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リアルタイム定点観測・2019年〜2021年大阪コロナパンデミック 第1部 【2019年〜2021年 大阪コロナパンデミック】 ⒈ 〈2019年秋〜冬 まだ日本人は新型コロナ感染症のことを知らなかった〉


リアルタイム定点観測・2019年〜2021年 大阪コロナパンデミックと大学入学共通テスト初年度入試の顛末


※2020年冬、大阪・ミナミではまだ「武漢」を応援する垂れ幕が、のんきに下がっていた

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プロローグ


いよいよ2021年4月下旬、大阪府では緊急事態宣言が視野に入ってきた現在、大阪府在住の筆者の身辺にもコロナ感染の影が迫ってきている。だが、ともすれば、1年前の全国一斉休校と緊急事態宣言の時の記憶と、現状とが混乱することがある。
それというのも、昨年の今頃、自分がまだコロナ感染の恐怖を身近に感じないまま命知らずに街の様子を取材して回ったときより、はるかに危機的な現在だというのに、何かしらもう、慣れてしまったという奇妙な非現実感が日常につきまとっている。つまり、1年前に感じていた緊迫感と比べて全く弛緩した感覚で、毎日が漫然とすぎていくのだ。日々報じられるコロナ関連のニュースも、目新しいものはないように思えて、いちいち敏感に反応しなくなっている。これが慣れというものか、と他人事のように自分をながめている。
そんなこの頃、そろそろこの1年の流れをまとめておかないと、記憶はどんどん薄れていって、あの時の緊迫感や危機意識を心に再現することは難しくなってきているのを、自覚している。もうちょっと時間が経つと、もう2020年初めのあの奇っ怪な混乱、事態の摩訶不思議な推移の非現実感を、書き止めることさえできなくなるだろう。そこで、短めだがここで一度、昨年から現在にいたるコロナパンデミックの体験と、同時進行していた大学入学共通テスト初年度の受験生の家族としての経験を、かいつまんでまとめておこうと思う。

このまとめにあたって、方法としては日記などがいいのだが、近年筆者は日記をつけていないため、記録として日々のツィッターへの投稿と、適宜アップしていたブログ記事、さらにメモした日常の記録などを参照しながら、大まかに書いていく。

※ミナミの店先の猫

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第1部 【2019年〜2021年 大阪コロナパンデミック】

⒈ 〈2019年秋〜冬 まだ日本人は新型コロナ感染症のことを知らなかった〉


※2019年秋、東京出張時のスナップ

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※南青山のビリケン・ギャラリーにて

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※2019年秋の南青山

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2019年秋
(演奏会評)藤岡幸夫&松田華音 東京シティフィル定期演奏会


https://ameblo.jp/takashihara/entry-12544137106.html


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※東京オペラシティの、ホワイエ風景

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実は、筆者はコロナ禍以前は、年間数回は上京して、書き仕事の打ち合わせや資料探し、作品の取材や演奏会批評のためのコンサート通いをやっていた。ほぼ、季節ごとに新幹線で上京し、折々の富士山の姿を車窓から見るのが好きだった。
2019年秋、まだ日本人が新型コロナ感染症を知らなかった頃、筆者は上記の演奏会を東京オペラシティで鑑賞し、演奏評を書いた。友人でもある指揮者の藤岡幸夫さんの指揮で聴く東京シティ・フィルの演奏は、伊福部昭の珍しい作品で圧巻の演奏だった。面識のある気鋭のピアニスト・松田華音さんが弾くプロコフィエフのピアノ協奏曲3番は、過去に実演で聴いたことのある中では最高の快演だった。
この時を最後に、今にいたるまで、筆者は箱根の坂を越えて上京していない。箱根の坂どころか、逢坂の関を越えて畿内を出てさえいない。
コロナ禍が、筆者の生活の全てを変えてしまったのだ。


※東京オペラシティの謎の彫像

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2019年秋
(演奏会評)フェニーチェ堺 こけら落とし公演
パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団。


https://ameblo.jp/takashihara/entry-12548349374.html


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筆者は関西圏、主に大阪と阪神間で文化批評や文芸講演・講座を実施しており、大阪府下の堺に新しく完成した大きな複合ホールであるフェニーチェ堺に、大いに注目していた。
それというのも、このホールの近辺に、先年、世界文化遺産登録されたばかりの大仙古墳(伝・仁徳天皇陵)など百舌鳥古墳群があるのだ。


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※堺市役所の展望室からの眺望。百舌鳥古墳群を見渡せる

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大阪府がこの数年、インバウンド観光による好景気を享受しているのは、単に円安と物価安のおかげで大阪・ミナミに海外観光客が押し寄せてくれているだけだが、このインバウンド経済を長続きさせるには、文化の魅力を海外向けにアピールするしかない、と筆者は以前から考えていた。たまたま「粉もん・お笑い」を観光客が楽しんでくれていても、すぐにブームは去って、いずれかんこ鳥が鳴く。
そうならないためには、「世界文化遺産」のお墨付きを得たばかりの「百舌鳥・古市古墳群」は絶好の素材だと考えていた。


