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恋愛で失うものはなんだろう

もう、肌を重ね終えたときの不安に遭わずに済む。
ただ単に怖かったのだと、風が教えた。

二週目の恋 『無事に、行きなさい』 桜木紫乃 著


恋愛で得たものはなんだったんだろう、と考えるよりも、
恋愛で失ったものはなんだったんだろう、と考えてしまう自分がいる。

私の中で恋愛と喪失はなぜだか深く結びついている。

でもこれはきっと語られないだけで、みんなが経験していることなんだろうな、というのが、短編『無事に、行きなさい』桜木紫乃著を読んで思った。

ただ、自分が何を失っているのか、恋愛の最中は全くわからない。

全てが終わってふとした瞬間に、あれ、私こんなに擦り切れていたんだなと驚く瞬間がある。

相手が悪いとか、そういう明らかなものはなくて、ただ人間二人が深く関われば、傷ひとつ付かずに終わることはないんだ、というのが最近なんとなく感じていることだ。

そして面白くて悲しいのは、他人のことはよく分かってしまうということ。

嫌な風にすり減った恋愛をしている友達は皆おんなじ眼をしている。

恋愛の話やパートナーの話をしているとき、時折彼らの眼に、少し大袈裟にいうと恐怖、みたいなものが混じっている。

そんなとき私は、ああ、何かに脅かされているんだなあと思う。

それがなんなのかは分からない。
全部が終わらないと、分からない。

もちろん鏡で自分の眼を見ても、自分のことは分からないし笑

体を繋げ合っていても、心だけすっと離れてゆくのがわかる。

じゃあなんで恋愛するのよ、やってられないじゃない。
そんな風に思う日もありますよね。

でもその理由をさらっと、爽快に教えてくれるのが、その後の短編『海鳴り遠くに』 窪美澄 著だと思う。

こればっかりは、読んでみてほしいなあ。

うんうん、いいよねえ、と最後に思わせてくれます。

短編の順番まで素敵だなあと思わせる短編集です。
ぜひお手に取ってみてください。

Written by あかり

アラサー女




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