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小説|知花とイミー~未知との遭遇~

知花は、思い悩んでいた。

「わたしには、生きる価値があるんだろうか」

知花は、13才の中学生の女の子。
学校の勉強には、まったく興味が持てず、思い悩んでいたのだ。

「みんなが勉強しているのだから、わたしも勉強しなきゃ」
「でも、何が楽しいのか全然わからない」
「学校をさぼりたいなぁ」

知花は、決して勉強ができないわけではない。親からも、担任の先生からも、やればできる子と、太鼓判を押されている。

でも、やれないのである。勉強をするくらいなら、好きな本を読んでいたほうが”まし”なのだ。

「学校から、テストがなくなってくれないかなぁ」
「いい点取らないと、親がガミガミうるさいんだよなぁ」

こんな調子なので、毎日、うつうつとした日々を送っていたのである。

そんなある日、下校途中で宇宙人と出会ったのだ。

全身毛むくじゃらの、人形みたいな生物で、名前をイミ―といった。

「どうしちゃったんだい?お嬢ちゃん浮かない顔して」

なぜかこの宇宙人は、わるい生物ではない気がして、悩み事を相談してしまう知花だった。

「勉強が好きではなくて、思い悩んでいたんです」
「わたしには、生きる価値があるのかって...」

イミーは、笑いながら答えた。

「勉強に意味なんてないよ、好きじゃないなら仕方がないさ、はっはーっ」「それに、お嬢ちゃんには、ちゃんと価値があるから大丈夫」

知花は、とっさに返した。

「どうして、わたしには価値があると思うの?ねぇ、教えてちょうだい」

イミーは、答えた。

「簡単なことさ、ボクが価値があると思ったからだよ」
「それだけさ」
「くわーっかっかっかっ」

知花は、なんだかよく分からない、この宇宙人が少し好きになった。

「でも、わたしは、テストでいい点を取れないから親にはよく思われてないわ」
「親には、価値があると思われてないのよ」

知花は、前回の期末テストの答案を親に見せて、説教されたことを思い出した。

イミーは、続ける。

「親は、君の将来を心配してるんだろうね」
「でも、大事なことがなにも分かってない」
「テストでいい点を取ることが勉強じゃない。勉強して、きみがなにを学んだのかってことが大事なんだ」

知花は、少し納得した。

「学ぶことが、大事なの?じゃあテストでいい点を取れなくてもいいの?」

イミーは、答える。

「ちゃんと、自分で考えて意味を読み取ろうとすることが大事なんだ」
「考える力をつけていけば、自然とテストの点は取れるようになるよ」

知花は、勉強するときに覚えることに必死で、なにも考えていなかった。

「そうか、覚えることが勉強だと思っていたけど、そうじゃないんだ」
「考えることが、勉強なんだわ」
「イミーありがとう」
「大事なことを教わった気がするわ」

イミーは、そわそわしていた。

「いけねっ、宇宙船に帰らなきゃ」
「くわーっかっかっかっ、ばいばい、またねぇ」

知花、13才の夏、未知との遭遇であった。



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