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エッセイ「書く時間を変えたら毎日書けるようになった話と自己紹介」#シロクマ文芸部

 書く時間を早朝と定めてから、毎日何かしら書けるようになった。子どもらと同じ時間に眠れば、自然と朝早く目が覚める。まだ眠い時間ではないから、と寝床にスマホを持ち込む悪習は、大谷翔平の「寝室にスマホを持ち込まない」発言に感化されて止めた。生活習慣を変えたおかげか、慢性だった頭痛は消えた。深夜に長時間かけてだらだらする類のことは、早朝に移せば、十分足らずで収まった。

 津村記久子という作家がいる。会社員をしながら小説を書いていた時期は、睡眠を二回に分けていたとか。朝四時半に起きて執筆していたエピソードが印象深い。Blink-182「Carousel」が作中で劇的に使われている「ミュージック・ブレス・ユー」が大好きだ。

 朝起きるとまず大江健三郎の小説の再読から始める。この習慣も二年目くらいに入ってきた。高校時代からのめり込んだり逆に離れたりしているうちに、いつの間にか自分にとって一番重要な作家となった。彼の文章に朝一で触れることで、自分はこのようには書けない、と悟ることが出来る。文章的には影響は受けてはいないと思う。

 目覚ましはかけずに、自然に目が覚めた時間に起きるようにしているから、起床時間は四時半の時もあれば六時の時もある。あまり時間が取れない時でも、「千人伝」を一人分書くようにしている。早起きの習慣が「千人伝」の執筆を再開させたといってもいい。

 なるべく週一ペースで「音楽小説集」という作品集に一編追加するようにしている。「小説集」と題しながら、エッセイや創作論や本の感想に終始することもある。曲を一曲選び、歌詞から浮かんだ物語や、生活の中での曲とのエピソードなどを書く。いつの間にか三年以上続けている。KORNから美空ひばりまで、二百編近く書き続けている。

お勧め
娘が授業参観でメタリカを演奏する話。

近所の公園でオジー・オズボーンと話し込む話。

氷室派の斎藤道三と布袋派の斎藤義龍との間に割り込む洋楽派の織田信長の話。

松本清張の短編や吉村萬壱氏の講演を見て書いた創作論。

 執筆の際には何か一曲をSpotifyで繰り返し聴き続けることが多い。何かしらの曲をYou Tubeで探したら関連曲が続くので、そのままにしていることもある。洋楽が多めだからあまり文章の言葉を邪魔してはこない。これを書いている現在はLP「Halo (Beyonce Cover)」が流れている。声が震えている。観客の声が入るところで、子どもたちが起き出したかと勘違いして、イヤホンを外すが、まだまだ寝転がっている。

 毎朝早く起きるようになったからといって、毎朝書く題材があるわけでもない。何か書きたいけどその「何か」が見つからない、と思っていた時に、目に入ったのが「街クジラ」だった。noteの「おすすめ」に出てきた、シロクマ文芸部のお題としてあげられたその言葉に惹かれ、書き出した。それが「街クジラ・オフィスカラス・人混みネズミ・家イモムシ」

 で、以後、お題「私の日々」で「書かれることのなかった小説」

「消えた鍵穴」で「鍵穴から覗き込んでくる一般相対性理論」

「食べる夜」で「ヨルノガ・オーバードーズ」をそれぞれ書いた。

 即興的に書いて、後から矛盾点などを消していくといった書き方をしている。頭で書かずに指で書く、というやり方に変えてから、「とりあえず書く」を実行出来るようになった。「自分にしか響かないんじゃないか」とか「人に受けないんじゃないか」とか考えない。自分の中から自然と湧き上がってくるものに任せる。ブラッシュアップはするが、洗練されず、より泥臭くなることもある。

 たまたま目に入った「街クジラ」をきっかけにシロクマ文芸部に参加した結果、単発ではなく、こちらも週一ペースの習慣になりそうだ。結果、週二本の掌編小説あるいは、エッセイが生まれる。後にどれかを原案にして短編や長編に仕立ててもいい。どれもこれも繋がっている。何一つ無駄な創作などない。

 早朝の執筆時間は子どもたちの起床で終わる。いつもより早い時間に突然起き出すこともある。途中で終わった執筆の続きを、日中ずっと考えている。何かを書いて発表したら、その反応が気になり、寝床にスマホを持ち込みたくなることもある。ぐっとこらえて布団に転がれば、子どもより早く寝付いてしまうこともある。早朝の執筆タイムの方が寝床スマホよりずっと楽しいことを知ってしまってから、夜更かしはしなくなった。昔は夜中にネットの掲示板で即興小説を書いていた。時間帯を移して、似たようなことをしている。基本に立ち戻っている。自分を取り巻く環境は随分と変わったが、書くことは止めないでいる。

 今後も、よろしくお願いします。

(了)

シロクマ文芸部「書く時間」参加作。エッセイ。


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