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視点の自由研究No.90「視点_広告は時代を写す鏡」

広告業に関わって20年ほど経つと、そこで使われている表現の変化を感じずにはいられません。今回は、そうした表現の変化を体感値で書いてみたいと思います。2023年現在、そしてこれからの表現がどう変わっていくのか?そうした振り返る時の材料として記してみたいと思います。

「広告クライアントの変化」

今から20年ほど前を思い返してみると広告を流しているクライアントの業種は今とはかけ離れた業界でした。20年前、最近ではあまり見られなくなったタバコ、パチンコなどはまだCMの世界でも大きな広告展開をしていたように思います。私もいくつかでそうした業界のクライアントの仕事をさせて頂きましたが、その表現も今よりももっと直接的な表現が多かったと思います。

2023年の現在、そうした業種にとって変わったのはゲームアプリを代表とするIT業界が席巻し、WEB媒体では各個人の嗜好に合わせた広告が流れるまでに発展しました。今自分が見ているCMが隣の人も見ているという状況がなくなっています。

「No.1表記」

そんな広告表現の中身に目を向けてみましょう。

かつて争うようにCMでも謳われたNo.1表現。売上No.1、業界シェアNo.1など最も売れているという表現ですが、2023年現在も数は少なくなれど、お酒類などの広告では使われています。が、その使われ方にちょっとニュアンスが変わってきている感じもしています。

それは、B to Cという顧客目線への広告からB to Bの小売店、販売店に対する広告展開という視点です。

かつてはみんなが飲んでいるから買おうと思っていた生活者も生活の多様化が進むことで自分の嗜好にあったお酒を選ぶようになりました。そうするとNo.1という表現も生活者目線ではあまり効果がない。けれどその商品を扱う小売店などはそうした指標があることで商品の納入を考えるきっかけとして機能するという形で使われ方が変わったように感じています。

同じ実績表現も時代を経ることで発するメッセージに違いが生まれているのも変化を知る上では醍醐味と言えそうです。

「LGBTQ」

最近では特にその表現がセンシブルになったことと言えばLGBTQの表現でしょう。カップル狙いの商品などはその表現や広告展開においてかなりの熟慮が必要になっているなと感じています。

最近見た広告では髭剃りのCM。トランスジェンダーの方も出演されており、商品を使う生活者、商品の使い方へ至る表現として様々な見せ方が考えられています。

「家族」

そうした性的嗜好。その認知の変化は家族の形を大きく変えています。2023年の料理用調味料のCMを見ても、男性が料理をする、家族で食べるシーンなどは家族の多様性を考慮して、かつてあったステレオタイプ的な表現がなくなり、様々な家族像が描かれるようになりました。

自分の制作経験から振り返っても子供の出演に関連して親御さんにも出演をお願いする際の扱いなどにおいては、再婚や両親の性別などを考えることを当たり前のようにするようになりました。

「表現は時代を写す」

広告は、生活者への配慮を最優先することが求められる世界ですが、映画、ドラマ、漫画などではその時代設定を考慮しながらも、今の視聴者を意識した時代性をとり入れる形になっています。

代表的なところではタバコの喫煙シーンのカットやLGBTQなどの性的嗜好への扱いなどです。場合によってはかつての名作すら見ることができなくなっているものもあります。

こうした時代性は広告もさることながら、表現を扱うクリエティブコンテンツ全てで見てとることができます。

そこが表現物としても面白さでもあり、醍醐味でもあります。さてこれから先の20年で果たしてどう表現は変わっていくのか?そうして変化もまた広告の楽しみ方だと思っています。

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