※堺市役所から見渡す世界遺産「百舌鳥古墳群」の大仙古墳(伝・仁徳天皇陵)

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そこで、筆者は個人的に、「古市古墳群」の只中にある羽曳野市の「はびきの市民大学」での講座を担当し、現地講座なども積極的に企画して、一時のインバウンド景気を歴史・文化の魅力による息の長い観光資源へ発展させようと動いていた。
その試みは、以下のようなものだ。

※作家・土居豊チャンネル
《古市古墳群〜ヤマトタケルと子孫3代の夢のあと》
https://youtu.be/oHe0w81_ue4

サムネ古市古墳群 


古墳時代の日本を代表する百舌鳥・古市古墳群
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12639343190.html

【司馬遼太郎「翔ぶが如く」を読んで現代日本を語る】特別篇
《西郷・人吉・熊襲・ヤマトタケル》
https://youtu.be/gY8B-riPmxQ



だが、上記の講座はかろうじて実施できたが、継続して試みたかった歴史・文化の発信も、前述のフェニーチェ堺での音楽鑑賞も、コロナ禍にのみこまれ翻弄され続けた。


※2019年秋、フェニーチェ堺のオープニングに来日したオランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の一行。以来、コロナ危機のため再来日はまだ実現しない。

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(3)
2019年秋
飯森範親指揮の日本センチュリー交響楽団・豊中市民第九演奏会を聴きに来た


https://ameblo.jp/takashihara/entry-12558582293.html


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この演奏会が、コロナ禍の前に筆者の聴きに行った最後の演奏会となってしまった。こののち、2020年、実のところ、贔屓の楽団である関西フィルの創立記念の演奏会や、日本センチュリーを贔屓の指揮者である飯森範親さんが指揮するマーラーなど、すでにチケットを買ってあった演奏会が、コロナ感染拡大とともに次々とキャンセルになっていった。


※2020年春、コロナ緊急事態宣言中の大阪・梅田。人気映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の巨大なポスターだが、周囲に人がいないため、全体像を遠くから簡単に撮影できた

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※普段なら賑わっている大阪駅前ビル地下のチケットショップ街も、コロナ緊急事態の間は、空いていた。新幹線の安売りチケットが見たことのない最安値で投げ売りされていた。

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(次章、〈2020年冬 新型コロナ感染症上陸直前〉へ続く)


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コロナ後初めてフル編成のオーケストラ演奏会を体験した印象から、今後のクラシック音楽、音楽ライブの行方を考えてみたい。観客と演奏者、興業側の立場の差。まず、コロナ渦中でのオーケストラ演奏会をどう開催するべきか?を考える上で、これら3者の立場がそれぞれあることを見落としてはならない。
観客の立場としては、コロナ危機がくる前、2020年2月中旬までは、まさか今年の演奏会が何もかも聴けなくなってしまうなどとは想像していなかった。

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3章その3「在阪オーケストラは2020年の苦難を乗り越え、2021年シーズンへ〜日本センチュリーの「フィデリオ」と大阪4大オケ共同会見取材を中心に」
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※アーカイブ
『コロナ禍の下での文化芸術』プロローグ
https://note.com/doiyutaka/n/n7590305397f5

1章「2月下旬の政府によるコロナ対策のイベント中止要請や、安倍総理による全国一斉学校休校の影響で中止・延期になった事例」
https://note.com/doiyutaka/n/n3a715c4a552a

(続き)【合唱でのコロナ感染例について】【ライブハウスでの感染例について】
https://note.com/doiyutaka/n/ne88b2c2f3a89

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2章「リモート演奏が突如、絶対的な決まりになった日 〜 21世紀に盛んになった〈モノ消費ではなくコト消費へ〉という流れがコロナ渦でかき消された」
その1「2020年6月以降の国内クラシック界の現状と今後」
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その2「2020年6月中旬、再開されたフル編成オケ演奏会を聴いて」
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その3 コロナ渦で、コーラスをどうやって再開するか?
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3章「日本での文化芸術の流され方と欧米でのあり方、抵抗、復活への強固な意思の差〜固有の文化芸術と、借り物のそれとの差が緊急事態下で露わになった?」
その1「楽器飛沫実験と、2〜3月の公演延期・中止の是非 特に学校関係の行事・音楽系の学生公演について」
https://note.com/doiyutaka/n/n2c973b89c700

その2
「大イベントのコロナ禍での再開と断念」
https://note.com/doiyutaka/n/n906b4e989d9f


※2020年、まだ緊急事態宣言になる前の大阪・ミナミ

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※2020年秋の大阪・ミナミ

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※2020年秋、大阪ミナミの地下街に、シャッターを下ろして閉店した店舗が目立つように

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土居豊:作家・文芸ソムリエ。近刊 『司馬遼太郎『翔ぶが如く』読解 西郷隆盛という虚像』(関西学院大学出版会) https://www.amazon.co.jp/dp/4862832679/