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ヨロイマイクロノベル

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思いつくままツイッター上であげていた140字ほどのお話(あるいはその断片のようなもの)をまとめています。
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記事一覧

ヨロイマイクロノベルその31

301. 古い籐椅子が死ぬ。長く共に暮らした女が裏山に埋めた。夜、狸が掘り起こすが、椅子はす…

渋皮ヨロイ
3か月前
4

ヨロイマイクロノベルその30

291.「賑わう海の家」 秋が過ぎても海の家は解体もされず、夜な夜な賑わっていた。煌々と明る…

渋皮ヨロイ
4か月前
6

ヨロイマイクロノベルその29

281. 愛のブーメランは五年前に完成していた。でも作業が楽しくて夜ごとヤスリをかけ続けた。…

渋皮ヨロイ
5か月前
2

ヨロイマイクロノベルその28

271. 白と赤の彼岸花がそれぞれ列をなして咲き誇る。真夜中、茎が曲がり、交差する。6本の雄…

渋皮ヨロイ
6か月前
8

ヨロイマイクロノベルその27

261. 一日署長をはじめとして、一日巡査や一日巡査長、さらには一日被害者、一日犯人が集まる…

渋皮ヨロイ
7か月前
5

ヨロイマイクロノベルその26

251. 「今夜、貴方の夢に参上します」。獏からメッセージが届く。うっかり昼間に眠ってしまう…

渋皮ヨロイ
8か月前
3

ヨロイマイクロノベルその25

241. 黒い獣の赤ちゃんを二匹育てる。「フーダニット」「ホワイダニット」と名付けた。無邪気で荒々しく、よく眠りよく遊びよく食べた。成長するにつれ、いつか二匹から殺される確信は高まっていく。「どのようにして」はもちろん噛まれてだろうが、それ以外を想像すると愛おしさは増した。 242. 「つちのこを見つけたら100万円」。当日、つちのこだと自称する長身の男が現れた。普段何食べているわけ? 主催者が尋ねる。ゼリーですかね、緑色のがおいしいです。住んでいるところは? と別の係。友

ヨロイマイクロノベルその24

231. 瓶のキャップを集める男と七秒で恋に落ちた。男はすべての指にキャップをはめていた。ど…

3

ヨロイマイクロノベルその23

221. 大晦日くらい俺たちにも笑わせてくださいよ。多様な角を生やしたあらゆる色の鬼がサロン…

6

ヨロイマイクロノベルその22

211. うまいもん食わせてやるよ。叔父と林の中を進む。枝先に丸くて白いものがつるされている…

7

ヨロイマイクロノベルその21

201. 恋人が顔はめ看板ごと帰ってきた。大名の格好がやけに似合う。「ようこそ古都××へ」。…

5

ヨロイマイクロノベルその20

191. こんな夢を見た。「それってあなたの感想ですよね? と口にする彼氏を助走つけて殴った…

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ヨロイマイクロノベルその19

181. 工場で愛の言葉を缶に詰めている。フレッシュで温かい声を吐き出す。ずらりと作業員が並…

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ヨロイマイクロノベルその18

171. 夏の夕暮れ、口裂け男が商店街に現れた。私はきれい? 頷くとマスクを外す。育ちがいいのか、恥じらいがちなのか、口を右手で覆いながら、これでも? と訊き直す。両頬まで切れ込んだ口の端がはみ出して見える。その腕にはフェスのリストバンドがついたままだ。ロック好きなのかな。 172. 兄はプロペラ、母は銃撃の幻聴を耳にするようになり、家を出た。岩の洞窟に入り、そこで暮らしているらしい。わたしは生まれたときから時計の針の音を聞き続けてきた。音が途切れるのが怖くて、多くの腕時計