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#短編小説
創作小説 中島みゆき「悪女」
新宿駅を出て、徹と暮らす部屋までの距離をスマホアプリで調べる。
甲州街道経由 3.3km 徒歩46分。
実家から中学校までの距離と同じくらいだ。自転車通学だったけど、大雨や雪の日は歩いて学校へ通った。ちょうどよい時間にバスも走っていない田舎だったし、朝早くから仕事に向かう母親に送迎を頼むことなんて出来なかった。川沿いの堤防を傘をさして歩いているとよく友達が乗った車に追い抜かれた。「優香ちゃんも乗
五月に吹く風 創作小説
彼女が真面目な性格だということをよく分かっていたが、そこに書かれた文字を見ると、何とも言えないもどかしい気持ちが湧いた。持ち上がりで高二の担任となり、早速進路希望調査を行った。進学先を書く欄に、昨年も私のクラスに在籍していた河合という生徒が『歌手志望』と書いて提出したのだ。
新学期の慌ただしさが落ち着いた四月末の放課後。カーテンをはためかせ、窓からグラウンドで練習する野球部の声と気持ちの良い