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お別れの詩、そして、それでも桜は咲く

もうお別れをしなくちゃね
ぼくはこの現世の世界から
永遠の国へと行くんだよ
父さん母さんのために
短い命だったけど
喜び望んだこのぼくです
長い旅路に今日出ます
無限主のもとへ行くのです
皆さん、ぼくアンヘリートは
もう天界へと発つのです

母さん、どうか泣かないで
悲しんだままで行きたくないの
幸せに天に飛ぶことは
尊いことであるのだから
あなたのために祈ります
口づけで送り出してよね
どうか信じていて欲しいの
ぼくなりにお祈りするために
みんなのためになり代わる
このいとおしいアンヘリート

 これは、『アンヘリートのお別れの詩』(チリ、ベルソ)(作詞:ホルヘ・セスペデス)第1と第2の詩です。大阪大学大学院人間科学研究科の共生社会論でご一緒している千葉泉教授によるスペイン語からの翻訳で、以下はこの詩の解説です。

古くローマ帝国時代以降、地中海沿岸のカトリック系諸国では、幼くして亡くなった子どもの魂を聖なる存在とみなし、その昇天を祝う、という風習が存在してきた。南米チリの中央部でこの儀礼は「アンヘリート(小さな天使)の葬礼」とよばれ、「悲しみの昇華装置」として、今日でも重要な社会的役割を果たしている。

 千葉先生は、中南米の多様な民衆文化の形成過程を考察する際に、民族音楽を水先案内人にするという独創的な研究実践や語り合いの取り組みもされています。

 そして、東日本大震災後、宮城県出身の両親を持つ千葉先生は、みずから創作した被災者への応援歌「それでも桜は咲く」を歌ってきました。

「それでも桜は咲く」(©千葉 泉、2011年)

変わり果てた街並み 過ぎるとそこは薬師堂
倒れた灯篭のそばに お地蔵さま一人
穏やかな微笑みの その向こうには
薄紅のつぼみたたえ
しだれ桜ひっそりたたずむ
そして桜は咲く
大地に根をおろして
きびしい冬の日々にも
新たな芽育みながら
それでも桜は咲く
寒さにじっと耐えて
春の訪れ告げる
そのいのち続くかぎり


この歌の最後は、桜ではなく、「わたしが咲く」に変わります。何度聴いても泣けてきます。

 それでもわたしは咲く
この大地踏みしめながら
つらく苦しいときでも
生きるよろこび忘れないで
それでもわたしは咲く
この悲しみに負けないで
春の訪れを待つ
この胸にいのちの灯ともるかぎり

「それでも桜は咲く」歌詞
http://tabunkakyosei.hus.osaka-u.ac.jp/music/soredemosakurawasaku.html

「それでも桜は咲く」音源
https://www.youtube.com/watch?v=fR4v5Jk-bGc


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