DJ H!ROKi

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最近の記事

Apathy - Where The River Meets The Sea (2021)

 2000年代のアンダーグラウンドヒップホップを代表するMC/プロデューサーの1人、Apathyの最新アルバム。ソロとしては"The Widow's Son" (2018) 以来、3年振りのリリース。前作ではDJ PremierやBuckwild、Nottzなど多数のプロデューサーを迎えていたが、本作はインタールードなどを含む14曲中12曲を自身がプロデュースしている。全体的にストリングスや女性ヴォーカルを取り入れたドラマチックな楽曲が多く、またアルバムタイトルにもあるよ

    • スクラッチ仕事まとめ

       これまで幾つかの日本のヒップホップ音源にビートメイカーやDJとして参加していますが、主なスクラッチ仕事をまとめてみました。 METEOR - 4800日後 (2009) METEOR君の代表作と言ってもいい名曲だと思うのですが、イントロのスクラッチで参加しています。METEOR君からは「USのヒップホップでスクラッチしてほしい」というリクエストがあり、出来上がりも気に入ってくれました。まだ音源にスクラッチを入れる経験が浅かった頃だったので、個人的には物足りなさもあるけれど

      • Kool Keith - Keith's Salon (2021)

         Ultramagnetic MC'sの一員としての活動以来、ソロだけでなく様々なアーティストとのユニットやコラボレーションでの作品をリリースし続けているKool Keithの2021年作。キャリア通算の作品数は、ラッパーの中でもおそらく最上位に位置していると思う。今回の作品はKool Keithソロ名義だが、Bruno PronsatoとBenjamin Jayというテクノなどのフィールドで活動するアーティスト2人によるユニット「Triple Parked」が全曲のプロ

        • Qwazaar + Batsauce - Stoned Giant (2021)

           フロリダ州ジャクソンビルを拠点に活動するプロデューサーBatsauceと、シカゴのラッパーQwazaarのコラボレーションアルバム。ジャズやファンクからと思われるサンプルを軸としたBatsauceのビートは、確実にファンキーだけど底抜けに明るいというわけではなく、どこか影を感じるサウンドだ。全体的に音の鳴りがクリア過ぎず、温もりを感じるようなミックスも、作品全体の印象に大きく影響しているように思う。終始落ち着いたQwazaarのフロウもビートの雰囲気に違和感なく溶け込ん

        Apathy - Where The River Meets The Sea (2021)

          DJ Nappa - Redress (2021)

           90年代からUKで活動しているヒップホップDJ/プロデューサーのNappaによる全曲インストゥルメンタルのアルバム。声ネタも含めたサンプリングソースのチョイス、ドラムの鳴りとグルーヴ、そしてフックとしての役割を果たしているスクラッチ。どの構成要素をとっても抜群のセンスと安定感がある。メロウなサウンドから、バトルブレイクスに収録されていそうなバンギンなチューン、そしてまるでエディットもののファンクのような腰を直撃するビートまで、楽曲の振れ幅も多彩。いわゆるアブストラクトヒ

          DJ Nappa - Redress (2021)

          Marc Rapson - Dark vs Light (2021)

           ロンドン北部に位置するハートフォードシャー在住のプロデューサー/キーボーディストMarc Rapsonのアルバム。インストゥルメンタルが中心の構成だが、ヒップホップやジャズを基盤とした様々な表情のサウンドを、UKらしい洗練されたフィルターを通して聴かせてくれる。途中に挿入されているヴォーカリストとラッパーを迎えた2つの楽曲も、それぞれアルバム全体のイメージを損ねることなく、素敵なアクセントになっている。  彼のサウンドは個々のパーツの音色が瑞々しいほどにクリアなのだが、

          Marc Rapson - Dark vs Light (2021)

          Edo G. & Insight Innovates - Edo G. & Insight Innovates (2021)

           ラッパーのEdo.Gと、ラッパー/プロデューサー/DJのInsightによるコラボレーションアルバムがボストンのヒップホップレーベルBrick Recordsからリリース。2人ともボストンを拠点に90年代から活動を続ける大ベテランだ。  Insightがプロデュースしたビート上で2人が1バース交代でラップするというシンプルな構成で、客演もベースで1曲参加しているBrady Wattのみ。ビート自体もジャズを中心としたサンプルによる上ネタと、太くて温もりのあるドラムを軸と

          Edo G. & Insight Innovates - Edo G. & Insight Innovates (2021)

          Mark Ski - Catch-Rec (2020)

           ロンドンの約100km北西に位置する都市ノーサンプトンでDJ/ターンテーブリスト/プロデューサーとして活躍するMark Skiのファーストアルバム。"Diggin' In The Tapes"と題したイントロで高まったリスナーの期待値を、本編に入ってからも一切裏切らない充実作!全曲を通じて貫かれた骨太のビートと、そのビートを引き立てるかのように抑えの効いた適度にファンキーなサンプル、そして往年の名作から選び抜かれた声ネタを駆使してタイトに決めるスクラッチ。王道のヒップホ

          Mark Ski - Catch-Rec (2020)

          João Selva - Navegar (2021)

