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将棋で考えるメディア論・情報社会論

デザスタK【オトナの将棋ラジオ】というタイトルでYouTubeチャンネルにて、「オトナが愉しむ『これまでにほかで見たことがない』新感覚の将棋エンターテイメント動画」を掲げて、コンテンツ配信しています。

今回アップした動画は、《なぜこのチャンネルで配信内容を広げるのか》ということについて説明するにあたり、将棋を事例としたメディア論や情報社会論の入門編としても作成しました。
Noteでは文章と絵で構成することにします。
※YouTubeで動画として視聴したい方はこちら

1.将棋にまつわるメディア状況

将棋は、筆者のような素人にとっても非常に奥深いものです。そして、そのプロフェショナルである将棋棋士は、とても興味深い存在です。将棋という技芸に突出した才覚を示し、プロになるためのきわめて厳しいセレクションを経て、その後も鍛錬の継続を求められ続ける、ごく限られた選良がひしめく特殊な世界です。

そして、いまや、トップ棋士同士による将棋対局は、サイトやアプリ、動画チャンネルなどで生中継され、同期的(サイマルティニアス [英]simultaneous)に視聴できるとともに、非同期的(アシンクロナス [英]asynchronous)に閲覧して楽しむこともできます。

今日では、テレビや新聞雑誌、ウェブサイトやSNSにおいて対局や解説などが、各媒体のみならず、棋士自身によっても盛んに情報発信されています。当チャンネルのように棋士にまつわる一次情報、二次情報のコンテンツ発信も多くあります。

従来のように、情報の発信はメディア組織のみに限定されているわけではありません。誰でも、いつでも、廉価に情報を発信することができる時代になりました。

将棋に限らず、さまざまな分野のトップに直接、話を訊くことができるのは、情報の発信を専業とする従来のメディア組織であることは従来の通りである一方で、将棋の普及や広報を目的とした各種イベント、大盤解説会や指導対局会ほか実際に現場で棋士と接することもできます。
加えて、対局場所や将棋飯、おやつといった副次的な周辺情報もコンテンツとして流通するようになりました。

実際に現場で見たり、聞いたりした一次的な情報とメディアを介して生産、流通、受容消費される二次的な情報が、重畳的に、いくえにも折り重なって、将棋にまつわる情報は生産、流通、受容消費されています

まとめれば、将棋にまつわるメディア状況には次のような特徴があります。

(1)メディアアソシエーション・アクター

従来のメディア組織(テレビ局や新聞社、雑誌社)、新たなメディア組織(IT企業など)、将棋連盟ほか棋士所属組織、そして棋士自身、将棋ファンが行っている

(2)メディア形式

従来のメディア(テレビや新聞雑誌など)、新たなメディア(ウェブサイト・アプリやSNSなど)の双方でなされている

(3)メディア内容

一次的な情報と二次的な情報が並置されるとともに、棋士・対局・解説など主要な情報のみならず、食事や趣味など副次的な情報も幅広く流通するようになった

そして、こうした将棋にまつわるメディア状況は、それぞれの要素や事柄が、重畳的かつ複層的に、いくえにも折り重なって、成り立っています

2.将棋、棋士、AI

また、現代将棋AIソフト技術的な進展急激な浸透という要素や事柄を無視することができません。チェスや囲碁や将棋といった、限られたルールに基づく閉じたゲームは、一般社会に先駆けて、いわばシンギュラリティを体現しつつあると見立てられるかもしれません。
AIソフトが最高峰に位置する達人に勝利し、人間よりもコンピューターのほうが強くなった今日、チェスや囲碁や将棋は時系列的に人間人工知能臨界点を迎え、それを示してきたと捉えることもできます。

技術、社会、人間の相関は、現代の焦点ともいえるテーマです。
そのような意味で、将棋と将棋棋士とAIについて考えることは、技術と社会と人間の相関に関する現代の最前線領域、カッティングエッジエリアであるとみなすことができるでしょう。

3.まとめ

そのようなメディアと情報に関する複層的な状況、そして現代将棋と棋士とAIの相関について考えてゆくうちに、このチャンネルの発信テーマをもう少し広げる必要があるのではないかと感じています。

これまで通り、将棋に関する情報を引き続き発信しつつ、技術、社会、人間の相関について考えたり把握したり見立てたりすることを企図したコンテンツも随時、コンテンツ配信していこうと思います。

YouTubeのチャンネル運営では、情報発信のジャンルを専門特化したほうが視聴されやすいという認知と仕組みがあるようですが、当チャンネルではいろいろと実験的に試みたいなと思っております。

今後、発信していく情報をよく検討し、すでに用意しているわけではないものの、教育系や考察系のYouTubeチャンネルが流行しているようですので、パッケージされた講義動画のようなものをまずは配信します。

[追補]今後の予定

まだあまり詳しく予定を決めているわけではないのですが、取り急ぎ第1弾として《大学の歴史》について配信しようと考えています。

その理由は二つあります。

一つは、わたし自身がかねてより教育に関心があること。

もう一つは、将棋棋士、とりわけトップに位置する人たちは、幼少期に将棋の才能を開花させた、いわば天才たちで、こうした選良はいかにして生まれるのかに関心があるからです。
4、5歳あるいは小学校低学年の時点で、周囲の子供とは異なる「強さ」を示し、その後トッププロに登り詰める将棋棋士というのは、ひじょうに特殊な存在です。

天賦の才に恵まれていることは間違いないでしょう。いわゆるギフテッドと呼ばれるタイプの人たちです。数学や物理といった領域でもみられます。おそらく、脳の働きや機能の仕方が常人とは異なります。こうした人たちは、ごく限られた割合しか社会に存在しないとも思われます。

他方、一般の市井は天賦の才に恵まれているわけではありません。後天的な教育を通じて、能力を開発し、知識を身につけていきます。学習の方法そのものも体得していくとも考えられます。

それは端的にいって、教育機関がその役割を担っています。初等教育、中等教育、高等教育のそれぞれの教育機関が、市民に対する教育を行います。
もちろん家庭内の教育や交友関係のなかで育まれるものなど、教育機関のみならず教育はなされていると考えるのが自然ながら、近現代において教育機関の機能や役割はきわめて重要であることは間違いないでしょう。

プロ棋士将棋の最高峰に位置する俊傑であることを踏まえると、教育や研究トップエンド高等教育機関ということになるのではないでしょうか。

そうした考えから、教育に注目し、将棋チャンネルではあるものの、まずは《大学の歴史》に関する動画をUPすることにした次第です。

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