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【極・短編小説】園児に聞いた話 〜なにをたべる?〜

これは私が保育園に勤めていた時の話です。

当時、私は1歳クラスを担任していました。
4月当初は言葉を上手く話せなかった子どもたちですが、年度も終わりを迎えようとする2月ともなれば簡単な言葉のやりとりを楽しめるようになる子も多くなっています。
そんな時期、子どもが可愛らしいゾウのぬいぐるみを手にごっこ遊びを楽しんでいました。

「モグモグ、モグモグ」

その子はゾウのぬいぐるみに何かしらのご飯を与えている様子。
バナナかな?
それともリンゴ?
いやいやこの子が好きなラーメンという線もあるぞ!?
と一人で想像しながら見守っていると。

「モグッ……」

どうやらゾウがご飯を食べ終えたようです。
私は答えを聞いてみることにしました。

「このゾウは何を食べてるの?」

バナナ?
リンゴ?
正解は?

「にんげん」

「にんげん!?」

「うん! にんげん!!」

に、人間!?
まさかの人喰いゾウさん!?
想像の斜め45度からさらに上行く答え。
普通なら答えを聞いたあとに

「ゾウさんバナナ大好きなんだねー」

「美味しそうに食べてたねー」

などと共感しながら遊びが広がればと思うところなのですが、この場合は??

「血に飢えた怪物なんだねー」

「何人くらい食べたのかなー」

となるのか??
いやいやサイコパスが過ぎている!?
と思考が停止して何も答えられず私はフリーズしてしまいました。

ネタバレですが、後日「にんげん」の正体がわかりました。

ニンジンでした。

その子が野菜が出てくる絵本を指差し

「にんげん!!(にんじん!!)」

と教えてくれたからです。
ゾウさんは人喰いの怪物ではなく、ベジタリアンファニーエレファントさんでしたとさ。

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