走ることについて語るときに僕の語ること【走る小説家:村上春樹】
〇著者
村上春樹
〇ジャンル
エッセイ
〇感想
・著者が、ここまでガチのランナーとは知らなかった。著者にとっての「走ること」を、自分の人生で大事にしていることに置き換えることで、より言葉が自分の中に落ちていく感じになると思う。
・著名な小説家は天才で、自分とは全く交わることのない人種だと思っていたが、(意外と?)一般人の感覚と近い部分もあり、少し親近感が沸いた。
・せっかく良本に出会えたので、彼の他の著作にも挑戦してみたい。(この本を読んだ後に早速『一人称単数』を読んだら、それも面白かった。)
・著者の作品は合う人合わない人がいると聞いたことがあるが、エッセイは読みやすく、著者の生活や頭の中が覗けるのでおすすめ。
〇著者について
・33歳から走ることを習慣にしており、フルマラソンやトライアスロン、ウルトラマラソンにも参加するほどのランナー(平均1日10キロ、月に250~350キロ近く走る!)
・走るときにはロックを聴く
・小説家の前はジャズバーを経営
・ヤクルトの試合を観戦している時に、小説を書くことを決意
・朝五時前に起き、早朝に集中して仕事をし、夜10時前には寝る
・日記は続かないが、ランニング日誌は丁寧につけている
〇印象に残ったこと
・身体的感覚を大事にしており、つらいことがあった際には、いつもより長めに走り、自分の身体を強化する
・一人でいる時間を大事にしており、毎日のランニングでその沈黙の時間をつくる
・走っているときに特別何かを考えてはおらず、雲の流れのように自然に浮かんできたことに委ねている
・小説家を職業とするうえで体調管理は特に大事
・人生には何に「時間」と「エネルギー」を振り分けるかという優先順位をつけないと、焦点を欠いたメリハリのないものになってしまう
・人生は不公平なものだが、公正さを希求することは可能
・筋肉は覚えの良い使役動物であり、注意深く段階的に負荷をかけていけば、それに耐えられるように適応していく
・走り続けるための理由はほんの少ししかないが、走るのをやめるための理由はいっぱいある。僕らに出来ることはそのほんの少しの理由を大事に磨き続けること
・小説家にとって重要な素質は才能、集中力、持続力。才能はコントロール出来ないが、集中力と持続力は後天的に身に付けることができ、ジョギングによる筋肉の調教作業に似ている
・年を取ることの数少ないメリットの1つは、自分にあるものを把握し、それでどう乗り越えていくかを自然に出来るようになること
・基礎体力の強化は、職業小説家として、より大柄な創造に向かうためには欠くことの出来ないこと
・たとえいくつになっても、生き続けている限り、自分という人間についての新しい発見はあるもの
・他人に自慢出来るようなタイムでなく、細かい失敗も数多くしたとしても、自分自身がレースを心から楽しめたことが何よりも嬉しい
・トライアスロンのようなスポーツにとって、苦しさは前提条件であり、苦しさを通過していくことで、生きているという確かな実感を見いだせる
・本当に価値のあるものは、効率の悪い営為を通してしか獲得出来ず、たとえむなしい行為であったとしても、決して愚かな行為ではないはず
・順位や他人の評価は副次的なものにすぎず、重要なことは尽くすべき力は尽くした、耐えるべきは耐えたと、自分なりに納得すること。そして、1つずつ積み上げて、最終的にどこか納得のいく場所にたとえわずかでも近接すること
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