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㊳ミャンマー情勢(ミャンマー経済の分析方法?)

みなさま、それぞれ思考の型があると思います(これをコンサル業界ではフレームワークと呼びますね)。

コンサル業界でのフレームワークについて学ぶには、以下の本が必読です。
※コンサル就職を目指す学生には必読書とお伝えしています。

ミャンマー経済分析の反省(-_-)

社会科学の学問分野では、様々なフレームワークがあります。

私は、経済学部出身ですので、1→2→3の順番で経済を見てしまう癖があります。学部で習う順番です(IS曲線→LM曲線→フィリップカーブ)

 1.財・サービス市場(モノ)
2.金融市場(カネ)
3.労働市場(ヒト)

これを日本の政府機関などで見ると、以下になります。

1.財・サービス市場(モノ)→経産省、国交省、農水省など
2.金融市場(カネ)→財務省、金融庁、日銀
3.労働市場(ヒト)→厚労省、法務省入管庁

さて、いまのミャンマーでは、経済全般に問題があります。
これらの問題をフレームワーク順に整理すると、以下になります。

1.財・サービス市場(モノ)
→輸入ライセンスの発給の停止
→タイからミャンマーの輸入ルートが戦闘により治安悪化し輸入困難に
→電力不足による生産停止

2.金融市場(カネ)
→2022年4月3日の外貨強制兌換によりドルへのアクセスが困難に
→経済制裁(シンガポール金融機関、FATFブラックリスト)が進行中

3.労働市場(ヒト)
→2021年2月1日のクーデター以降から海外就労・留学が加速し、マネージャークラスの人材採用が困難に
→2024年2月10日の徴兵制により既存の従業員が離職する傾向に

日本外交の変容

外交のフロントでは、岸田総理が国連総会で2023年9月19日に以下のように発言し、人間の尊厳に焦点が当たるようになっています。

緒方さんが唱えた人間の安全保障(human security)が、一国の外交のメインイシューになる時代が到来しました。
※1994年に、国連開発計画(UNDP)により提唱されました。詳細は以下の書籍がオススメです。

  議長、世界は、気候変動、感染症、法の支配への挑戦など、複雑で複合的な課題に直面しています。各国の協力が、かつてなく重要となっている今、イデオロギーや価値観で国際社会が分断されていては、これらの課題に対応できません。

 我々は、人間の命、尊厳が最も重要であるとの原点に立ち返るべきです。我々が目指すべきは、脆弱な人々も安全・安心に住める世界、すなわち、人間の尊厳が守られる世界なのです。

 国際社会が複合的危機に直面し、その中で分断を深める今、人類全体で語れる共通の言葉が必要です。人間の尊厳に改めて光を当てることによって、国際社会が体制や価値観の違いを乗り越えて、人間中心の国際協力を着実に進めていけるのではないでしょうか。

https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2023/0919enzetsu.html


人間の尊厳を中心に据えると、 改めて3の労働市場(ヒト)が重要であることがわかります。

国内では労働市場というと、年金、医療、介護などの社会保障分野と厚生にテーマが偏りがちです。

一方、雇用の確保の観点から、海外との結びつきを考えると、技能実習生(→育成就労)、特定技能、難民問題が大きなトピックになります(日本人向けには就職氷河期世代の就職支援など)

ミャンマー経済の終焉

私は、いままで、1、2の視点から軍政による統制経済の進展により、ミャンマー経済の息の根が止まると考えていました。
例えば、1.財•サービス市場では燃料が輸入できなくなり製品の生産が不可能になる、2.金融市場では、欧米の更なる経済制裁により海外銀行の支店が閉鎖せざるを得ず、金融サービスが停止するなどです。

1.財・サービス市場(モノ)
2.金融市場(カネ)
3.労働市場(ヒト)

正直、3.労働市場(ヒト)の制約から経済活動が瓦解する可能性があるとは思いつきませんでした。

ミャンマー人の現状

ミャンマーでは、歴史的に程度の差こそあれ、①危機管理型の統治→②民主的な政治→③国民国家の不安定という悪循環が繰り返されてきました。

2023年10月から海外にいるミャンマー人労働者も所得の25%の送金と1%又は2%の所属税の支払いの義務づけが始まりました。

そのため、ミャンマー人であることを恨み憎む人が出始めました。

その後、2024年2月10日に起きたのが、徴兵制開始の発表です。

24年2月10日以前とそれ以降では、ミャンマー人のミャンマーを見る視線に大変革が生じています。

これまで、ビジネス上、国軍と距離を縮めることが必須であり、ある程度の妥協により国軍に染まっていた人々もここに来て、ミャンマー政府は、「やばい!」と確信しています。

21年クーデターで③→①となった後、今回の徴兵制により、①→③へ急速な移行が生じました。2月10日以前は、この状況は10年ぐらい継続すると予想していたミャンマー人が多かったが、現在では、何年継続するか発言しなくなっていることが、事の重大性を表しています。

そのため、親の介護などで、ミャンマー国外で労働することを躊躇していた人々も、国外に流出していています。しかし、パスポートを取得するにも6ヶ月かかり、日本で就労するにも時間を要するため、大学→特定技能→技能実習生と格落ちする形で、日本渡航を早めるケースが出始めているようです。

ヤンゴンの日本大使館は、3月には例年より20%多い1日500~600人のペースでビザを発行しているようです。


法学からのアプローチ

3.労働市場(ヒト)をミクロに1人1人に焦点をあてると、法学的な人権を重視するアプローチが必要になると気づきました。

例えば、日本国憲法は、国家権力から1人1人の日本国民の人権を守っている守護神ですが、ミャンマー国憲法は軍事政権の独裁支配強化ツールでしかありません。

日本の法体系=法律のフレームワーク

ミャンマーにおいて、如何に日本の法律が機能しているか実感しました。
日本では法律と司法制度がそれなりに機能しているため、法律を通じて、外国人の人権を守ることが可能なのです(法学に関心がない私は、ミャンマーにきて初めて法律の重要性に気づきました)。

実際、ミャンマー人から、どういうスキーム(在留資格)なら日本で働けるのか?
どうすれば(日本での就労の手続き)日本で働けるのか?という日本の労働市場で働くための法制度上の手続きの質問が増えています。

ミャンマーの実態に即して、経済の3のフレームワークから、法学に入っていくというのは、面白い経験です。

過去10年ぐらい、法学の価値を一切理解していなかった私が、ミャンマーの徴兵制などの経験を通じて、今更ながら徐々に価値がわかってきました。

2023年に、ミャンマー人の友人のオススメで、行政書士の資格を取得できたのも、今更ながら法律に興味が湧いたためです。

今後も、少しずつ、3.労働市場(ヒト)に詳しくなろうと思います!

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