メンバーの9割が入れ替わる、NPOの持続可能な人的モデル
「余暇を楽しむ」っていいますよね。
これってすごく日本人の思想が出ている言葉だなと思い。
余暇は、余った暇と分解でき、労働時間が基準にあった上でその余りと考える。余暇の語源は、ギリシャ語の「スコレー」。スコレーは自由な時間と解釈され、スコレーでは無い時間、いわば仕事の時間を「アスコレー」と呼ぶ。ここですでに、自由な時間を中心に考えるのか、仕事の時間を中心に考えるのか。思想の癖が垣間見える。
そんな無意識って面白いなーと思いながら、今日はNPOについて書く。
1. 1年でメンバーの9割が入れ替わる組織
「メンバーの9割が毎年入れ替わる組織」と聞いて、「え?それは組織として成り立つの?」と思う方が多いのではないだろうか。
会社であればなおさら、関係者、資金調達、サービスの維持など、社員に1年で辞められてしまっては会社として機能しない。しかしながら、個人と会社が相互選択関係であり、個人主義がより急速に進む今日、一人一人が一つの会社、しかも一つの職種に留まる時間はますます短くなっていくだろう。
そのような社会的風潮を考慮すると、メンバーが毎年入れ替わる組織は、決して非現実ではない。
実際に、僕自身が学生時代所属していた組織は、メンバーの9割(100人規模)が毎年入れ替わりつつも、継続的に組織として機能していた。
そんな組織がなぜ機能しているのか。株式会社の未来的モデルとして、分解してみる。なお、今回は事業的な側面についての課題に対する打ち手よりも、組織的な切り口に重きを置く。
2. 持続的な人的モデルの設計
流動性の高い組織において、ポイントは2つある。
1. 継続的にメンバーがエントリーする仕組み作り
メンバーの入れ替わりがこれだけ激しい場合、毎年エントリーの獲得に多大なお金は使えない。
一般企業であれば、一人あたりの獲得コストは数百万をくだらないと言われている今、いかに事業運営の中で多くの人を巻き込み、「良い体験」をそこでしてもらえるのかが重要となる。
体験モデルは一つではなく、複数用意すると良い。例えば、
・事業自体を実際に運営する運営側(短期・中期・長期)
・事業に参加するユーザー側
・ステークホルダー側(共創関係者及びその関係者が所属する組織)
その事業に関わる中で得られた体験を「より中心的な存在として、あるいは違う角度からまた関わりたい」と思う人材を育むことが、本モデルの核となる。
2. 事業マネジメントと組織マネジメントの切り分け
毎年ほとんどのメンバーが入れ替わってしまうと、事業として全ての質を維持しようとすることは難しい。何を中枢で管理し、どこを管理外とするのか、「選択と集中」が重要になる。
例えば、イベント運営を行う事業の場合、「毎年関わる関係者」と「資金の確保」は中枢メンバーで実行し、「イベント運営」自体はメンバーに任せるという切り方があるだろう。ここで、中枢メンバーが管理範囲を広げると、メンバーへ任せる仕事の粒度が小さくなり、結果として彼らの良い体験に繋がらない。人材エントリー不足が生じる。
何がこの事業にとって重要であるのか、慎重に選ばなければならない。
事業マネジメントと組織マネジメントの割合は、1:1が理想的だと考える。
この割合は、株式会社におけるそれと比べると、より組織マネジメントの割合が強い。通常の組織とは違い、メンバーの体験をより注力してデザインしつくさなければならない。
具体的には、個人のやりたいことと本組織に関わることが、メンバー一人一人が意味づけされている状態を描く。そのためには、まずは個人のやりたいに向き合うこと。そして、仕事の行動目標を意義目標に繋げ、鼓舞することが必要だ。NPOでこれが特に重要視されるのは、メンバーと組織の間にあるのが、金銭的な制約ではなく、感情的結合だからである。感情的結合はより動きやすく脆いものであることを忘れてはいけない。
3. 流動性の高い組織がぶつかる壁
・プレイングマネージャーの業務抱え込み
新しく入ってきたメンバーに対して、どこまでどの粒度で仕事を任せて良いのか分からない不安から自分で仕事を抱え込んでしまう、いわば球離れできないケース。
マネージャーは、「メンバーが自発的に動いてくれない」と思う一方、
メンバーは、「マネージャーから言われたことだけやればいい」と思ってしまう。結果として、マネージャーがタスクを抱え、苦しくなり、メンバーを見れなくなる。メンバーに渡せる仕事の粒度がどんどん小さくなる。負の循環が始まる。
対策としては、マネージャーがメンバーに対して、「自発的思考を促す仕事の振り方」ができるのかが一つ鍵となる。
・機能別部署ごとの衝突による不信感
業務の細分化が進み、組織全体の大局観を描けなくなると生じるのが、部分最適による衝突である。一度衝突が起きたときは、一度組織のMissionに立ち返ることでこの衝突を脱出できる。
忙しいという理由で、この立ち返りを省略し力づくで乗り越えようとする動きは、組織内の不信感に繋がり、結果として流動モデルの再エントリを減らしてしまう。短期的に見ると効率化されることがよいが、長期的に見たとき、組織は死へと向かうのである。
まとめ
いかがだっただろうか? 本件の話は決してNPOだからではない。近い将来、多くの企業が直面する課題であろう。そのために今何ができるのか。メンバーと、あなたが勤める会社は何でつながっているのか。
あなたは答えられるだろうか?
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