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青春を自粛しないで

10月1日木曜日。

毎年この日はやってくるけれど、今年の10月1日は例年とはちょっぴり違う。
今まで、触れるか触れないかすれすれのところで生きてきたわたしが、その「社会」の中にあとちょっとで飛び込んでいくんだって自覚する日。

内定式の日だった。

今年の内定式はオンラインでの開催が多いらしい。わたしが入社する企業も例にもれず、式が始まってからずっと画面の上の人から話を聞いたり、これから同期になるであろう遠い町に住む人たちとパソコンを通して言葉を交わしていた。

本当に社会人になるのかー。
わたしは内定式の間中、ずっとこのことが頭の中をめぐっていた。
いや、どちらかと言えば「なっちゃうのか」の方が今の私の気持ちに近いのかもしれない。

もちろん楽しみな気持ちはあるのだけれど、どこかこの学生生活が終わることにあっけなさを感じてしまう。
目の前のことには全力で取り組んできたつもりだけれど、それでもまだどこか何か足りないみたいで。
どうすればたった半年しかない残りの時間を、掌でぎゅっと握って離したくないくらい大切なものにできるんだろう。

必死で考えていたら、気づけば内定式も終盤に差しかかっていて、このままだと、またいつもみたいに答えが見つからないままの宙ぶらりん状態になってしまうと思い焦った。
人事課の偉い方が画面いっぱいに写る。
「社会人としての自覚」、「来年から皆さんと働けることを」、「残りの学生生活を」・・・
どの言葉も就活を終えてから何度も聞いてきたものだった。
肝心な、「どうすれば社会人としての自覚が芽生えるのか」「どうすれば残りの学生生活を納得のいくものにできるのか」は簡単には聞かせてくれない。

「最後に皆さんに送りたい言葉があります。」

さっきから笑顔で話していた人事課の人が真面目な顔をして言った。
卒業式とかで何度聞いてきた言葉だけど、やっぱりいつも「何だろう」と少し緊張する。

「青春を自粛しないでください。」

聞いた瞬間、素敵な言葉だと思った。
さっきまで悩んでいた「どうすれば残りの学生生活を後悔なく過ごせるのか」へのストレートな答えではないけれど、求めていたものにすごく近い気がする。
たしか、こういう素敵な言葉に出会ったら、そのまま鵜呑みにするんじゃなくて、自分の言葉に置き換えてみるといい。って誰かが言っていた気がする。

わたしにとっての「青春を自粛しない」って何だろう。

しばらく考えた後、わたしは、

「やりたいことを絞らない。」

これかなと思った。「青春を自粛しない」の方がずっとずっと響きは格好良いけれど、これがわたしなりの答えだと思った。

そのためにはどうすればいいんだろう。
きっと、
毎晩、明日やりたいことを手帳に書いて、できたものにはお気に入りの色のペンで線を引く。
毎月、今月達成したい目標を書き出してみる。

このくらい単純なこと。
だけど、実は誰にとっても1番難しいかもしれないようなこと。
けれど、やりたいことは絞らずに、全部やりたいわたしにとってはこれがきっと1番大切なこと。



残り半年。
わたしらしく駆け抜けます。

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