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【世界のネジを巻くとは】 舞台 「ねじまき鳥クロニクル」

自分の中のぐちゃぐちゃだけが、真実

中身なんて、分からない。人のことも、世界の理も。知っていると思っていることは、相手の皮膚から上だったり、自分たちが知っていると思い込んでいる社会を覆う、牛乳の膜のような部分だけだったりする。

だけど、苦しみや辛さは、その肉体に反映される。内面で起きていることが、皮膚の上に表れる。精神世界で殺された綿谷ノボルが、脳梗塞を起こしたように。

内面と外面、表と裏、肉体と精神。見える世界と見えない世界は、思ってもいないほど繋がっている。

肉体的な痛みから解放されたいと願い、肉体の死を願った後、精神的に何も感じなくなってしまうのは、その逆の現れか。

ねじまき鳥である我々は、それぞれがそれぞれのネジを巻く。それらが時計の中の歯車のようにお互いに作用する。もしかしたら100年後かも知れないけれど。

そして、小さな声で助けを求める。大きな声では「大丈夫」と言いながら。

井戸の奥と心の奥のリンクのさせ方に、鳥肌がたった。

人間の多面性を表現する、ダンサーさんたちにも。そこには、平野啓一郎さんのいう「分人」も感じた。状況や境遇によって、人は自分の分人を幾人も幾人も作っていく。

「壁」の大道具も、役者のように自在に動いていた。夢の世界、精神世界の不思議さや法則性の無さが、人間の動きでも、モノの動きでも、照明でできる影法師でも、表現されていた

そして… 圧巻の、吹越さん(間宮)の20分間の独白!ただの独白ではない。ダンサーさんらに抱えられたり、担ぎ上げられたりしていても、声が全くぶれることなく、淡々と「長い話」は続いていく。ラストは逆立ちに近い、いや、逆立ちよりも過酷な体勢で、それでも淡々と語っていく。

20分の独白って、何ページ分だろう… すごすぎる。

たまたま連続で見た「無駄な抵抗」との共通項もあって、見るべき時に見るべきものを見たのだな、と妙に納得した。

「兎、波を走る」も少し思い出した。アリスが潜って行った穴は、きっと彼女の精神世界に繋がっていたはずだ。そして何より、かそけき声を聞き逃してはならない、ということも。

初演時の感想は以下。

明日も良い日に。

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