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おやつ論文|カレーは飲み物

最近,咀嚼関連の研究を漁っていて,ついでに自身の生活も見直しはじめた。

ついでというか先行研究から「生活変えろよ!」と圧を受けている感じがして…,見事にセルフの情報提供による行動変容を体験している。とはいえ量減らして麦飯始めてちょっと咀嚼回数意識し始めただけなんだけど。

今回は「現代人は咀嚼回数が減っている」という内容。

いろんなところで記事にされているから正直書く必要はないんだけど,メモかつ,ある理由があって書くことにした。

ということで,咀嚼研究メモの後に本題に関係ない愚痴を書く。
(というかむしろ愚痴が本題)

今回の記事は
『よく嚙んで食べる 忘れられた究極の健康法』
という本を軸として参考にしつつ咀嚼習慣を解説していく。



今,歯科疾患が世界で熱い

近年,歯科疾患が世界的に問題視されている。

第74回WHO世界保健総会では,

  • 口腔疾患(歯科疾患)の有病率が極めて高い

  • それによる経済的負担も大きい

  • 学校や仕事の欠席につながり生産性の低下

  • 多くが予防可能であること

などの口腔保健に関する重要な決議がされた。

また,医学論文(国際誌)の権威である Lancet でも異例の口腔保健特集号が出版された。

日本ではあまり知られていないが,世界的に歯科疾患に対する危機感が高まりつつある


現代人は全然噛まない

咀嚼と歯科疾患,および生活習慣病はがっつり関連があるよという話を挟んでからこの話題に進みたかったけど面倒になったので次に行く。

関連があるという前提で以下の内容を読んでほしい。

現代人と他の時代の咀嚼回数を比較したある有名な研究がある(齋藤,1987)。

時代の変化につれて食べ物も変わり,現代人の「噛む」力は昔の人より低下しているという考えのもと,現代と過去の食事を比較する実験を行った。

実験は,弥生時代,平安時代,鎌倉時代,江戸時代初期,後期,戦前,現代,それぞれの時代の食事を再現し,大学生に食べてもらい,各咀嚼回数と食事時間を測定した。

その結果が以下の通り。

齋藤(1987,2005)を参考に作成

凹凸はあるが,概ね時代が変わるにつれて咀嚼回数が減っているように見える。
特に現代の咀嚼回数が少ないことがわかる。

齋藤(2005)は「この背景には”嚙むしつけ”が家庭から消滅したという現実があります」「家庭での「食のしつけの喪失」こそが,現在の国民病ともいえる生活習慣病を作り出した”戦後最大”の忘れ物」と述べている。

食育に関する意識調査(農水省,2023)では,「食育への関心度」に対して「関心がある」「どちらかと言えば関心がある」と答えた20~29歳は男女共に他の世代と比べて一番低かった。

この実験は約40年前ということを考えると,2020年代でこの実験をやった場合もしかしたらさらに咀嚼回数が少なくなっているかもしれない。


どこから情報を引っ張ってきたか書け

咀嚼回数に関して記事を書いた理由として,この咀嚼回数の比較の実験結果があらゆるサイトで紹介されているのにも関わらず,どこにも引用元が書かれていなかったからだ。

いやもう,ほんとに腹が立った。

「咀嚼回数 現代人」
とかで是非調べてほしい。この実験結果を解説するサイトの多くが病院やクリニックだが,どこにも引用が書かれていない。

医者ならEBMとか教わっているはず。エビデンスの出所くらい書いて欲しい。

たしかに一般向けに分かりやすく書くのはわかる。でもそれなら本文をわかりやすく書けばいい。その下とかに情報源を書いたとしても,分かりやすさに何の影響もないでしょ?

農林水産省のページでも紹介されている。しかし引用はされておらず,「1回の食事の咀嚼回数と食事時間を調べた報告によると」としか書かれていない。国でこれかよ!呆れ果てる。

結婚挨拶で親のとこに行って,パートナーの名前と出身を言わずに性格だけ紹介するのと同じだと思う。そいつはどこの馬の骨だよ。

こういうソースのない情報,つまり3次情報的なものが溢れすぎてて,1,2次情報にたどり着きづらいのはかなり困った問題だ。

この際ついでにいうけど,国の資料は公表日と表題が書かれていないことが多すぎる。引用したいから必死に情報を漁るけど,それでも見つからないことが多々ある。これはせっかくとったデータを活用できない,活用する側が無駄に時間をとるといった点で,本当に損失が大きい。

あと厚労省のデータを使っていてよく思うのは,継続的に測定している調査で急に測定内容を減らしたり増やしたり,ちょっと表現を変えた質問をするのをなんとかやめてほしい。データとしてはかなり使いづらくなる。

国のデータの公表についてはたくさん文句があるが,使わせる気がない資料の公開の仕方,統一されない調査内容,ここはいい加減どうにかしてほしい。(見せる気がないごちゃついた資料も)

最後についでで,厚労省とかの調査をググった時に,報告書とかスライドのPDFのリンクが検索結果出されるの何とかならんのかな。一個前のPDFに飛ぶ前のページを見たいんだ。これは自分の検索能力とGoogleのパーソナライズもあると思うけど,どうにかしたいので知ってる人は是非とも教えていただきたい。


以上,咀嚼回数の実験の紹介とついでのイライラ発散でした。こんなことで発散されないと思うけど。

とにかく!「よく噛む」のは大事なのと,情報を引っ張ってきたら出所を絶対書けという内容でした。


< 文献 >

農林水産省(?).よく嚙んで,食べ過ぎを防ごう:チェック&トピックス中高年男性編ゆっくり食べる みんなの食育 農林水産省.Retrieved from 13, 2023, from
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics4_02.html

農林水産省(2023).食育に関する意識調査報告書 農林水産省.Retrieved from 13, 2023, from 
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/ishiki/r05/index.html

Peres, M. A., Macpherson, L. M. D., Weyant, R. J., Daly, B., Venturelli, R., Mathur, M. R., Listl, S., Celeste, R. K., Guarnizo-Herreño, C. C., Kearns, C., Benzian, H., Allison, P., & Watt, R. G. (2019). Oral diseases: a global public health challenge. Lancet (London, England), 394(10194), 249–260. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)31146-8
※ Lancet のHP(特集ページ)は以下URL
https://www.thelancet.com/series/oral-health

齋藤 滋(1987).咀嚼とメカノサイトロジー 齋藤 滋(編)咀嚼システム入門(pp. 115-229) 風人社

齋藤 滋(2005).よく嚙んで食べる:忘れられた究極の健康法 日本放送出版協会

WHO (2021). World Health Assembly Resolution paves the way for better oral health care. World Health Organization. Retrieved from 13, 2023, from https://www.who.int/news/item/27-05-2021-world-health-assembly-resolution-paves-the-way-for-better-oral-health-care




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