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仕事偏差値なるものがあるとして「ジョブ型雇用」を考える

学生の頃、偏差値ってのをマジマジと見せつけられて、自分の立ち位置を見つめつつ、低い人間を探した記憶があるのはボクだけだろうか。

人は弱い生き物で、自分よりも低い位置にいる存在を見出すことによって心理的に優位にいることを確認し、それによって精神的な安寧を見出すことは決して少なくはないだろう。

醜いのは顔だけにしろ、と声を大にして言いたいが、ボク自身が醜い心を存分に曝け出したまま生きているので声に出すことすらできない。

学習はいいだろう。相対的にも絶対的にも数値化されやすい。点数を取ればとった分だけ評価され、それが順位として明確になる。しかし、仕事となるとどうだ。偏差値的なものをつけることが難しくなる。

偏差値なるものは相対的なもので、自分の獲得した点数が良ければ必ず上がるわけでもない。他の人間も点数が良ければ、全体的に点数が高くなるのだから当然だ。

仕事に点数をつけることはできない。人事考課と称し、無理やり上司が、時には同僚もこぞって評価をすることによって、誰かの査定に響くようなことが日常的に行われているが、いずれも主観の域を出ない。

これを前提にすると、ジョブ型雇用が日本の労働市場へ全面的に導入された場合、労働力の供給が制限されつつあり、もう数年も経過したら労働供給制限社会となってしまうのにも関わらず、それを促進しかねないのではないか。

そんな与太話を一つ。

どうも、ゑんどう(@ryosuke_endo)です。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用についての説明で芯を食ってるな、と思ったのは三井住友銀行の説明だ。

ジョブ型雇用は、職務内容と求めるスキルを限定して採用する雇用形態です。 入社後に、事業の撤退などの何らかの事情で担当職務がなくなった場合や、自らのスキルが企業の要求する水準に達しないと評価された場合には、他部署への異動が難しく、最終的に離職せざるを得ない場合が生じる可能性があります。

【三井住友銀行】ジョブ型雇用とは?従来の雇用との違いやメリット ...
https://www.smbc.co.jp › about-job-based-employment

これはジョブ型雇用における求職者のデメリットを記載した箇所の抜粋だが、メリットもメリットで「自分の得意分野に特化して、能力を十分に発揮できます。」なんて記載されている。

果たして、「自分の得意分野」に「特化」して、「能力を十分に発揮」できる人材がどれだけいるのだろうか。また、それを評価できるような人事制度を敷いている企業がどれだけあるのか。

ジョブ型雇用では、専門性を示すことになる保有資格や経歴によって仕事内容と対価が決まる雇用形態だ。つまり、いわゆるメンバーシップ型雇用のように会社と人が紐づくのではなく、人と仕事が紐づく雇用形態だ。

イメージとしてはスペシャリストと呼ばれるようなバリバリ、ガリガリ、ゴリゴリと仕事を推し進めていくことを想起してしまうような人たちが雇用されていることを想像すればいい。

それがジョブ型雇用だ。

優秀な専門家になれるような人材

しかし、だ。
世の中に、それだけ専門知識が必要で、先鋭化された仕事術を持っているような人たちしか働けない仕事がどれだけあるのか。

需要と供給の平衡性を考えてみればわかる通り、専門性を保有していてバリバリの経歴を保有するような人の数が少ないから希少性が高くなるし、その人材を欲する企業が多いからこそ条件が良くなるのだ。

つまり、そういうスペシャリスト的な存在は「その他大勢」がいるからこそ際立つのであって、学習における偏差値でいうと偏差値の真ん中にいる人たちが多いからこそ、偏差値の高い位置にいる人たちは「優秀」と評される。

みんながみんな、学士を保有している状態では大学卒業のありがたみが減少しているのと同じように、その優秀さが標準的なものになってしまえば価値も目減りし、いつしか優秀の尺度や方向性が変わっていることに気づく。

学校に成績を想定してほしい。5段階評価のうち、2を3にすることはできるだろうし、3を4にすることもできるだろうが、1を5にすることは不可能だ。2を5にすることだって、元々の素養がない人物でない限りは現実的ではないはずだ。

優秀な人材とは、素養と環境が相まって成り立つものであり、専門性を高めるためには金が必要だ。より高い授業を支払える専門性の高い学徒になる必要があるし、社会人になってもリスキリングだなんだと言われるが、そもそも学びの機会すら持っていない人間に専門性など身につくはずがない。

優秀な専門家になれるよな人材は、兼ねてから決まっているようなところがあることを忘れ、いつの間にか万人がヒーローになってしまえるかのような期待を持つことはやめた方がいいだろう。

成り上がりなんて身近に存在しない

専門性もなく、たいしたスキルがあるわけでもないのに上場企業に入れる人がいるのは日本のメンバーシップ型雇用のおかげだし、雇用されたとて専門性を身につけるどころか「総合職」といった名目で専門性を身につけることを拒絶されてきた。

そんな20年前30年前の若者たちは、もう40代50代に差し掛かり、世間的にはいいおじさんとおばさんだ。

しかも、40代に限っては就職氷河期世代とも呼ばれ、正社員として働けなかった人たちがいる。いまの派遣や非正規社員に望んでなるとかならないって話とは違う。望んでも正社員として就労できなかったのだ。

もちろん、自身の努力によって盛り返した人たちもいるだろうが、その人たちだって一定数いるだけで稀有な存在であることに違いはない。

雇用形態が不安定なのだから、満足のいく金を得られているわけでもなく、それによって学歴ロンダリングやスキルや経験の大変革を金を利用して獲得することも不可能に近い。

成り上がりだなんてのは一部の成功した人たちが堂々と自慢話をすることに終始した結果としてあるもので、誰もができるものでもないし目指すべきものでもない。

つまり、メンバーシップ型雇用で甘い汁を吸ってきた人たちが、今からジョブ型雇用に変わり、急激に自身のスキルや経験を対価に変えろと言われたところで、そんなのは土台無理な話なのだ。

おわりに

まったく夢のない話として終始してしまったが、専門家と呼ばれる人たちに金を積んで支払えるだけの企業が日本の中にどれだけあるんだって話である。

むしろ、企業側が求めていないのだとしたら、いったい誰が希望してジョブ型雇用なるものを広げようとしているのか。誰がそれによって甘い汁を啜れるようになるのか。

そんなことばかりが気になって夜も寝れないかと思いきや、存分に心地よく寝ることができたので、今日もいい気分である。

ではでは。
ゑんどう(@ryosuke_endo)


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