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私の憧れの人『アシュリー〜All About Ashley 〜』はスカッと晴れやかなかっこいい女性だ


”プロジェリア”という病をご存知だろうか?
ハッチンソン・ギルフォード症候群、日本語でいう”早老症”という病の1種だ。
読んで字のごとく、早くに老いる。
人の約10倍ほどの早さで体だけがどんどん年をとっていくのだそうだ。
遺伝子異常が原因の病だそうだが、根本的な治療方法は見つかっておらず、患者の平均年齢は13〜14年程度。
今回取り上げる書籍の著者であるアシュリーは17歳11ヶ月で亡くなっている。
なんと、私はもうじきアシュリーの倍の時間を生きていることになる。

アシュリーに出会ったのはTVの中だった。
当時、思春期真っ只中の私。
画面に映し出される映像は、衝撃的だった。
その衝撃はプロジェリアという病のせいで老いた年配の方に見える彼女の容姿に、ではない。
「死ぬのは怖くない」という同い年くらいの女の子が、自身の避けられない病と向き合っている姿を目の当たりにしたことに、だ。
そのアシュリーと、次に出会ったのは書店だった。

「アシュリー〜All About Ashley 〜」

アシュリー・ヘギ 著/2006年2月発行


この本を読んだ時、私は”アシュリーみたいな人になりたい”と思っていた。
なぜ、なりたい人として憧れたのだろう。
あの頃、アシュリーのことを強くて、優しくて、誠実な人だと思っていた。
それは今この本を読んでも変わらずに抱く印象だ。
ただ、もう1つ、だから憧れるんだなと思った箇所があった。

それは”エンパシーと自己肯定力のバランス感覚”だ。

前にも伝えたがアシュリーはプロジェリアという病だった。
プロジェリアの方の特徴として、小人症様で、頭部は大きく見えかつ脱毛し、歯の形成が不完全、といった外面的な症状がでる。
アシュリーも例外ではなくそういった外見だった。
だからこそ、思春期の子にありがちな(思春期を過ぎてもある一定数の理解のない大人たちの様な)悪口を言われることは多かったそうだ。

その悪口・陰口に対して彼女は達観していた。

だって、彼らがわたしをからかおうと思って
やっているんじゃないことはわかってるもの。
彼らは、プロジェリアという病気を知らないだけなの。

彼らはわたしが誰か知らないし、
プロジェリアが何かも知らない。
でも、それは彼らのせいじゃない。
そんなの、みんなが知っているわけじゃないもの。

『アシュリー〜All About Ashley 〜』p12より引用

これぞ”エンパシー”なわけである。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者ブレイディみかこさんの息子さんの表現を借りるならば
”自分で誰かの靴を履いてみること”だ。

これって結構難しいと思うんだ。
だって自分の体のいたるところに不調をきたしていて、寿命は迫っていて、なのに悪口・影口を叩く同い年の子は青春を謳歌している。
こんな状況の中、エンパシーだよって言われても”糞食らえ”ってなると思うんだ。
そんな中、涼しい顔してさらっとこんなこと言っちゃうんだから思わず笑ってしまう。

で、この文章には続きがあって。

小さいときからよくからかわれたし、
いまもからかわれることはあるけど、
そういうときは、
「あなたにも同じ血管があるのよ」って説明するの。

それでもからかうようなら、もう放っておくの。
それはわたしの問題じゃなくて、
彼らの問題だから。

『アシュリー〜All About Ashley 〜』p14-15より引用

痛快。
”わたしはあなたの靴を履いてみたんだから、あなたもわたしの靴を履いてみなさいよ。嫌ならいいのよ、わたしには関係ないから”って感じだろうか。
ははは!!
この潔さよ。
ここにわたしは憧れたのだ。

寄り添うところは寄り添い、
かつ自分の我を貫くところは貫く。

私はあれから年を重ね、30代になったわけだが、
いまも変わらずわたしの憧れの女性は”アシュリー・ヘギ”だ。

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