見出し画像

衝撃を受けたクルマ〜肉迫のスーパーハイト軽ワゴン〜

皆様は“衝撃を受けたクルマ”というのはありますか?

 内外装のデザイン、動力性能のスペック、排気のサウンド、時代背景によるもの、などなど“衝撃を受ける”基準というのは人それぞれだと思います。

 私の仕事は“広義的な意味合い”で見れば自動車関係の職種にあたります。従って、他の人に比べると色々なクルマと接する機会が多いです。そんな私が今まで触れてきた様々なクルマ達の中で最も衝撃を受け、印象深い話の多かったクルマをここで紹介します。

それはホンダのN-BOXです。

 今回は、私が衝撃を受けたクルマ、ホンダのN-BOXについてお話しをして、各メーカーのスーパーハイト軽ワゴンの特徴や選び方も少し触れたいと思います。



N-BOXとの出会い

 私が初めてこのクルマに乗ったのは、noteに取り組む前の事です。もう6年近く前の事です。お借りするキッカケはもう忘れてしまいましたが、ターボ付きの4WDのN-BOXカスタムというこの車種では最上級モデルに乗る機会がありました。

 それまで、私の軽自動車のイメージと言えば“主婦の足車”でした。

 “日常の足に不便は無いが、パワーは無いから少しの登り坂でもエンジン音が室内に容赦なく響くし、安っぽい、税金が安くてタイヤ等の部品代も抑えられるといった金銭的なメリットしか無いカテゴリー”というイメージを私は軽自動車に持っていました。

 既にダイハツ自動車からはタントという、N-BOXと同じカテゴリーである“スーパーハイト(背高)軽ワゴン”の車種は販売されていました。確かに全高は高く居住性にはとても富んでリラックス出来る車種ではありましたが、やはり動力性能や静粛性は先述した“軽自動車”のイメージは払拭出来なかったモデルと記憶しています。

 私がN-BOXカスタムに乗る前にどんなイメージを持っていたかは容易に想像出来るでしょう。しかし、実際に借りて乗ってみると私の今まで持っていた軽自動車のイメージをひっくり返すものだったのです。

 動力性能は、ターボ付きの4WDという最上級装備だった事もあり、一般道では全く力不足感を感じませんでした。それどころか高速道路の合流でもアクセルを踏み込めばあっという間に、制限速度まで達する事が出来たのです。それでいて、アクセルを踏み込んだ時でもエンジン音で車内の会話が成り立たないという事も無く、意のままにハンドル操作も出来るというシャシー性能のバランスの良さが際立ったのです。トラックのように立ったフロントガラスも運転中に周囲の状態が把握しやすく、安全運転に一役買っていると言えます。

 内装・外装の質感は目を見張るものでした。最上級グレードなだけあって、オートエアコンやクルーズコントロールは当たり前で、シートは革調でデザインも編み込み風の部分があったりと凝った造りでした。内装のパネル類も光沢のある物が採用されたり、複雑に織り込んだような構造になっており、外装もメッキ部品が多用され見栄えも良い、クラス上の高級感のある仕上がりとなっていた記憶があります。

 何れにしても、動力性能や内外装の質感はクラスを超えた快適性と上質さでした。それでいて税金や部品代が安いのですから、クルマってこういうので充分だよなと思わざるを得ません。


高級な軽自動車は
ある種ミニマリズム的
かも知れない

 当時私がN-BOXを借りた際に車両説明を担当した方も
『このグレードでこの装備だと乗り出し300万円も見えてくるんです。ここまで来ると、上のクラスの車種、例えばフリードやオデッセイなんかも視野に入ってきます。それでも、お客様はN-BOXが良いのですって指名買いしていくんですよね。』
 と言っていましたが、なるほどこの装備と質感であれば納得もします。上級車種のベースグレードを買って簡素でプラスチッキーな内装を選択するなら、最上級の軽自動車の高級感を選ぶ気持ちも理解出来ます

 なんとなく、現代のミニマリズムに通ずる部分もあると思います。

 一昔前は、軽自動車を選ぶのは“妥協”というイメージは否定できませんでした。車両価格が安い、税金が安い、従って装備も質感も劣ると言った部分から来ていたと推測されます。軽自動車に乗るくらいなら、それが見栄でも型落ちの大きなクルマに乗った方が……と、いう考え方が多かったと記憶しています。武士は食わねど高楊枝的な考えです。

更に車両説明の担当者の方曰く
『今までは、子供が出来たら少し無理をしてもミニバンという考えが多かったです。それが最近では、節約思考や必要以上の物を持たないミニマリズム的な考えの方が増えて来た事により、軽自動車という選択が“スマート”という事でスーパーハイト軽ワゴンを選択肢に入れる方が多いです。それと、奥様の方が大きいクルマの運転が苦手という事で、クラス上のミニバンを購入出来る財力のあるような世帯でも、ハイト軽ワゴンの上級グレードを買われている方が多いですね。旦那さんの方がフルサイズミニバンを買いたがっていて、逆に残念がっていたりしますよ。』
 と、笑いながら話していた記憶があります。

