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入院記録②(脳脊髄液減少症による入院)※全文読めます


 現状まとめ

・ベッド上安静

・食事の際に身体を起こす、トイレまで歩くなどは認められている

・面会は週2回、10分、18歳未満は禁止

・食事制限なし


2月10日(土)入院4日目


 昨日までの入院記録をnoteの有料記事としてアップしてみた。noteプレミアムに加入していないと有料記事は投稿できないと思っていたがそんなことはなかった。全文読める投げ銭タイプの記事としてみる。あまり期待していなかった分、購入者がいてくれたことに驚き、喜ぶ。


 今後職場復帰どころか、社会復帰そのものが難しくなる可能性もある。その際に今と同じ状況で文章だけで稼ぐことは可能か、の試金石でもあった。しかし初回の購入と、継続的出費は別の話であろう。


 世間では三連休。主治医の姿もなし。リハビリ担当者と会って話をする。入院前の状況など、先日主治医と話したのと大差ない話をする。ベッドの縁に腰掛けた状態で、手足の動きの確認などをする。頭の重み以外自分では問題がないと思っている。しばらく起き上がっていると後頭部の鈍重感が増してくる。入院直前の激烈な痛みを思い出して怖くなる。


 昼食にどんぶり飯が出てテンションが上がる。「おや、おやおや……親子丼!」とポストしようとして、卵とじの量の多い牛丼だったと気がつく。飯直後に妻からラインが来て、子どもたちが遊んでいる動画が送られてきた。息子の自然な笑顔を見れたのは入院後初めてのことであった。笑いながら涙が流れた。


 両親が面会に来る。面会時間は十分と制限されているが、あれこれ話したがるので看護師が止めに来たりする。妻とはあらかじめLINEでのやり取りがあるので楽だが、両親には説明する量なども増えるし、うまく伝わらなくて苦労することもある。終始寝転がりながらの対応だが、身体を起き上がらせている時よりも疲れてしまう。父も最近MRI検査を受けたとか、自身の病気や病院の話もしていたが、あまり頭に入ってこなかった。


 リハビリ担当の方が来られて、足の運動をする。3日間ほぼ身体を動かしていないので、結構疲れるが、いい運動になった感あり。その効果もあってかお通じも再開。


 音楽が以前のように聴けなくなった経緯を「『チョコレート粉砕工場』すら聴けなくなった夜に」と題して今週のシロクマ文芸部に投稿。どうも自分の中で、既に土曜から日曜に日時が変化していたようだ。一日に二つの記事をあげてしまった。


 そこそこ眠れる。


2月11日(日)入院5日目


 どうも昨晩身体を拭いた時にパジャマの上着を前後反対に着ていたようで、朝食後の歯磨きの時に気づく。誰も見ていやしない。


 3日目くらいまではあまり感じなかったが、5日目ともなると生活からかけ離れた感が強くなる。むしろ以前の生活こそが非現実だったのではとさえ思えてくる。妻の姉夫婦が訪ねてきた写真が妻から送られてきて現実に戻る。写真の中の息子が少しふっくらとして見えた。


 読書からの反応は創作に活かす。「千人伝」に高田純次風の人物「適当」を追加する。セネカ「人生の短さについて」を読み始めたので、次に「背中」という人物について書こうかなと思う。書いた。

 noteで毎週ショートショートnoteの企画に初参加してみる。お題「デジタルバレンタイン」SFチックに、というもの。ふわふわ甘々ラブストーリー。もちろん嘘。

 昨日は両親の面会やリハビリ師さんとのやりとりがあったが、本日は妻とLINEのやりとりと、巡回看護師さんとのやりとりだけ。寝る前にLINE通話でほんの少し子どもたちと話す。妻の姉夫婦が来てくれて、いろいろ買い物にいったことなどを話してくれる。息子ってこんなに電話でしっかりと話せたんだ、と思う。


