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笑い神 M-1、その純情と狂気(著者:中村計)

ジャンル:お笑い、ドキュメント
満 足 度:★★★★★


〇要約

 漫才頂上決戦「M-1グランプリ」で前人未到の9年連続決勝進出をした「笑い飯」を中心に、M-1がどのような大会であったのか、またそれに翻弄される漫才師や作り手のエピソードについて、著者のインタビューをもとにまとめられた本。

〇感想

読み終えて最初の感想は「漫才師はかっこいい」ということ。

私の趣味の一つにお笑い鑑賞がある。特に賞レース(M-1、キングオブコント、R-1等)はどの年も欠かさずに見ている。その中でも、M-1は小学生のころにテレビで見てからすっかりその虜になってしまい、過去の出場者やネタの内容、成績等はだいたい把握しているし、何度も見返している。そんな自称「お笑い好き」の私からしたら、たまらない内容だった。

私たちは普段、テレビや劇場で漫才師のネタを見る機会はあっても、本音(もちろんインタビューの答えが全て本音であるとは言えないが。)を聞けることはそれほど多くない。したがって、漫才師の演者部分ではなく、人間そのものを垣間見えるこの本は、お笑い好きはぜひ一度読んでほしいし、読むべきだと思う。

哲夫と西田の関係性や、笑い飯と千鳥の出会い、M-1の作成者側の考え、チャンピオンの優勝までのストーリー、M-1に挑み続けたが敗れた者たちの本音、お笑いから足を引いた者たちの当時の心境など、どれも熱い言葉であり、改めて「漫才師はかっこいい」と思ったし、彼らへの敬意が何段にも増した。

M-1がこれだけ長く続いているのも納得だし、ただの賞レースではなく、そこには「本当の意味で人生をかけた」者たちがたくさんいることを感じた。同時に、私はこれほどまでに一つのことに熱くなったことはないし、出来ないなと痛感。

だらだら私も熱く語っているが、グダグダ余計なことは考えずに純粋に楽しむことが漫才師に対する一番のリスペクトなのかもしれない。今年は劇場や、単独ライブ、M-1予選を現地でたくさんみたいと思う。

〇印象に残ったこと

・笑い飯が中心となっているので、もちろん彼らを慕う漫才師の言葉が多いが、彼らとは考えの違う漫才師ももちろんいるし、それぞれの漫才観のようなものも面白かった。コンビ間ですら考えが違うことも多く、特に笑い飯の関係性は全く意外であった。

・M-1の作り手や元芸人の声はこれまであまり聞いたことが無かったので新鮮だった。

・笑い飯の結成に「おぎやはぎ」が関係していたのは知らなかった。

・私が小学生のころから好きな「麒麟」も登場しており、M-1で好成績を残し続けるがついに優勝は出来なかった彼ら(川島)のM-1に対する現在の心境は、特に印象深かった。

・現在マルチに活動している「キングコング」が、昔は芸人仲間からあまりよく思われていないことは知っていたが、そんな彼らがどういう思いでM-1に挑んでいたかは、かっこよかった。

・本当にたくさんの漫才師の声があるし、一方でM-1は漫才師にとって想像以上にシビアな話題であるため、インタビューする側もかなり大変だったことは想像に難くない。そういう意味でもこの本は大変貴重である。

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