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がんばろう北陸?

県外の広告会社から電話営業があった。

高速道路の大きめのサービスエリアに設置する観光マップに、御社の広告を出稿しませんか?という広告案件の提案である。もちろん有料だ。

サービスエリアは北陸道と東海北陸道の、富山へ向かう車線に数千部設置し、自由に持っていってもらう形のフリーペーパー型広告だそうだ。

よく話を聞いてみると、数年前、私が担当になる前に何度か取引したことがある会社らしい。

検討するので詳しい企画資料と見積書をメールして欲しい、とお話しし、アドレスを伝える。

相手の男性の営業さんは、「いま、観光業も地震で大変でしょうから、がんばろう北陸!ということで、応援させていただきます!」と熱っぽい。

なるほど、応援価格なのか、それとも売り上げの一部を被災地に寄付するのか、と業界全体の熱い思いに感謝しながら電話を切った。

たしかにわが社も少なからず施設に被害が出ているし、風評というよりもマインドの冷え込みによる集客減は肌で感じていた。

数時間後にメールが送られてきた。

数年前の起案書を引っ張り出してきて、パソコン画面上の企画書・見積書と比較する。

一円も違わない。

同じ値段で北陸の枠が大きいわけでもない。

企画書にも寄付の話どころかがんばろう北陸の一文字も存在しない。

これは「がんばろう北陸」じゃなくて「俺(営業マン)のためにがんばれよ北陸の観光地」じゃないか。

震災支援のフレーズを営業成績のためにその場のノリで口にした営業マン。覚えたからな。

軽々しく被災地支援に乗っかってんじゃねえよ。

という経緯はあったものの、広告案件の内部協議は粛々と進められ、「行き先を決めずに高速に乗るドライバーなんかいないだろう」「役に立つとすれば、メインの目的地は決まっていて、ついでによれる場所やお土産やさん、銘菓なんかの情報だろう」「地図にしても、今日び行き先がわからなくなったからってサービスエリアの無料地図に頼るユーザーさんて多くないよね」「結果うちはマッチしない」という、がんばろう北陸の無礼さとは全くインディペンデントな理由によりお断りしました。


寄り添う気がないなら、寄り添う仕草を見せないこと。無駄に不快だから。



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