 熟睡が必要なので睡眠薬をもらう。


2月12日(月・祝)入院6日目


 睡眠薬は夜9時半に飲んだが結局10時半ごろまで眠れなかった。夜中3時半ごろ1度起きた。それでもこれまでの1〜2時間おきに目覚める眠りよりかはいくらかマシな睡眠が取れた。


 朝一看護師に「今日は何日ですか?」と聞かれ「11日、月曜、祝日」と答えてしまう。実際は12日。


 昨晩気が狂いかけたことなどを入院記録(裏)に記す。


 以前は「ダイヤモンド・メンタル」などと言われ誇っていたものだが、拠り所がなくなると人は脆い。


 天井の照明が眩しいのでそれを遮るために、壁についていたルームライトを引っ張ってきてそこにズボンを被せる。眩しくはなくなったが、ズボンの裾が垂れてくる。


 同じ言葉を繰り返し続ける入院患者「日曜お泊り」の言葉通りお泊りに出かけたのかと思ったらそんなことはなかった。


 note閲覧時に目が疲れるので、アプリ版noteを入れてみる。ダークモードで閲覧可能。


 外の天気が良い。日差しのせいか、少しは睡眠が改善したせいか、入院記録(裏)である程度吐き出したせいか、少し気が楽になっている。未来を憂いても仕方ないとかセネカも言っていた。ショウペンハウエル「読書について」を読み始めている。本を読みすぎて自分の頭で考えなくなったら良くないよー、といったことが書いてある。途中から「最近の連中の文法がいい加減すぎる!」と怒りまくっており「おじいちゃん落ち着いて」と思う。その頃のショウペンハウエルが幾つかは知らない。


「おしっこ何回出ましたか?」といったことを聞かれるので、小便、大便、鎮痛薬服用、睡眠薬服用の回数を記すことにした。持ってきてもらったのに活用していない紙のノートとペンを利用して。


 しかし自分の字を見るとしんどくなる。「手で書く」という行為がつらいのか、汚い字を見たくないからか。


「首がもげたキリン」を読み返す。まさか自分がアゾルカのようになるとはこれを書いた時には思わなかった。これをKindle出版してみようかなと思っている。


 家族と通話。

 息子。

「パパおじいちゃんみたいな声になってるよ。おじいちゃん?」

「パパだよ。あまり話さないから声が枯れてるんだな」

「おばあちゃん? うんこ?」

「おばあちゃんでもうんこでもないよ」


 娘。妻の姉夫婦と買い物に行った時の話をしている最中に巨大なゲップをかます。

「ごめんすごいタイミングの時に出た。あ、ママ大丈夫?」

 娘のゲップに笑い転げている妻の声が聞こえてくる。束の間、我が家の日常が戻った気になるが、私は病室のベッドにいるままだ。


 再び睡眠薬をもらうが、寝返りの際にナースコールに当たってベッドから落としてしまい、夜中2時に目が覚める。その後も4時台から例の患者の「火曜日帰る」「10時お着替え」といった声が聞こえてくる。



読書記録


「恐怖箱 心霊外科 恐怖箱シリーズ (竹書房怪談文庫)」

加藤一

「随筆集 一私小説書きの独語 (角川文庫)」

西村賢太

「あなたの母ちゃんでよかった: 脳脊髄液減少症とつきあうユウさんとハハの記録」

ユウさんのハハ

「傷病手当金をもらって仕事復帰をめざす!: 傷病手当金受給者が復職 具体的な行動・手順が分かる」

みかん

「たった40分で誰でも必ず小説が書ける超ショートショート講座 増補新装版」

田丸雅智

「人生の短さについて 他2篇 (光文社古典新訳文庫)」

セネカ、中澤務

「noteとスマホだけのズボラKindle出版: 初心者でもみるみる形になる!」

くろめが

「読書について (光文社古典新訳文庫)」

ショーペンハウアー、鈴木芳子


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