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大企業の若手が転職を検討すべき理由

私は2019年末に、10年以上所属した大企業を辞めて、キャリアコンサルタントになりました。自分自身の転職経験、またキャリアコンサルタントになって、大手企業で転職を考えている方々の気持ちや思考などを踏まえ、大企業の方ほど「早い段階から転職を考えるべき」と考えています。その理由を、率直に以下に列挙します。

大企業の方の転職支援のリアル

私は、大企業の若手~シニアまで、年間で100人以上の方の転職相談を受けていますが、大体、以下のような理由で転職を考えています。

<大企業の方の転職理由>
・会社や組織としては強いが、10~20年後に個人としてスキルがついている気がしない
・評価されてもいいのに、それが年収に大きく反映されない
・配属リスクがあり、実際やりたい仕事ができず、我慢して仕事をしている
・意思決定権を持てるのは40歳前後で役職者になってから
・根回しや調整業務が多く、本質的な業務に50%も関われていない
・以下の上司の仕事を見ていて、自分が将来やりたいと思えない
・海外子会社から返ってきて、日本の意思決定のスピードの遅さが気になる

私自身も大企業を長く経験したので、相談に来た方から上記のような話を聞くと、痛いほどよくわかります。ただし、私の感覚だと相談者の70%ぐらいの方は、結局転職しません。理由は幾つかありますが大体以下の通りです。

<大企業の方が転職しない理由>
・大企業という「安定」を捨てきれない
・家族、両親に反対される
・年収は下げたくない
・(商社などの年収が高い企業の場合)年収を落とすぐらいなら、今の仕事を我慢したほうがいい
・内定時のオファー金額が安く、評価されていないと思った

上記の理由も痛いほどよくわかります。ちなみに、もう一つ伝えたいリアルがあります。上記は転職「しない」理由ですが、実際には転職したくてもできない(より正確に言えば、行きたいところに行けない)人が圧倒的に多いです。それは、特に30代半ば以降から如実に現れます。理由はいくつかあるのですが、上記の「転職を考える理由」にある通り、他の会社では通用しない汎用性の低いスキルしか持っていないこと、また自分として新たな職種や業界にチャレンジしたいと思っても、企業側がポテンシャル採用をするには年を取りすぎていて、それなら20代の、まだ吸収力がありそうな若手を採用するから、というのが大きいです。特に最近では「ベンチャーにチャレンジしたい」という方が増えてきていますが、ベンチャーにとっては人への投資は事業の生命線になるため、かなり慎重にならざるを得ません。

若手が早い段階から転職を検討すべき理由

さらに言えば、30代半ばになると特に上記の<大企業の方の転職理由>に記載したことを感じる方が増える傾向があります。それは、若手のころは「こういう仕事がしたい!」というきらきらとした思いをもって今の会社に入り、実際にそういう仕事ができていて、また責任もそこまで大きくなく好きなことができていたものの、30代半ばぐらいで中間管理職になることで社内調整の仕事が増えたり、出世争いの差が徐々に見えてきたりと、リアルな負の部分が具体的に見えてくるからです。
そうなってから転職を考えても、時すでに遅し。もちろんすべての人に当てはまるというわけではないのですが、結局転職もできず、その会社で様々なことを我慢して定年まで働く、という選択肢しかなくなってしまいます。定年退職までの20年強を「我慢」しながら働くことが、果たして幸せなのでしょうか
こういうデッドロック状況にならないためにも、若いうちから転職や、転職マーケットでの自分の価値を常に考え、何が足りないのか、このままこの会社にいてその足りない部分を身に着けていけるのか、といった「自分の位置の確認」をすることをお勧めします。特に、大企業で活躍している、不満はない、という人ほど、視野が狭くなっている傾向があるので、注意してください。

大企業は「安定」しているは本当か

大企業を辞められない理由で多いのは「安定を捨てるのが怖い」からです。果たして、大企業は安定なのでしょうか?
例えば日本の電機メーカーは、日本の高度経済成長期を支えました。日本を代表する大企業になりましたが、平成の失われた30年の中で、SHARPが台湾の鴻海に買収されたり、東芝が解体したりと、「JAPAN as No.1」の時代は見る影もありません。また、JRはコロナ禍で赤字に転落しています。大企業とは言え、何が起こるかわからない世の中なのです。
だからこそ、「安定っぽく見える」大企業を安易に選ぶのではなく、何が起きても働き続けられる(汎用性のある)スキルを身に着けられるのか、という観点で、会社選びをすべきと考えています。
また、年功序列で年を経るごとに上がっていく給与制度や、勤め上げたらもらえる退職金などに魅力を感じている方も多いです。しかし、この制度は人がいれば勝手に会社も成長していった日本の昭和時代だからこそ成り立っていた制度であり、少子高齢化でより生産性が求められる時代には似つかわしくない制度です。日本政府・各企業がこの制度を惰性で残してきたことが、大手と呼ばれる企業も今では危機を迎えている大きな要因になっています。
私自身、大企業を辞めて思ったのは、「大企業という安定に守られていた」のではなく、「安定という幻想にに閉じ込められていた」ということです。
また、年収も退職金も、大企業とは言え今後どうなるかわかりません。世の中の流れは「ジョブ型」への移行です。そうなると、今後の生涯年収も約束されません。さらに言えば、少子高齢化が進む中で、今の若手層が高齢者になった時に、国による保障制度が今よりも薄くなっていることは間違いないです。そういう意味でも、会社に頼らなくてもよいようなスキルを身に着けるためのキャリア形成を意識することをお勧めします。給与も「貰えるもの」ではなく「勝ち取るもの」になります。

ノブレス・オブリージュ

私はキャリアコンサルタントをする中で、意図的に大企業の若手と会うようにしています。それは、大企業で悶々としながら実力を発揮できずに働いている人に多くお会いしていて、それは日本にとって本当にもったいないことだと思っているからです。
「ノブレス・オブリージュ」という言葉を聞かれたことのある方もいらっしゃるでしょう。ノブレス・オブリージュとは、19世紀にフランスで生まれた「noblesse(貴族)」と「obliger(義務を負わせる)」を合成した言葉です。


「身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある」という意味で、欧米社会の基本的な道徳感として、西洋貴族等に自発的な無私の行動を促す言葉です。財産、権力、社会的地位は自身の能力ではなく、社会から与えられたものなので、自己を犠牲にしても果たすべき社会的義務があるという考えです。
新卒での就職活動の時に「ノブレス・オブリージュ」という言葉は知らずとも、世界のインフラを支えたい、グローバルに活躍して世の中の人を助けたい、など、高い志を持って、現在の会社に入られた方が多いのではないでしょうか。その思い・志を保ったまま働けているのであれば、すごく幸せな環境だと思います。ただ、もしその思いがだいぶ薄れていると感じたのなら黄色信号です。
ノブレス・オブリージュは「社会的な地位」が高い方に向けられた言葉ですが、「能力の高さ」にも言えるのではないかと私は思います。つまり、「能力の高い者には、果たさねばならぬ社会的責任と義務がある」ということです。
新卒で大企業に入った方々は、その時点では間違いなく人生の勝ち組です。
私の思いとしては、そいった方々には、自身の能力を持て余すことなく、ぜひ社会に還元していただければと考えており、このnoteを読んでいただくことで、ご自身のキャリアについて考えるきっかけになれればと思っています。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*もし実際にキャリア相談したいという方がいれば、遠慮なくご連絡ください!




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