見出し画像

先進技術の波に乗る「AIエージェント」のIT業界におけるニーズを解説!

OODAループをご存じでしょうか?
OODAループは、元々は軍事行動における指揮官の意思決定を対象としていましたが、現在は企業における意思決定や、IT運用においても多くの現場でその考え方が援用されています。
OODAは、監視(Observe)- 情勢判断(Orient)- 意思決定(Decide)- 行動(Act)の頭文字から取っています。

ICTシステムの近未来像(OODA&AI)

ビジネスの現場において迅速な意思決定を実現する上でOODAの考え方が有効です。リアルなビジネスの写像としてのICTシステムにおいて、AIがどのように使われるかについての考え方を図示しています。

今回のnoteでは、システム開発・運用の現場の課題をベースとして、AIがどのようにIT業界で活用されていくかについて解説します。


IT業界の深刻課題:熟練したITプロフェッショナルの不足と人材確保の難しさ

最新のAI技術は、企業にとって非常に重要なツールとなっています。AIはデータ分析、自動化、予測分析など、様々な分野で活用されており、その潜在能力は計り知れません。しかし、これらの技術を効果的に活用するためには、AIに関する高度な知識を持つ専門家と、業界のドメイン知識を持った技術者の双方が必要です。

例えば、機械学習モデルの構築やデータの前処理、モデルの評価と最適化など、AIプロジェクトには専門的なスキルが求められます。こうしたスキルを持つプロフェッショナルに加えて、AI技術適用する業界のドメイン知識も重要です。ドメイン知識とは、その業界特有の業務プロセスや市場の動向、法規制などに関する理解を指します。AI技術を効果的に活用するためには、これらの知識を持つ専門家が不可欠です。

例えば、金融業界ではリスク管理や詐欺検出、クレジットスコアリングなどにAIが利用されていますが、これらのシステムを設計・運用するためには、金融の専門知識が必要です。同様に、医療業界では、AIを用いた診断支援システムや患者データの管理には、医療の知識が求められます。

このように、IT業界においては、純粋に技術を追求していくタイプの技術者だけではなくて、それぞれの業界の知識を持ちつつ技術を使ってどう業務を実現していくのかを考えるタイプの技術者(それだけではありませんがここでは簡略化します)がそれぞれの強みを補完してシステムを構築しています。

新規性のあるプロジェクトにおいては、必要とされるドメイン知識も毎回異なるため、そのプロジェクトに適した理想的なプロフェッショナルというのは毎回定義が異なるため、そのような人材が揃うことは稀であるのが現実ではないでしょうか。

IT人材不足への企業の対策

高度な技術や専門知識を持つ人材が不足していることは、IT業界にとって大きな痛手です。AIやIoT、クラウドコンピューティングなどの先端技術を駆使できるプロフェッショナルは限られており、これが新しいプロジェクトの開始や既存のシステムの維持・改善を遅らせる原因となっています。さらに、サイバーセキュリティの専門家の不足も深刻であり、企業はリスク管理において大きな課題に直面しています。

一方で、基本的なスキルしか持たない、または技術の習得が不十分な人材は多数存在しています。これらの人材は、業務経験が浅く、十分なドメイン知識を持たない場合が多いです。また、仕事の進め方が不十分で、プロジェクトの管理やチームワークにおいて課題が多いこともあります。

企業においては、どのような対応を行っているでしょうか?リスキリングとリストラクチャリングの2つの方向性をみていきたいと思います。

リスキリング

社員のスキルアップ
研修プログラムを充実させることで既存の社員のスキルアップを図るアプローチです。技術セミナーやハンズオンワークショップを定期的に開催し、最新技術や実践的なスキルを学ぶ機会を提供します。また、オンライン学習プラットフォーム等を利用して、社員が自分のペースで学習できる環境を整えるといったことが行われています。
教育機関や政府の支援
教育機関では最新技術を取り入れたカリキュラムを提供し、学生が実践的なスキルを習得できるようにします。政府もIT教育の強化や補助金制度の拡充を推進し、企業が必要な人材を育成する支援を行います。プログラミング教育の早期導入やリスキリングプログラムの推進などが行われています。

リストラクチャリング

外部専門家の活用
フリーランスや契約社員としての専門家を積極的に採用し、必要な時に必要なスキルを持つ人材を柔軟に確保します。さらに、専門知識を持つコンサルタントを活用し、外部の視点からのアドバイスや指導を受けることで、社内の技術力を向上させるアプローチについても従来よりは積極的に採用されています。
デジタルトランスフォーメーションの推進
企業全体でデジタルトランスフォーメーションを推進し、業務プロセスの自動化や効率化を図ります。RPAを活用して定型業務を自動化し、社員が付加価値の高い業務に集中できるようにします。データ分析ツールの導入により、経営判断の質も向上させられると考えられています。

IT業界における業務変革の機運

企業に蓄積されている知識・ノウハウは膨大であり、新たに参画した人が学ぶべき内容は非常に多いです。しかし、その膨大なノウハウを効果的に学習させるプロセスの維持には高いコストがかかります。これを理由に、一部の企業では新しいメンバーが一から新しいやり方で取り組む方がコストに見合うと考える場合もあります。

過去の優れた知見を学ぶというよりは、新しいやり方を積極的に取り入れる方が成果を挙げられるのではないかという考え方です。成果が上がればそれで良しとするアプローチが、近年の主流となりつつあるように思えます。

このトレンドは、真の意味での業務変革の機運が高まっていることを示しています。企業は柔軟な考え方と新しい技術を取り入れることで、より競争力のある組織へと進化することが求められています。従来の方法に固執せず、時代の変化に対応した革新的なアプローチを採用することが、成功への鍵となると皆が信じているように思います。

AIの活用:本当は、過去の蓄積を生かしつつ新しいやり方を活用した方がいいに決まっている

過去のやり方に囚われずに新たな試みにチャレンジすること自体は良いことだと思います。一方で、企業に蓄積された膨大なナレッジを担当者が単に知らないだけで、一からまた試行錯誤を繰り返すというのは望ましい状況ではありません。企業が持つ既存の知識や経験を最大限に活用しながら、最新の技術や方法論を取り入れることが、効果的なアプローチと言えるでしょう。

ここで、冒頭の図を再掲します。

ICTシステムの

図のICTシステムのレイヤにおいて、OODAそれぞれの機能はAPIとAIから構成されます。これは、現行の業務をシステム化したり自動化されている状況を示します。現状は人間がそれらのシステムを統合していますが、AIにより判断を自動化することで人間が統合していたタスクをAIによって統合することが可能となります。複雑に絡み合った業務をAIにより統合されるようになると、AIエージェントと呼ぶようなものになるのだと考えています。
アナロジーとして、APIは各タスクを実行する専門家、AIは専門分野のエキスパートや、様々なタスクを統合するマネージャと捉えることができます。このような構成で人間やチームの働きを代替する機能がシステム(AIエージェント)として提供されつつあるのがIT業界の先進的な取り組みと考えています。このようなAIエージェントの導入は、「IT人材不足への企業の対策」で述べたリスキリング施策とリストラクチャリング施策の両施策の統合案とも言えます。

IT業界は急速に進化しており、その進化を支えるためには熟練したプロフェッショナルの確保と育成が不可欠です。AIエージェントとの協働を前提としたフォーメーションの整備は、真の意味での業務変革の有望案であると言えるのではないでしょうか。このような方向性を明確に持って課題に取り組むことで、企業は真の意味での業務変革を実現し、より競争力のある組織へと進化することが期待されます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?