見出し画像

【化学系博士人材シンポジウムのレポ】「博士たちは今 ~化学出身の新聞記者が考える問題点~」

今週の”博士”をテーマにした記事は、2022年11月に開催された、日本学術会議の化学系博士人材に関する公開シンポジウムの講演レポート。今回は講演5つ目に関する内容です(残りあと2つです!)。

これまでのレポートと同様に、講演の内容を簡単にまとめたスライド(画像)と、本講演に関する私の所感を簡単に記します。

今回は、博士人材とそれを取り巻く環境を長年取材してきた、読売新聞東京本社の新聞記者である杉森さんの講演。これまでの講演で登壇された化学メーカーや大学とは異なる立場で、博士人材を見つめてきた杉森さんが語ったこととは……!?

内容まとめ

所感

"おカネ以上にヒトの問題!?"について

「博士の先輩の苦労を見て、優秀な学生が博士課程への進学をためらう」
「博士の数は、日本だけ低下」
「『使えない博士』のイメージ」

本講演では、そんな言葉とともに、「博士人材に対するイメージは最悪」と述べられていました。

一方で、これまでの講演では、「博士はイノベーションを推進できる人材です」とメーカーの方々が述べられていました。

本公演の中で、講演者の杉森さんは「企業の方々の博士への評価が高くて驚いている」というニュアンスの言葉を仰っていました。

前者の「博士のイメージは最悪」というのは、おそらく世間一般的な(博士という存在にあまり触れたことがない場合の)感想なんだと思います。これに対し、後者の「博士はイノベーションを推進できる」というのは、博士人材を積極採用し、博士の能力を知っている人たちだからこそ、出てきた言葉だと推測します。

また面白かったのが、「博士への待遇に関する考え方」が、総合化学メーカーの方と杉森さんで違っていたところ。

メーカーの方々は「博士という学位だけでは優遇はしない」というような趣旨の言葉を述べられていましたが、杉森さんは「個人の能力に依存するとは言え、”修士+3年”程度の待遇しかないのはあんまりだ」と仰っていました。

私自身は、メーカーの立場もしくは大学(学生)の立場でしか、博士人材のことを考えてこなかったなぁと、今回の講演を聞いて感じました。様々な立場から博士人材を捉え、博士をとりまく課題を紐解いていくことの重要性に気付かされました。

狭い分野の専門家ではダメ!

先程は、化学メーカーの方々と杉森さんの主張の違いについて、焦点を当てましたが、同じ主張をされている部分ももちろんありました。

例えば、上記画像8枚目(最終ページ)に記載した「総合プロデューサーになろう!」。狭い分野の専門家ではダメで、異分野への橋渡しができるような博士人材が求められているとのこと。

異分野に触れて仕事を進めていくこと自体は、博士に限ったことではなく、社会人全般に言えることだとは思いますが、専門性の高い博士人材は、特に気をつけなければいけないことなのかもしれません。

参考)講演時の手書きメモ(本記事の参考文献)

博士人材が活躍できる社会となりますように!

Dr. りけ子(Tsugumi)


この記事が参加している募集

振り返りnote

多様性を考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?