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本の森006 「わたしの出会った子どもたち」 灰谷健次郎(角川文庫)

教育に携わる人にとって、必読書だと思う。
まずは、本書の中から心に残った言葉を引用します。
(以下、引用)

こんにちの子どもの不幸は、
先生方が自ら変わろうとしないで、
子どもに変わることだけを要求するところに
あるのではないでしょうか。

子どもの生活と教師の生活が切り離されたところで
教育が営まれているところに、退廃があるのでしょう。

教師は、外から加えられる差別には敏感であるけれど、
自らが日常の中でつくり出す差別にはまるで鈍感ですね。

ほんとうの優しさというものは
絶望をくぐってきた人だけにそなわるものです。
(私の出会った子どもたち 灰谷健次郎より)

あなたの知らないところに
いろいろな人生がある
あなたの人生が
かけがえのないように
あなたの知らない人生も
また かけがえがない
人を愛するということは
知らない人生を知るということだ
(ひとりぼっちの動物園 灰谷健次郎より)

さて、ここからは僕の感想です。

この本は、とてもとても重い。
教育の責任と重さ、教師という仕事の深さが、
行間からにじみ出ているように感じるから。
だから、読んでいて、辛くて、苦しくなる。

兎の眼、太陽の子など、多くの児童文学を記した作家、
そして教育者の苦悩と葛藤を、強く感じる。

僕は教師ではないけれど、
教育という仕事に携わる者として、
この本に書かれていることをしっかり受け止め、
自分自身の指針にしなくちゃならないと思った。

初めてこの本を読んだのは、中学2年生の時だったと思う。
教師になりたいと思っていた僕は、
この本に感動して、以来何冊も何冊も、
灰谷健次郎さんの本を読み漁った。

その時の自分には、反省などという感覚はなかった。
ただただ感銘し、共感し、
「これだ!」
「これが教育の理想だ!」
なんて、気楽に思っていたように思う。

でも、今はそんな風に手放しに「これだ!」なんて、
言えない自分がいる。

冒頭に引用した言葉にあるように、
僕自身もまた、自らがつくり出す差別に鈍感で、
自ら変わろうとすることよりも、
相手を変えようとしてしまっている自分がいるから。

先生などと偉そうに呼ばれている自分が、
本当に恥ずかしく、情けなくなる。

こうして時々、教育という志を抱いたあの頃の、
自分の原点に触れることで、繰り返し繰り返し、
自分を戒めながら生きていこうと、改めて感じた。

僕たちは弱い。
無意識に自分を守ろうとして、人を傷つけ、
相手をないがしろにしてしまう。

だからこそ。
このような本が必要なんだって思う。

前略、灰谷健次郎さま。
あなたの存在があったからこそ、
あなたの著書に出会ったからこそ、
僕は今日も反省しながら、
前を向いて歩いていこうと思えるのです。

灰谷さん、本当にありがとうございました。
亡くなってから11年が経ちましたが、
あなたの遺した仕事の数々は、今もなお、
僕たちの心に深く刻まれています。

心より、ご冥福をお祈りしています。


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