【翻訳】詩人ローレンス・ホープ その32
翼
Wings
器用に動くこの両手と引き換えに
翼を手放す甲斐はあったろうか。
人間の空想がもたらすがごとく
素敵なものを確かに手は我らにもたらす。
とはいえ――飛ぶことは叶わぬ。山頂から、白雲が集っては休む、
石英の筋をむきだしにした、この大きな山々の菫色の頂まで
この澄んだ空を駆けることは叶わぬ。
花から花へ舞うことも――
木々の天辺をすれすれで飛ぶことも――
日没の刻に、薔薇を思わす色に照らされ
大洋に吹く微風に漂うことも叶わぬ。
ああ、この両手には見事な力がある
不可思議なものを創る力が――
取るに足らぬものを、玩具を、他者を殺める武器を創る力が――
しかし――翼を選んでいたらどれほど良かったか。
このたび紹介したのは、ローレンス・ホープの没後に発表された詩集Last Poems(1905年)所収の作品になります。オリジナルはこちらのリンクより確認できます。
この詩人の経歴に関しては、次の記事でまとめています。よろしくお願いいたします。
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