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股関節骨折はなんとしても避けたいワケ #3

はじめに

30歳を過ぎると、骨を作る能力は低下していくため、
毎年少しずつ骨量が失われていきます。

骨折の>95%以上の原因は転倒です。
転倒の原因はさまざまですが、骨粗鬆症もその1つです。

骨粗鬆症のリスクは幼少期の骨密度によっても左右されるので、
10代、20代であればより質の良い、強い骨につながる
ライフスタイルを心がけることができますよね!

#2のおさらい

前回は、
股関節骨折後、死因は手術に関連することや基礎疾患による
ものなど理由は様々だが、特に最初の3ヶ月の死亡リスクが
上昇するということ
。この3ヶ月の死亡率は男性の方が高く、
骨折の影響は男女ともに長期的であるということでした。

最後の論文紹介です

今まで通り、結果だけサクッと目を通したいと言う方は
線で区切ってある”研究からわかったこと”と言うところから
読んでみてください♪

今まで見たきた論文では、単に股関節骨折をした人という
大きなまとまりで考えていました。このグループの中には、
1. 既に老人ホーム等に入居していて何かしらのケアが必要な方

2. 自立して生活を送っている方
どちらも含まれることになります。
この2つのグループの方の健康状態や基礎疾患に違いがあることは
容易に想像できますね。なので、既にケアが必要な方の死亡リスクと
自立していて比較的健康な方の死亡リスクは違うんじゃないかと
と思うのは当然の疑問ですよね。

今回の研究ではこの弱点や限界を克服するためにデザインされました。
前向きコホート研究といいます。
この前向きコホート研究を簡単に説明すると、
例えば、タバコと肺がんのリスクに関係があるかを調査するとします。
前向きコホート研究では、
1.タバコを吸う集団

2.タバコを吸わない集団
を長期にわたって追跡します。
そして、将来的にガンになるかどうかを評価します。

観察的な研究なので、#1と#2で紹介した数ある質のいい研究をまとめて分析するという方法より少し信頼度は下がってしまいますね。

今回の研究のデザイン

  • 股関節骨折に関連する短期(≦1年)中期(1〜≦5年)、長期(5〜≦10年)の死亡率を明らかにすることが目的

  • 65歳以上の自立して生活している米国女性9704人のうち5580人を調査

  • 5580人の内訳は股関節骨折をした人1116人、対照者4464人

  • 補助なしで歩けない人、両側股関節置換術を受けた人は対照者から除外

  • 選ばれた5580人が自立して生活している集団の良いサンプルであるかどうかは、この調査に選ばれなかった集団と年齢、肥満度、股関節骨密度、喫煙箱年数、椅子からの立ち上がりなどの項目を2つの集団を比べ両者に大きな差がないことで確認。

  • 参加者とは4ヶ月ごとに連絡を取り、生存や骨折の有無を確認。

  • サブ目的として、80歳以上の健康な女性の股関節骨折に関する死亡率を調べた。


研究から分かったこと

  • 股関節骨折の症例は、年齢をマッチさせた非骨折の対照群に比べ

    • BMIが低かった

    • 股関節の総骨密度が低かった

    • タバコへの暴露が多かった

    • パーキンソン病を有し、椅子から立ち上がるのに腕を使う必要がある症例は対照群に比べやや多かった

    • 70歳未満では対照群よりも多くの症例が糖尿病を患っていた

  • 股関節骨折後の死亡リスクと年齢の間には、有意な相互作用が認められた

    • 調査開始時の年齢が70歳未満、70-79歳、80歳以上で分けると股関節骨折による死亡リスクは年齢が上がるにつれて減少した

    • 65〜69歳で股関節骨折を経験した人は、最初の1年間の死亡率が対照群に比べて5倍高かった

    • 80歳以上では、股関節骨折後の最初の1年間の死亡リスクは増加しなかった

  • 対照群の死亡は観察開始1年目に均等に分散していたが(3ヵ月ごとに約25%)、股関節骨折の集団の1年目の死亡の72.5%(189例中137例)は 股関節骨折後6ヵ月以内に発生していた。

  • 症例では股関節骨折後1年間の死亡の半分以上(189例中99例[52.4%])が最初の3カ月以内に起こっていた。

  • 80歳以上の健康な女性が股関節骨折をした場合、骨折1年以内の死亡率が上昇しており、対照者と比べ、年間の死亡率が2.8倍上昇していた。

  • 80歳以上の健康な女性が股関節骨折をした場合、骨折1年以内の死亡率は上昇していたが、全体的な死亡率の増加は見られなかった。

  • 股関節骨折の集団と対照者の集団のいずれにおいても主な死因は冠動脈性心疾患、癌、および脳卒中であった。

  • 股関節骨折の集団は肺炎、認知障害、骨粗鬆症で死亡する割合が多く、 対照群では癌で死亡する人が多かった。


この研究で考察できなかったこと

  • この研究は65歳以上の閉経後の白人女性を対象だったため、
    男性、他の民族、若い女性には一般化できない可能性がある

まとめ

◆研究対象はは65歳以上の白人女性でしたが、高齢白人女性はアジア人同様、股関節骨折をする可能性が最も高いグループであるため、私たちにとっても有益になりうるデータですね。男性のみなさん、女性だけの研究の紹介になってしまってスミマセン。

股関節骨折後、
最初の1年間に死亡するリスクが最も高くなるということ、
特に最初の3ヶ月の死亡率が高いということも
#1、#2で見てきたデータと一致するものでした。
この死亡リスクが高い期間に死亡率を減少させるには
どのようなことができるのかに焦点を当てた研究が今後必要ですね。

65〜69歳の女性は、最長で5〜10年間死亡リスクが上昇し続けるということも#2でみてきた骨折の影響は長期的であるということと一致しています。また、この年齢の骨折後の死亡率が対照者に比べて5倍も高い
というのは驚きの数字です。
なので、65〜69歳の女性が股関節骨折をしないよう予防することは、
高い優先度を持つべきことですね。

最後に

お母さんやおばあちゃん、パートナーさんが65〜69歳の
ご家族をお持ちの方、大切な家族とより長く健康に幸せに過ごせるように、
今から出来ることを提案してあげませんか?

私の両親は今60代です。
両親と言っても2人とも他人です。他人の習慣を変えるのは
なかなか難しいことですよね。
それでも、大切な両親には転倒や骨折をせずに長生きしてほしい。
特にこのようなデータを見た後には尚更、転倒、骨折しないような
健康状態に近づいてほしいと思うので、しつこくしつこく(笑) 
時にはデータも交えながら両親が今やるべきことを伝えている毎日です。

次回は

論文読むのも疲れてきたので(笑)本音です。
次は骨粗鬆症のリスクファクターについてお話します。
そしてその後、いよいよ、今から出来ることのお話に入っていきます!

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
よろしければ是非フォローもお願いいたします。
Moet

参考文献
LeBlanc ES, Hillier TA, Pedula KL, et al. Hip Fracture and Increased Short-term but Not Long-term Mortality in Healthy Older Women. Arch Intern Med. 2011;171(20):1831–1837. doi:10.1001/archinternmed.2011.447


Haentjens P, Magaziner J, Colón-Emeric CS,  et al.  Meta-analysis: excess mortality after hip fracture among older women and men.  Ann Intern Med. 2010;152(6):380-39020231569




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