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工学部 大学院生へ 〜テストエンジニアという職種〜

就職活動真っ最中の学生さんは,インターンシップをしっかり活用されていますか? 企業側も結構な時間を割いて準備しています.受け入れ部署の担当者は,インターンシップ中のコンテンツやスケジュール・タスク配分などを色々悩んでいらっしゃいます.”仕事の一環でしょ”なんて心ないこと言わずに,そういった影の努力にも思いを馳せてあげて下さい.(もちろん,企業側も学生さんの人知れずの気苦労を汲み取らなくてはいけないし,配慮しないといけないと思っています.はい)

製品開発において,分業化/細分化が著しく進んでいるように見受けられます.高度・複雑になる程,考えなければならないことは深くなるので,一人のエンジニアが抱えられる業務範囲は必然的に狭くなる.いいとか悪いとかではなく,そうならざるを得ない.ただ,いついかなる時代においても,どのような製品・サービスであろうとも,開発工程全体を俯瞰する感覚(コストであったり,スケジュールであったり,人員や設備などのリソースの適切な配備,サービスがもたらす利益などのビジネスセンス)というのは常に意識して持ち続けないといけません.会社に入って実務にどっぷりと浸かってしまうと,そのようなことを考えるゆとりがなかなか持てませんので,いつも自ら戒めないと目の前の雑務に追われる羽目になります.

個々の業務におけるツール群もより専門的・高度になり,習得に時間もかかりますが,昔に比べて遥かに便利に分かりやすく,その処理も高速になっています.チュートリアルも充実してきているし,各種コミュニティも活発に情報発信している.ですので,情報収集には事欠かないと思います.それと併せて,CAEという解析技術のみならず,プロジェクトやシステム全体を俯瞰するツールもどんどん開発されてきています.MBSE(モデルベースシステムエンジニアリング)といったシステム全体を理解(統括)して開発を推進することの重要性が増してきているし,それを認識している企業体が増えている.

ともあれ,分業化/細分化が進む中,個人(若手)がエンジニアリングスキルを磨きたいならどうしたらよいのかという質問がよく聞かれます.いろんなアプローチがあると思いますが,ここで私なりに,そのアプローチの1つを提示してみようと思います.これが最善というつもりはありませんが,参考にして豊かなエンジニア人生を歩める道を探って下さい.これはエンドレスタスクで,50歳を超えたエンジニアである私もずっと念頭に置きながら日々の開発業務に勤しんでいるのが実情です.

新しいアイデアが閃いて,それをすぐに具現化できる人は,私の記事なんか読まなくていいんです.そうではなくて,新しい世界に飛び込んだ時や,何から手をつけて良いか分からなくなった新入社員およびその卵の人に向けて書いてます.

製品開発の全容は,コンセプト/企画立案から始まって,量産・保守メンテまで基本的な工程はそんなに大きく変わらないと思います.ただ,その期間やそれぞれのフェーズがラップしていたり,利用するツールなどが業界やサービスによって大きく異なるとは思います.

自分のキャリアプランや現在の業務に戸惑ったり迷ったりした時は,検証部門に張り付いてみることをお勧めします.まず,できあがった試作品の喜びを心に取り戻しましょう.これ,とっても大事です.この喜びが困難な状況でも前に進もうとする心の推進力になるのです.

そしてテストエンジニアと一緒に,試作品の試験を行い,取得したデータ分析を手伝ってみる.(もちろん上司とコミュニケーションを取って,了承をもらってからです.)

<テストの心構え>
1.テストエンジニアにとって,助けになること(何も分からないなら,荷物運びでも何でも雑務)を積極的に行う
2.テストエンジニアが年下だろうが入社年が後だろうが,教えてもらう(邪魔している)という謙虚な気持ちを持って接する
3.情報収集:事前に試作品コンセプト,試験目的/内容/判定基準などの資料は頭に入れておく
4.自分なりの試験結果の予測意外とみんな考えてやってない.確かに試験の準備というのは,スケジュール調整や部品手配,デバイスの設定などやることが多くて大変.時間のない中で実施しなければならないので,出たとこ勝負の試験になってしまいがちです.しかし,試験結果を予想しておくと試験のミスや事故が激減する.試験途中でデータを見ることにより,何かに気付けるし,その場で試験に工夫を加えることもできたりする.何より自分のエンジニアリングスキルが飛躍的に向上する!)

こういったことが身についているテストエンジニアは,社内に必ずいるはずです.そのような人と一緒に仕事ができたら,本当にハッピーです.同じ試験を行うにでも,疲れ方が気持ちいいんです

特にフィールドテストエンジニアと呼ばれるような,客先へ出張して試験や不具合対策を行うような人は,本当に精神的にも肉体的にも鍛えられているなと感じます.不具合対策なんていうのは,大体が怒られに行くようなものです.ご迷惑をかけているのだから当然で,何が原因でどういう対策を行うのがベストなのか,現場での瞬間的な判断力が問われます.応急処置を行うとともに,抜本的にどういう対策を持ち帰って行うのか.製品に対する愛着と必ず良くしてやるという信念.

1〜3年テストエンジニアを真剣にやれば,色んなことが見えてくるはずです.段取り力・交渉力もつくはず.色んな計測機器や部品を運んだりもします.色んな計測機器に精通することも非常に大切です.

現場での試験もたくさんやったな〜と思って,何気にバッグを拭いてました.そうしたら頑丈な鉄製のフックがすり減っていて,今にも折れそうになっているのに気づきました.新しい肩紐をアマゾンで購入するとともに,記念に写真を撮りました.よくがんばったね.鞄と自分.そしてこれからも.

フックの金具摩耗

PS.鉄製フックがこれほど磨耗しているのに,かばん本体はまだ使えます.このかばんの縫製には感動です.メーカーの方の努力に脱帽です.


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