           ブラジルのリオデジャネイロ出身で、現在はフランスのリヨンを拠点に活動中のアーティストJoão Selvaのセカンドアルバム。彼の経歴がそのまま音楽になったような、とてもカラフルで楽しい作品です!  リラックスした歌声で奏でられるメロディ自体は、明るさの中に程良く哀愁が入り混じっていて、どの楽曲も我々が思い描くブラジル音楽のイメージそのもの。それに対してインストゥルメンタルは、一曲目のイントロこそパーカッションやフルートなどが南半球の情景を想起させるが、その後はホーンを多

          João Selva - Navegar (2021)

          UFO Fev &Termanology - From El Barrio, With Love (2020)

           ニューヨークのイーストハーレム出身のラッパーUFO Fevと、ボストン出身のTermanologyとのコラボレーションアルバム。技巧派ラッパーとして知られるTermanologyだが、本作ではプロデューサーとして全7曲のビートを手掛けている。全曲サンプリングから構成されており、現在のトレンドを意識してなのか、ドラムの全く入らない楽曲が多いのは少し残念。ただし、掘り師としての彼のセンスはなかなかで、かなり渋いサウンドを聴かせてくれる。味わいのあるベースラインのループと深いリバ

          UFO Fev &Termanology - From El Barrio, With Love (2020)

          Epik1 - Epik1,2 (2021)

           MC/バトルMC/DJ/プロデューサー/エンジニアなど、全方位で活躍するシカゴのヒップホップアーティストEpik1 (Epik Uno)のアルバム。ヒップホップ愛に満ちたインディペンデントの作品は星の数ほどあるが、想いの強さにスキルやセンスが追いついていない作品が大半を占めるのも事実。だが、このアルバムはヒップホップへの忠誠心にも似た愛情を魅力ある音源として見事にまとめ上げている。オーセンティックなサウンドを求めるリスナーのツボを的確に抑えたビートの数々、スキルだけでなく様

          Epik1 - Epik1,2 (2021)

          Izy - Irene (2021)

           オーストラリア北部のケアンズで結成され、現在は南東部のメルボルンを拠点に活動する3人組のバンドIzyのデビューアルバム。メンバーは様々なバックグラウンドを持ち、ギター/ヴォーカルのRyo Montgomeryはオーストラリア出身の父と日本人の母の間に生まれた。今年3月にリリースされていたのに紹介が遅れてしまったが、これは間違いなく今年のベストアルバムに挙げられるだろう。bandcampのプロフィールでは自らをネオソウルのグループと説明しているが、90年代あるいは現行のネ

          Izy - Irene (2021)

          Ray Foges - N!gg@ (2020)

           1996年頃のジャケ無し12インチ乱発期のアンダーグラウンドヒップホップをチェックしていた人にはお馴染みのグループAdagio!のメンバー、Rayme SupremeがRay Foges名義で2020年にリリースしたソロアルバム。Adagio!の作品をチェックしていた人ならば、ジャケットのタイトルの書体に反応するだろう。当時はミニマルなサウンドが特徴的だったが、本作では楽曲ごとに表情の異なる豊かな音楽性や、Large Professorにも通じる大人の魅力を備えたフロウ

          Ray Foges - N!gg@ (2020)

          ディアンジェロ《ヴードゥー》がかけたグルーヴの呪文 (2021)

           D'Angeloが2000年1月にリリースしたセカンドアルバム「Voodoo」について、音楽的視点だけでなく映像やフェミニズムの視点からも考察した本。  個人的な話を先に書くと、「Voodoo」との出会いはリリースからしばらく経った2000年の3月に、当時国立にあったディスクユニオンで早くも中古に出ていたCDを買ったときだと記憶している。その頃はインターネットやMTVなどを観る環境が家に無かったので、シングルカットされた楽曲のPVを観る機会も無く、正直に言うとこの本を読ん

          ディアンジェロ《ヴードゥー》がかけたグルーヴの呪文 (2021)

          Jeezy - The Recession 2 (2020)

           アトランタ出身のベテランラッパーの2020年作。予想以上に聴き応えのあるアルバムだ。土地柄ゆえトラップ的なアプローチのビートももちろん用意されているが、Jeezyはラップのスタイルを変えず我が道を行く。フロウだけでなくスタンスそのものが実に堂々としており、その姿勢が魅力として作品に投影されている。Ne-Yoを始めヴォーカリストが参加する楽曲が多く、J.U.S.T.I.C.E. Leagueらが手掛けるビートも終始ソウルフルなサウンドを聴かせてくれる。  彼の全盛期を知るリス

          Jeezy - The Recession 2 (2020)

          DJ H!ROKi - THISONE 7th Anniversary Mix (2021-04-28)

          先月アップしたTHISONE 7th ANNIVERSARY MIXの全曲紹介です。 1. August Greene - Optimistic feat. Brandy (2018)  ラッパーのCommonとジャズドラマーのKarriem Riggins、ジャズピアニストのRobert GlasperによるユニットAugust Greeneのアルバム収録曲で、R&BシンガーのBrandyをフィーチャー。ヒップホップとジャズのクロスオーヴァーが本格化したことは、間違いな

          DJ H!ROKi - THISONE 7th Anniversary Mix (2021-04-28)