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【意味がわかると切なくなる話①】ぎっくり腰

1.ぎっくり腰

朝起き上がろうと身体を起こした瞬間。
ビキビキビキッと腰に激痛が走った。
「ぐぅううっ」
俺は獣のような呻きをあげ動けなくなる。
「あなた大丈夫?」
呻く俺に心配した妻が声をかける。
「またやっちまったみたいだ」
俺は過去にもぎっくり腰になったことがある。
そしてまたこの痛み。
「あなた無理しない方がいいわよ」
妻に優しく声をかけられ、毎度ぎっくり腰で動けなくなる自分が情けなくなる。
「うぅぅ、あ、ありがとう」

その日、会社を休み病院へと向った。
毎度、毎度、ぎっくり腰で動けなくなったらたまったもんじゃない。
俺は何か良い治療法や対処法がないかといつもより細かな検査をうけた。
医者からは安静にすることが1番といつもより多めに薬をもらった。

あれから1週間、薬のおかげか、まだ若干の痛みはあるものの回復してきている。
妻や娘、息子たちも毎日、お父さん無理しなくていいからねと優しく声をかけてくれる。
俺は幸せだ。
この家族を守るためにも早く完治させねばと思う。
ああ今日も、俺の好きなメニューが晩飯に並べられている。
ああ、なぜか今日のアップルパイはしょっぱく感じるな。

2.ネタバレ解説

この男性はぎっくり腰ではなく癌に侵されていた。
腰に痛みが出るほどに進行しており家族はその病状を知っている。
本人もうっすらと事実は認識している。
自分を気遣い嘘をつく家族の優しさを想って、気づかぬふりをしている。
そして愛する家族のため病気を完治させようと決意しているところなのだ。

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