中の天使。
相当気合を入れなければ、読みきれないパワーのある作品でした。
当時は、主人公今西良の気持ちや、なぜ彼がこれほど愛されるかわかりませんでしたが、今は少しだけ理解出来る気がします。
続編、というか、同じ世界観の中の別のお話。
上巻は、真夜中の天使より前に書かれていて、読んだ当時でさえ古臭い感じがしました。
下巻は、これは上巻の主人公のライバルの視点で描かれた物語で、必ず泣ける場面がありました。
私は普段、ほとんど泣くことがないので、ストレス発散、カタルシスを得るためにこの部分を読んだりしてたのですが、もし、読み慣れて、泣けなくなったらどうしようと思い、20年前くらいから読めなくなりました。
さらに続編の朝日のあたる家は、3巻まで買いましたが、すでに興味が薄くなっていたので、そこまでハマれず。
去年の断捨離で処分しました。
元禄無頼は、大JUNEに連載されていて、それで単行本を買いました。
連載時の小林智美のイラストがとても好きで、単行本も処分した覚えがないのですが、度重なる引っ越しで無くしてしまい。
文庫本を買いましたが、このイラストは許せないですね。でも、中古でも買い直すほどではないかなと。
元禄心中記は、JUNEで、滝沢美女夜名義で発表していた作品を含む、時代小説短編集。
デビュー前の作品だとのことで、ハードで、素の栗本薫らしい先品群だなと思います。
栗本薫名義の本は、これだけです。
とても好きで、未だに二次創作している魔界水滸伝も、ぼくらシリーズ、伊集院大介シリーズ、数々のSF、例えばレダや、時の石、もしくはキャバレーや死はやさしく奪うなどのハードボイルド、終わりのないラブソングなど、かなり前に手放しました。
猫目石など、好きだった探偵栗本薫シリーズの、怒りをこめてふりかえれが、あまりにも小説として破綻しているような気がして、彼女の作品が急に色褪せて見えました。
終わりのないラブソングも、最初の短編はとても好きだったのですが、後半につれて、あまりにも詰め込みすぎというか、感情的すぎるというか。
確かに、興味ある題材ではあったのですが、結局、最終回まで読めませんでした。
あと、これはとても個人的な好みなのですが、一部、というか、1人の作家を除いて、私は異世界ファンタジーが読めません。
グインサーガも、何度もチャレンジしたのですが、どうしても無理でした。
スカパーでアニメを見ましたが、ふうん、という印象。
代表作であるグインを好きでない時点で、ファンとしては異端かもしれません。
でも、トワイライトサーガは好きだったな。もう、持ってませんが。
グルメを料理する十の方法を残したのは、私は摂食障害を経験し、食べることに歪んだ気持ちがあり、今も拒食気味ですが、食べることを描いた作品はとても好きなのです。
この主人公2人のように、バクバク食べられたら気持ちいいだろうなー。
栗本薫が選んだ、耽美小説のアンソロジー。
川端康成の片腕から始まる、異端の物語たち。
森茉莉、赤江瀑などはすでに読んでいたけれど、連城三紀彦、司馬遼太郎、宇能鴻一郎などは未読で、興味深かった。
森茉莉は、例に漏れず母の蔵書にあったけのだけど、これに収録されている、日曜日には僕は行かないが一番好き。
中学時代に、確か同時に手に入れた本。
育児日記と、少し変わった視点からのグルメ本なのですが、どちらも文字通り、擦り切れるほど読み込みました。
特にくたばれグルメは、私の中に強烈な少食に対する影響を与えましたね。
彼女の知人の、「私はあまり飲み食いということをしないのです」や、晩御飯が小さな玉ねぎを炒めたものだけのエピソードとか。
この本で知って、椎名誠の全日本食えばわかる図鑑や、小野博道のサーロインステーキ症候群買いましたねー。
ちなみに、うちの祖父はたいそうな麺好きで、市役所勤めをしていたのですが、朝ご飯がなんと、インスタントラーメン!だったのですね。2歳くらいの私が、祖父からラーメンを食べさせられている写真があります。
祖父の厳しい監修の元、我が家で採用されるラーメンは、出前一丁、チキンラーメン、袋の日清焼きそばのみでした。
それは祖父が亡くなってからもかなり長い間受け継げられ、祖母が、うまかっちゃんにハマるまでは、本当にこの3種類しか食べたことはありませんでした。
サッポロ一番は、働き出してから初めて知りました。
祖母には悪いけれど、私は豚骨が苦手なので、うまかっちゃんは嫌いです。
そうして、この3種類は、食べる時、全て卵入りで作られてました。
落とし卵でも生卵でもなく。
日清の焼きそばは卵を絡めると大変見栄えは悪いですが、とても美味しい。
くたばれグルメの中で、卵入りチキンラーメンに対して、熱く語っている場面を見て、興奮しました。
好きな作家との共通点は、なんでも嬉しいものです。
これもほぼ同じ時期に買った本。
マンガ青春期は、中島梓と母が同い年ということもあり、こんな作品知ってる?など、少し距離のある親子に会話のきっかけを与えてくれました。
少年マンガはともかく、書いてある少女マンガは全て家に揃っていて、水野英子の白いトロイカ、西谷祥子の花びら日記など、年に似合わぬマンガもたくさん読んでいて、出てくるタイトルに痺れたものです。
赤い飛行船は、それまで母のお仕着せで不満がなかった私が、初めてファッションについて興味を持ったきっかけになりした。
ただ、私も少女マンガ脳なので、どうして少女マンガ的ファッションが好きです。
理想はPapa told meの知世ちゃんのファッション。
流石に分別はあるので、あまりに可愛らしいものは避けますが、やはり出来うる限り甘めのものを選んでしまいます。
どちらも闘病記。
アマゾネスのようには、乳がん、ガン病棟のピーターラビットは、これは結局膵癌だったのかな?
