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耳鳴り潰し87

 結石は病院前の大量排尿の際に既に出ていたんじゃないか、というくらい、以後痛みなし。そういった点も踏まえて、恋愛小説集に「私vs結石」を追加。

自分にとって恋愛小説とは何だろう、ということを再び考える。それは尿路結石のようなものだ。痛みを伴うし、なかなか出会えない。やっと出会ったところで、それはもはや自分のものではないのだ。恋愛とは結石であるという結論に異論を挟む人はもういないだろう。

山下チンイツ「恋愛小説集」内「私vs結石」より

 真っ当な結論にたどり着いた。

 息子が学校の図書の時間に借りてきた本を読み聞かせる。

「はじめてよむこわ~い話 (8) あぶないエレベーター」牧野 節子 (著), 国松 俊英 (編集), 鈴木 アツコ

 いや、最後めでたしめでたしで終わらないのかよ! 恐怖が続くのかよ! とびっくりした。

 ところで武川蔓緒さんの新作は最高じゃないですか。私の好みのほとんどが網羅されているような。

掌篇小説『Z夫人の日記より』<160>

訛りがきつくて解りにくいけど、あれらは兄弟じゃなくて、じぶんの脱皮した皮に、空気が勝手にはいって膨らんだ風船みたいなもんなんだって。

武川蔓緒掌篇小説『Z夫人の日記より』<160>より

 
 娘に「パパって学生の頃女の人とどんな話をしていたの?」とまた詰められた。
「パパの時代に女性はいなかった」と人類を巻き込んでみた。
「それじゃあどうして人は生き残っているんですか」と矛盾を指摘された。
「あれだ、入院してたんだ。小中高ずっと」
「何の病気で? 頭?」
「毎日骨折してた」
「じゃあ何で今は骨折してないんですか?」
 私は突然喉が痛くなって喋れない振りをした。

 向井秀徳アコースティック&エレクトリックバージョンの「はあとぶれいく」をリピート再生しながら洗い物をしていたら、ゲームをしていた息子がかすかに「はあとぶれいく」を口ずさんだ気がした。


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