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鳴門海峡 冬の風物詩

冬の訪れと共に、NOMAyadoのある小さな港町が活気づいてきた。

鳴門名産であるワカメの種付け作業が佳境を迎えており、種付けに使うロープを積んだトラックが行き来し、NOMAyado前の小さな港からも頻繁に漁師の船が出入りするようになった。

鳴門ワカメの歴史は古く、1000年以上昔の文献にも阿波の国(徳島県)の貢物としてワカメが使われていたという記録があるほど。年間の生産量はおよそ7700トン、生産量では三陸ワカメには及ばないが、鳴門ワカメは強いコシが特徴。鳴門海峡の激しい潮に揉まれ、豊富なミネラル分をいっぱいに取り込むことで、シコシコとした歯ごたえの見た目にも鮮やかな緑色のワカメが育つ。まさに豊かな海からの贈り物だ。

育成したワカメの種(左)、切り分けられたワカメの種(右)

鳴門ワカメの養殖は、まずワカメの胞子が塗布された細い紐を暗所で海水に浸けて、ワカメの種を作ることから始まる。そうしてできたワカメの種が付いた紐を細かく切り分け、3本のロープで編まれた長さおよそ30mの養殖用ロープの編目に均等に挟み込むようにして装着して行く。

ロープにワカメの種を手作業で着けて行く
ワカメの種がつけられたロープ

そうしてできたロープを養殖セットと呼ばれる、沖に設置した枠にくくりつけて、種付けは完了。収穫時には、このロープを手繰り寄せるという手筈となる。

(徳島県水産研究所・ワカメ虎の巻より引用)

ワカメの芽は、ロープの上で根を張り茎を伸ばして葉を広げ、最大5mほどに成長する。初めて知ったのだが、養殖のワカメは、岩場に生えるワカメとは逆向きに生える。つまり海面に張られたロープから海底に向かって伸びるということになる。海面近くでワカメを育てるからこそ、太陽の光をたっぷりと浴びることができ、立派なワカメになるという訳。

下に向かって育つワカメのイメージ(徳島県水産研究所・ワカメ虎の巻より引用)

収穫は、年を越し「もうすぐ春の兆しが訪れる」という2月〜3月。収穫されたわかめの多くは、湯通ししたあと冷水で洗い、水切りし、食塩を混ぜて塩漬けにされるのだが、そこはそれ、ご当地の特権でその時期、生のままのワカメを分けていただけるので、生わかめをしゃぶしゃぶで食べるという贅沢が味わえる。茶色いワカメを湯に通すと一瞬で鮮やかな緑色に変化、まるでマジックを見ているよう。見て楽しい、食べて最高に美味しいと、食卓がエンターテイメントになる。

ワカメのしゃぶしゃぶ、色の変化が美しい

その時期、NOMAyadoに訪れていただいたゲストに振る舞うと、ワカメを食べるのに必死で、しゃぶしゃぶなのに肉が余るという驚くべき事態が発生。それほどまでに鳴門の採れたて生ワカメが、皆さんを虜にする美味しさだということ。特に女性には大人気で、改めて鳴門ワカメの凄さを思い知らされることになりました。

漁師の間では、このワカメの種付けが終わらないと年が越せないと言われており、寒風が吹き荒ぶ中、種付け作業が急ピッチで進められています。

ただせっかく種付けをしても、海水温が高いままだと小魚に種が食べられてしまうという事態が起こるようで、まだまだ予断を許せないとのこと。冬はちゃんと寒くならないと困る、異常気象が叫ばれる昨今、漁師たちの心配は絶えないようだ。先日のフィリピン地震の際にも、津波で沖に設置したワカメの養殖セットが流されないかと、眠れぬ夜を過ごしたと聞いた。

私にできることは、唯一無事立派なワカメとなって収穫できるよう祈るだけ。
来春も美味しいワカメと出会えますように・・・
ああ、春が待ちどうしい!


泊まるだけじゃないNOMAyado、いよいよ最終週を迎えています。
海に面した移りゆく光の中で、アートに向き合う時間はいかがですか
気になるという方、お急ぎください!

海から海へ From inland sea to ocean

Hiroshi Matsumoto・池上夏生 Natsuo Ikegami 2人展

11月11日(土)〜12月10日(日) 11:00~15:00
*上記期間中、金・土・日・祝日 (11/23 ) のみ Open

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