見出し画像

スプラトゥーン2から想像する、任天堂の凄さ

スプラトゥーン2というゲームをプレイしたことがあるでしょうか。
これです。

普通にゲームとしてびっくりするほど面白いです。
「1本のゲームにそんなに時間使う?」と思うくらい多くの人の人生を溶かしている代物です。
でも今日は、そのあたりを深く論じたいわけではありません。

このゲーム、UX(ユーザー体験)的に非常に違和感を感じる部分があります。
起動すると強制的にヒメとイイダという2人のキャラクターがダベるシーンを長々と見せられるのです。

ヒメとイイダ

スキップもできなければ、セリフ送りもAボタンを押して進めるしかできない。

今日はここから想像した任天堂という会社の凄さについて書きたいと思います。

スプラ2のオープニングの違和感

普通テレビゲームを起動してからプレイするまでの動画や演出などは、STARTボタンや決定ボタンなどを押すことでスキップできるものです。

もちろんデータの読み込みなどの時間稼ぎである程度そういった演出を強制的に見せることはありますが、スキップできるならさせるのが一般的でしょう。

ところが、スプラトゥーン2では強制的に2人がラジオ形式でダベっているシーンを見せられるのです。
一応その時刻にオンラインバトルができるルールやステージを紹介してくれるのですが、そんなの起動してからメニューで一発で確認できるので、強制的に見せる必然性は非常に低いと言えます。

正直、プレイヤーの中にもあれをカットさせてくれ、見るのダルい、あれのせいで友達とのバトルに遅れる、といった声もたくさん聞こえてきます。

それで任天堂の何がすごいのか

おそらく上記のようなユーザーの感想が出てくるだろうことなんて、リリース前に任天堂の開発チームは認識していたはずなのです。

開発メンバーからも反対意見は多く出たのではないでしょうか。

スキップするかどうかはユーザーにゆだねるべき。
強制的に見せるのはユーザーの利益に反する。
最初の一回見せるのは良いが、毎回見せる必要はない。

こんな意見が出たかどうかはわかりませんが、私が企画会議に出ていたなら言ったと思います。

でも2人のダベりはスキップできない仕様でリリースされました。

ユーザーにとっては明らかに自由度が減ったうえに、メリットもよくわからない仕様でリリースされたわけです。

良いか悪いかは一旦置いておいて、この意思決定、すごくないですか?
自分が働いている会社で、これができる想像ってつきますか?
しかもその結果バカ売れしてるし、リリース後も長期間プレイヤーは残存してるんです。
もうリリースから4年くらい経ってますが、いまだにオンラインプレイしても一瞬で試合が決まるくらいには24時間365日プレイヤーがたくさんいるのです。

この仕様がもたらしたもの

オープニングで出てくる2人のキャラクター、ヒメとイイダは、今作からの登場です。
前作は別の人気キャラであるアオリとホタルがいました。

アオリとホタル

アオリとホタルの2における存在感は非常に小さくなり、代わりにヒメとイイダの存在感は大きなものになっています。

こうなると前作からのファンとしてはアオリとホタルをもっと出してほしい、といった声が出てきそうなものです。

でも実際にはヒメとイイダの人気は絶大で、ライブまで開かれるほどになっています(まぁこれアオリとホタルも出てるけど)。

私はこの状態をもたらしたのがオープニングで強制的にダベりを見せられる仕様なのではないかと考えています。

一応冒頭で毎回しゃべってはいるけど、ほとんどの人がスキップしてしまっている2人のキャラでは、ここまでの人気にはならなかったと思うのです。

発売後2年間毎月、フェスというイベントが開催されました。
毎回ヒメとイイダの陣営に全プレイヤーが分かれて戦う形式で、これが毎回大いに盛り上がったのはヒメとイイダの人気によるところも大きかったように思います。

ヒメとイイダのamiibo(ゲームと連動して使えるフィギュアのようなもの)の売れ行きも好調なようです。
※私が見た時点で全amiibo中イイダ6位、ヒメ10位

学んだこと

複数意見の落としどころみたいな意思決定から偉大な成果は生まれない、というのは割と最近よく言われていることですが、その逆の好例を見た気がしました。

ユーザー体験を考えるときに、部分的ではなく、大局的に見ることが大事なのだとも思いました。
おそらく部分的に見たらオープニングはスキップできるようにしてしまったと思います。
でも大局的に見たからこそ、ユーザーにキャラへの愛着をもたらし、よりゲームの世界に没頭できる体験が生まれたのだと思います。

開発チームの異常なまでの細部へのこだわり、全く妥協をしないプロ意識がSplatoon2からはひしひしと感じられます。

よろしければサポートお願いいたします。いただいたサポートは、記事執筆のための参考文献の購入費用(月数万円)に充てさせていただきます。