見出し画像

面白い人が 1958年生まれに集中していた件

自分の酔狂な嗜好を曝け出す所業になりますが、私が面白いと思う日本人を 5人挙げます。

みうらじゅん3

鴻上尚史2

中村うさぎ3

岡田斗司夫4

山田五郎2


変人であること以外、この 5人に共通する点はなさそうですが、この人たちは同世代なんだろうなあ、と漠然と思っておりました。
最近ふと経歴を調べて驚きました。5人とも 1958年生まれだったのです。
偶然にしてはできすぎています。
これはもう偶然じゃないですね。

1958年に何か異変があった(ハレー彗星が接近したとか、巨大隕石が落ちた)みたいな話はなさそうです。
やはり、1958年生まれの人たちが生きてきた環境を追うべきでしょう。

70年代に青春を過ごした

こういう話になると、必ずと言っていいほど引き合いに出される出来事が、東京オリンピック (1964) と大阪万博 (1970) ですね。
否定はしませんが、つまらない分析だと思います。
経済の面から説明しようとする人もいます。高度経済成長期に子供時代を過ごして云々。これも以下同文。

自分に照らして考えてみましょう。
1971年生まれの私は、いわゆる 80年代の申し子だと思っています。
80年代の音楽、ドラマ、漫画、ゲーム等が一番だと信じているのです。
いまだに、ですよ。(ヤバいですよね)

なので、1958年生まれの人たちは、70年代の申し子だと思うのです。
そこで、70年代を象徴するコンテンツをピックアップしてみました。
(一部、60年代後半を含む)

ビートルズ
ウルトラマン
三島由紀夫割腹
ドリフターズ
あさま山荘事件
刑事ドラマ
クイズ番組
スポ根アニメ
欽ちゃん
長嶋茂雄引退

ずいぶん偏ってるなあ、と思われますか?
70年代に何があったかではなく、「何がなかったか」を考えると、
✅ グローバルな事ども
✅ インターネット
なんですね。
70年代というのは、日本国内の、しかもテレビの中で起こっていることが、ほぼすべてだったと思うんです。

これらを並べてみて感じるのは、大衆がヒーローを求めた時代だったんじゃないかなあ、と。
ウルトラマンやスポーツ選手のような典型的なヒーローだけでなく、憂国者や革命家や殉職刑事といった危ないヒーローも含めて。
で、私が挙げた 5人は大衆に迎合するタイプではないので、アンチヒーローだったに違いない。
長嶋選手の活躍に「興味ねー」と思い、三島の割腹に「ダサっ」と感じ、『太陽にほえろ!』を観ずに「くだらね」と言っていた人たち。

10歳~20歳くらいの青春時代を、このような空気のなかで過ごした彼らは、「自分は周りとは違う」という相当ひねくれた構えを身に纏ったのでしょう。

なめねこ

大人として彼らが見てきたもの

その後に続く 80年代は、バブリーな時代です。
80年代に 10代だった私は、リッチでオサレな世界(当時)をテレビの中だけの虚構として見ていました。無邪気に憧れていられたわけです。

浜田省吾

1958年生まれの彼らは、20代~30代前半という微妙な年頃にそれを経験しています。微妙と言うのは、手が届きそうで届かない年齢だからです。
しかも、ひねくれた彼らは、バブルの狂乱を「アホくさ」と冷めた目で見ていたに違いない。
ここまでで、彼らは大いに鬱屈がたまっていたと思われます。

90年代は、バブルの余韻が残るなか、日本の凋落が始まったことにまだ世のほとんどの人が気づいていない時代です。
この、バブル後の混乱が始まった頃に、彼らの奇人変人じみた才能が一斉に開花します。

2000年に 40代という成熟期を迎え、9.11 (2001) を見ます。
70年代を見てきた彼らは、「そもそも、世の中は狂ってたんだ」と、意外と冷静に受け止めたのではないでしょうか。

因みに、彼らは2000年代、転機を迎えたり、休業したり、奇行に走ったり、宗旨替えしたりしています。

以上をまとめると、
✅ 10代: 自分が他の大多数の人たちと違うことを意識する
✅ 20代: 時流に乗れず悶々とし、やっぱり自分は人と違うと悟る
✅ 30代: 世の中が徐々に混沌とするなか、自分らしい活動を始める
✅ 40代: 無常観のなかで、いまいちど自分の生き方を見直す

2021年現在、彼らは 63歳になっています。
還暦を過ぎてなお、その出色の感性と知性は衰えていないようです。

老いるショック

彼らの類似点として、大衆や商業主義に背を向けてきたことが挙げられるかもしれません。
例えば、みうらじゅんと言えば、サブカルチャーの教祖のごとく扱われることがありますが、サブカルが市民権を得て大衆化・商業化されると、自らはもっとマニアックな方向へ逃げていく傾向があるように思います。
岡田斗司夫は、オタクの教祖でしたが、オタクがマス化して教養をなくした時代の変化を見抜き、「オタクは死んだ」と言いました。

ときに、同じ 1958年生まれに秋元康と小室哲哉がいることを知りました。
私の好きな 5人の対極にいる 2氏でしょうか。

今回の学び

私と 13 しか違わず、1980年~の世界を同時に見てきたはずの 1958年生まれだけど。
同じものを見ても、それを見た年齢によって、受け取り方が全然違うんでしょうね。

17歳が見たバブル vs 30歳が経験したバブル
29歳が見たテロ戦争 vs 42歳が見たテロ戦争

同じことが、それ以降の世代にも言えるでしょう。
想像してみました。

✅ 1981年以降に生まれた ミレ二アル世代(デジタルネイティブ)
夢から醒めた後の気だるい空気がデフォルト。期待しないが絶望もしない。
航空機がビルに突っ込む映像を映画のワンシーンのように見たんだろうか。
駆け出しの頃に見た震災に、私達ほどの衝撃を受けなかったのではないか。

✅ 1996年以降に生まれた Z世代(デジタル&ソーシャルネイティブ)
震災後の世界が原風景。生存確率の高い道を模索してもおかしくはない。
コロナによる行動制限を、私達が思うほど苦にしていないのではないか。
貧しい小国に生まれた。生き残る確率を上げるには、外に出るしかない。

それぞれの世代が、異なる世界を生きているみたいです。
だから異世代は面白いんですね。

この記事が参加している募集