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ぬいぐるみ小説集「刑務所の廃墟を警備し続けるライオン」(半分)

※こちらを含む「ぬいぐるみ小説集」をkindle出版しましたので、公開済のものの内容を半分程度にしております。

 病院と並び頑丈な造りの建物といえば刑務所である。今回訪れた刑務所の廃墟では、ライオンのぬいぐるみが警備を続けていた。役割を与えられたぬいぐるみたちが、指示を出した人類が滅びた後も、与えられた指示に従い仕事を続ける様子は、これまでも様々なところで見てきた。私は彼らの行動について「地縛霊」という概念に似ていると感じていた。

「その銃は使えるのですか?」一通りの挨拶を済ませ、写真を撮らせてもらった後で、彼に聞いてみた。
「丁寧に毎日手入れを繰り返している。他にすることもないのでね」
「あなたはとっくに自由の身なのですよ」
 しかし皮肉なことに、まだまだ崩れそうにない刑務所が彼を捕らえて離さないといえるのかもしれなかった。

「ここから脱獄する者がいるかもしれない」
 この手のやり取りが続くことにいささか辟易もしていたので、私はそれ以上突っ込んだ話はしなかった。「ではまた」とだけ言い残し、私は刑務所を出た。

「脱獄を確認」
 ライオンの言葉とともに銃声が響き、私は脚部を負傷した。彼の言葉通り銃は機能し、銃弾は正確に私に向けて発砲されたのだ。私は二発目の銃弾を受ける前に、片脚を引きずりながら刑務所の敷地内へと戻った。

以下こちら


(了)


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泥辺五郎
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