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緊急の受診は必要? こどもの発熱

休日や夜間のこどもの熱、心配ですし困りますよね。
今回は、こどもの発熱について救急外来に緊急で受診した方がいいのか、待ってもいいのかについて説明します。

こどもの緊急時の医療的な対応で重要なのは診断(病名)を付けることではなく、状態を的確に把握することになります。
救急外来で医療スタッフが注意するポイントなどを、一般の方も応用できるように、簡単に説明します。
(熱のこども達は仕事上たくさん見ていますが、自分の子が初めて熱を出したときは、とても心配で不安になりました。不安な親御さん達の助けになれば幸いです。)

こどもの発熱

救急外来を受診するこどもの患者の受診理由の大半を占めます。
こどもの熱の原因は、ウイルス感染症が大部分を占めますので、一部の例外を除き症状を緩和する目的の対処療法のみで改善が期待できます。

原因

  • ウイルス感染症
    何らかのウイルスが感染することで起こるものです。
    上気道に感染すると風邪(ウイルス性上気道炎など)、消化管に感染すると胃腸炎などを起こします。
    原因ウイルスによって、臨床症状が異なります。
    風邪は、ほとんどの人には軽症ですが、インフルエンザウイルス、RSウイルス、新型コロナウイルスなど罹患する人によっては重症化するウイルスがあります。
    胃腸炎は、ロタウイルス、ノロウイルスなど症状が強く出やすいウイルスがあります。
    多くは特効薬はなく、免疫による自然治癒が期待できますが、脱水が強い場合や細菌感染の合併を来した場合には抗生剤治療や点滴、入院治療が必要です。
    例外的に抗ウイルス薬による治療ができる疾患もありますが(インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなど)いずれも緊急での受診は必要でないことが多いです。

  • 細菌感染症
    細菌が各々の臓器に感染することで起こります。
    感染臓器によって肺炎や髄膜炎、菌血症、尿路感染症、中耳炎などとなります。
    風邪から肺炎や中耳炎を発症することがあるように、ウイルス感染症に合併することがあります(風邪は万病のもとですね)。
    自然治癒が期待できるウイルス感染症と異なり、自然には治りにくく抗生剤による治療が必要となることがあります。
    適切な治療が行われないと重症化、致死的な経過をたどったり、後遺症を残す危険があります。

  • その他
    川崎病などのこども特有の疾患
    悪性疾患(白血病など)
    膠原病(リウマチの仲間など)
    薬剤熱
    など

緊急での受診が必要な場合

① 生後3か月以下の乳児の発熱

② 発熱が長引いて(5日以上)元気がない

③ 繰り返す嘔吐などで水分がとれない

④ 心配で心配で困っている

説明


① 生後3か月以下の乳児の発熱
生後3か月以下の乳児はお母さんの免疫を引き継いでおり風邪をひきにくいこと、予防接種が進んでおらず重症の細菌感染症が隠れていることが多いので、緊急受診の対象となります。
乳児は体温調整が苦手なので、温めすぎによる熱があります。
予防接種のすぐ後の熱は、副反応のことが多く様子を見れることが多いです。

② 発熱が長引いて(5日以上)元気がない
多くのウイルス感染症は3-4日間までに解熱しますので、下がらない場合は細菌感染症などを引き起こしている可能性があります。
また、川崎病などの感染症でない疾患にかかっていることもあります。
アデノウイルス咽頭炎や突発性発疹症のように、ウイルス感染症でも熱が長引くことはあるので、熱が続いても元気(食事もとれ、遊んだりもする)があれば、緊急での受診は必ずしもいりません。

③ 繰り返す嘔吐などで水分がとれない
こどもは体が小さいため水分を蓄える量が少なく、脱水に弱いです。
脱水が続くと急激に体調が悪くなることがあります。
嘔吐する場合は、少しずつ、こまめに、塩分と水分を含んだ水分(OS-1やリンゴジュースなど)をあげましょう。
ぐったりしている、おしっこが全然でない、体重が元の1割近く減っているときは、重度の脱水が疑われますので、緊急での受診が必要です。

④ 心配で心配で困っている
親やこどもの不安に寄り添うのも医療の重要な役割です。
受診について困ったときは、自治体の相談窓口や救急病院に電話をしてみてください。
救急外来では、心肺停止の方や重症の疾患、交通事故で大けがした人、大やけどした方など、命の危険にさらされる方が次々と来ます。
タイミングによっては長い時間待たされてしまったり、対応が不親切で嫌な気持ちをさせてしまうこともあるかもしれません。
その状況に全力で対応しているはずですので、ご配慮いただけるとありがたいです。

解熱剤について

  • 解熱剤の効果
    解熱剤は、熱を下げることで症状を緩和する対処療法の薬ですので、疾患そのものを治す効果はありません。
    発熱は、免疫が正常に働いているサインになりますので、通常、感染に伴う高熱のみで脳障害などを起こすことはなく、高熱=危険な感染ではありません。
    使用することで免疫反応としての熱を下げてしまうことになるので、元気がある場合は使用する必要はありません。

  • 解熱剤を使わない方がいい場合
    生後まもない乳児は、熱が下がりすぎてしまい低体温を起こす危険がありますので、解熱剤は使用せず部分的な冷却の方が安全です。

  • 解熱剤の種類
    解熱剤は、安全性からアセトアミノフェン(カロナール、アルピニーなど)が基本になります。
    大人の解熱剤のロキソニンなどは脳症を起こす危険があるので、使わないでください。
    高熱があり、ぐったりしている時に頓用で、約6時間以上あけて使いましょう。
    市販の解熱剤は、抗アレルギー薬が含まれることでけいれんを起こしやすくなることがありますので、熱性けいれんのご家族がいたり、起こしたことのある人は、医師や薬剤師さんに相談してください。

まとめ

今回は、こどもの発熱で緊急での受診が必要な場合についてまとめました。
人それぞれで状況や危険度も変わりますし、親御さんの直感的な判断の方が正しいこともありますので、すべて当てはまるわけではありません。
迷った時など参考にしていただければありがたいです。

おまけ
こどもの救急(日本小児科学会)
日本小児科学会の作成した生後1か月〜6歳のこどもを対象にした救急受診が必要かどうかを判断してくれるサイトです。
とてもよくできていますので参考にしてください。

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