アマゾネスのようには、入院中大変お世話になった。
自分自身入院してると、読み物に出てくる事柄がなおさらリアルに感じました。
ガン病棟のピーターラビットは、亡くなられてから買った本。
初読はピンと来ず、長い間放って置いたのですが、今年読み返して、なぜか気に入ってしまいました。
最初は、息子さんがはまった戦隊モノについて書かれた軽い読み物かと思いましたが、後半につれて、作者の硬派な部分が前面に出てきます。
とくに、トーマス・エドワード・ロレンスについての文章は、鳥肌が立ちました。
ちょうど、神坂智子のT・E・ロレンスを読んでいた時期でもあり、少し混乱しました。
人は、自身の幻想の外では生きられない、重い内容です。
これは、全てのJUNE読者、やおい、BLを読んだり、またはダイエットや、摂食障害を経験したことのある人なら響く2冊。
少女、女とは、社会からいかにしておとしめられ、弾かれ、選別され続けるのかと説いた本たち。
話がそれますが、ロビン・モーガンの悪魔を愛する者はとても興味深い。
没頭は、たしかこうだった。
「あなたは夜、暗闇を歩いている。
すると、背後から足音が近づいてくる。
あなたは不安を感じ、または恐怖する。
それはあなたが女だからだ」
当時はまだ、DVといった言葉もなかったし、昭和を色濃く残した平成初期で、この本は中島梓の著作とともに、女であること、女で居続けなければならない苦悩を真正面から書いていて、とても影響を受けました。
引っ越しでなくした本の一冊。
また買い直そうかなー。
ちょっと変わった夫婦生活、家庭について、ご主人の今岡清と書いた本。
この中の、わたしはペットという項目は、今になってよく理解できます。
世の中には、面倒みたい欲の強い人、面倒みられたい欲の強い人がいて、中島梓は稀な面倒みられたい欲100%の人間だと書かれていて、読んだ当時は、私は面倒みたいほうの人間だと思っていたのですが、北に会って、私は面倒みられたい欲90%くらいの人間なんだな、と感じます。
残りの10%で、北にご飯を作ったり、年下の友人の世話をたまに焼いたりで、満足してしまいます。
北は、異常な面倒みたい欲100%の人間なのだろうな。
中島梓の評論も残してませんが、これだけは処分しませんでした。
吉本ばななも、村上春樹も興味ありませんが、この中の、少女たちの見る夢は、に、やはり感銘を受けたので。
搾取され続ける少女と、JUNE的な創作活動、コミケなどに触れた文章。
こういうものは、いくつになっても引っかかってしまうようです。
これはパソコンサイトで連載をしていた文章をまとめた本です。
とてもどうでもいい感想ですが、タナトスの子供たちもそうでしたが、顔文字や、(爆)など多用され、それが気になる。
そして、レシピ自体も、あんまり趣味ではなかったです。
ただ、あつあつオニオングラタンスープの項が好きです。
オニオングラタンスープって、作る手間の割には何だかそっけない味がする。また、私はぐにゃぐにゃした食べ物が苦手なので、スープでふやけたバケットも嫌いです。
でも、やはり寒い冬の夜のオニオングラタンスープって、憧れます。
そのスープに、熱い愛を捧げた文章が好きで、それだけのために残してます。
これは、絶筆を含む、中島梓が最後まで書いた本。
読むと大変落ち込むのですが、どうしても読み返したくなる時があり、読んではやはり落ち込みます。
この人は、最後まで摂食障害だったのだな、と、自身の未来を見るように読みます。
ずいぶんといろんな本を買い込み、また処分してしてきましたが、やはり、私にとって、栗本薫、中島梓は、特別な作家であることに間違いはないです。
なにか読みたいけど、特に思いつかない、という時は、やはり中島梓の本を手に取ります。
垢じみて、擦り切れて、ボロボロになった本。
それこそが、私の原点であり、帰る場所の証なのだろうと思います。
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