 従来はファミリーカーとして選ばれにくかった軽自動車が、購入者の思想が変わってきたと共に自動車生産に関わる技術の進歩や時代の変化により、クオリティを大幅に上げて第一選択肢となり得るようになったと言えるでしょう。

 軽自動車の取り回しの良さ、税金や消耗品の安さに加えて、クラス上の高級感もあるのであれば“スーパーハイト軽ワゴンで良い”という結論に至るのも納得が出来ます。


多くて似ているこそ
選択が難しい
スーパーハイト軽ワゴン

 さて、スーパーハイト軽ワゴンを賞賛しましたが、改めてこのカテゴリーの特徴をまとめましょう。と、言っても明確な基準は存在していませんが私が現在国内自動車メーカーから発売されている車両の特徴をまとめると下記のようになります。

  • 軽自動車の枠いっぱいのサイズ(全高は1700㎜以上)

  • ボンネットがある2BOXスタイル

  • リヤドアがスライドドア

 この3点が共通と言えます。そして、2024年6月段階で販売されているスーパーハイト軽ワゴンは下記のラインナップになります。

ダイハツ
タントシリーズ、ムーブキャンバス

 スズキ
スペーシアシリーズ

 ホンダ
N-BOXシリーズ

 ニッサン
ルークスシリーズ

 ミツビシ
eKスペースシリーズ

 何の車種も、上記の3点を満たしておりパッケージングには非常に似ていますが、価格や装備、特徴は各メーカーで全く違います。

 スーパーハイト軽ワゴンの始祖でもあるダイハツのタントは、助手席側の柱(ピラー)を廃止する事により、大型の荷物やベビーカーの積み込みを容易にしています。更に2022年にはアウトドア調の外観や荷室に戸棚のようなボートが付いており、ローテーブルとしても利用出来る等、先述したピラーレスドアをよりアクティブに活用できるファンクロスというモデルが追加されました。

 同じくダイハツのムーブキャンバスは、ポップな2トーンカラー仕様から深みのあるシックなカラーまで幅広いカラーラインナップになっております。内装もメッキが豊富に採用された仕様からイメージカラーのホワイトとブルーを取り入れた可愛らしいイメージのグレードもあります。自分の好みを反映するにはうってつけの車種と言えるでしょう。後席シート下に収納を用意したりと使い勝手にも富んでいます。2024年6月現在、このカテゴリーで最も車両価格が低いところからスタートするのもこの車種です。

 スズキのスペーシアは、リヤシートにオットマンやサーキュレーターが採用されたりタブレットやスマートフォンを差し込めるような構造のミニテーブルが装備されていたりと、後席に乗る人への快適性に非常に富んでいます。こちらには、先代スペーシアをベースに貨物登録にする事により、タントファンクロスのように仕切りやテーブルに出来るボードを装備し、車中泊やリモートワークでの活用、あるいは荷物の積載能力を向上させたスペーシアベースというモデルもあります。

 ホンダのN-BOXは、ダイハツが開拓したスーパーハイト軽ワゴンというジャンルを盤石なものにした車種と言えます。ホンダ独自の燃料タンクを車体の真ん中の床下に配置するというセンタータンクレイアウトを採用しており、走行中の安定感や室内空間の広さはこのジャンルではトップクラスです。更に、上級のカスタムグレードの内装は先述した通り、内外装の質感はクラスの垣根を超えたクオリティで遮音材も惜しみなく採用しているので運転時の静粛性も高いと言えます。このカテゴリー内ではやや高めの価格設定ですが、それも納得の質感と装備です。

 ニッサンのルークスとミツビシのeKスペースは、この2社の共同開発のため兄弟車種なのでまとめて紹介します。最大の特徴は、ニッサンで言うとプロパイロット、ミツビシで言うとマイパイロットというレーダーやカメラシステムを用いた運転アシスト機構が選べると言う点と言えます。アクセルペダルとステアリング操作をアシストする為、高速道路や渋滞路、長距離運転での負担が軽減されると言えます。更にリヤシートのスライド幅もこのカテゴリーでは最大なので、乗る人、積む物、使用するシーンによって様々な使い方が出来る車種と言えます。  

 このように私がスーパーハイト軽ワゴンの特徴を簡単にまとめても、これ程各社それぞれの特徴があります。

 このカテゴリーを購入検討されている方は"似ているからどれも一緒でしょ"なんて決めつけてしまってはいけません。特に軽自動車は各部のサイズ規定が厳しいので、たった数ミリ数センチの内装パネルの張り出しが居住性に直結します。また、シートの質感や硬さ、高さといった体に触れる部分も各メーカーで考え方が違います。乗る人の体格によってはシートが低い、或いは床が張り出した構造の車種だと着座姿勢が体育座りのような窮屈な姿勢になり、ストレスになってしまいます。

 多くの選択肢の中から買いたい車種が絞られてきたら、実際にクルマを自分だけでは無く同乗する家族などと一緒に見て、乗って感じた事を話し合って検討すると、後悔やモヤモヤの無い、乗る人のみんなが満足出来る素敵なカーライフが送れる事と思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?