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読書感想文(短編小説)



 今回読んだ本は桃太郎だ。桃から産まれた桃太郎の鬼退治を描いた作品で、なかなか面白かった。
 
 短い?何が?感想が?

 じゃあ一体何を書けばいいのさ。面白かったって、感想はもう書いてるのに。「具体的にどう」面白かったっていうのは批評文の領域だし、学びを得て自分の人生の糧になったみたいな事を書くなら、それはエッセイの領域だ。

 読書感想文というのは実に中途半端な位置にいる。子供がやるのだからしょうがないが、感想と批評とエッセイがごちゃ混ぜになっている。純粋な感想文なんか書ける訳がない。なぜなら、それはただの感情の羅列に過ぎないからだ。ここで先生に、僕が桃太郎を読んでいた時の感想を、そのままお見せしようと思う。

 …うわ桃から産まれんのか。へー、きびだんごねえ。犬キバ怖っ。猿爪怖っ。雉口ばし怖っ。鬼カラフルー。あー、桃太郎の方が有利だなこれな。雉の飛べるアドバンテージでかいな。あー、勝った勝った。あ、宝貰えるの。え、これ返さなくていいの?これで終わりか。あー、面白かった。さて、読書感想文でも書くかあ。

 以上である。これそのままでは、ただ心の声がダダ漏れなだけなので、「文」足りえない。そこで、何故?が追加されるのだが、ここからはもう批評なのである。「犬のキバの鋭さは第三者である読者をも怯えさせるほどで、鬼退治での活躍への期待感を煽らされる。」とか。ここまで固い文でなくとも、こんな感じの事を書いている。これは、ただの批評であるが、読書感想文として提出される。矛盾である。

 他にも、個人の体験と絡めると言う技がある。「私もお小遣いアップのためお母さんと交渉した時、お母さんが鬼に見えたので桃太郎の気持ちはよく分かります。今回これを読んで、私に足りなかったのは仲間だと感じました。まずはお父さんを味方につけようと思いました。」こんな感じで、個人の体験と本の内容を絡めて文字数を稼ぐテクニックがある。しかし、これはどう見てもエッセイである。「お小遣いアップのヒントが、桃太郎に隠されていた!」というタイトルの方が適切だ。

 結局、読書感想文で感想を書くと、評価されないというジレンマがある。良い文を作ろうとすると、感想文ではなくなっていくからだ。しかし、こちらが頼まれているのは感想文であって、批評文でもエッセイでもない。だから一言、面白かったです原稿用紙に書く。それで一体何が問題なのか。

 結局、今の状況では子供達を混乱させている。批評文が欲しいなら批評文を、エッセイが欲しいならエッセイを書けと指示するべきだ。それが出来ないなら、こんな宿題課すべきではない。

担任コメント
後で職員室に来なさい。

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