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DJ H!ROKi - THISONE 7th Anniversary Mix (2021-04-28)

先月アップしたTHISONE 7th ANNIVERSARY MIXの全曲紹介です。

1. August Greene - Optimistic feat. Brandy (2018)

 ラッパーのCommonとジャズドラマーのKarriem Riggins、ジャズピアニストのRobert GlasperによるユニットAugust Greeneのアルバム収録曲で、R&BシンガーのBrandyをフィーチャー。ヒップホップとジャズのクロスオーヴァーが本格化したことは、間違いなくこの7年間の大きなトレンドの一つだったし、その意味でもこの曲からスタートしたのは良い流れだったと思う。Brandyのようなベテランシンガーの活躍も非常に目立った。

2. Common - What Do You Say (Move It Baby) feat. PJ (2020)

 Common繋がりということで、昨年リリースされたアルバム「A Beautiful Revolution Pt 1」からこの曲を選んでみた。ラッパーもベテラン勢の活躍が多かったが、その中でもCommonはコンスタントにリリースを続けていて、現役感が最も強かったラッパーの一人だと思う。フックを歌うPJはヴォーカリストとしてだけでなく、ソングライターとしてもG EazyやTy Dolla $ignなどの楽曲を手掛けており、まさにTHISONE開店以降の時代に活躍したアーティスト!

3. Mac Miller - Dang! feat. Anderson .Paak (2016)

 2016年にリリースしたMac Millerのメジャー2作目「The Divine Feminine」から、Anderson .Paakをゲストに迎えたこの曲をチョイス。Anderson .Paakはこの7年間の客演王と言っていいくらい実に様々な作品に参加していた。Mac Millerは10代半ばから数々のミックステープをリリースして注目を集め、本作リリース時点ではまだ24歳。個性と才能に溢れたアーティストで、2018年に急逝したことが残念でならない。

4. Anderson .Paak - Tints feat. Kendrick Lamar (2018)

 Anderson .Paak繋がりで、2018年リリースの「Oxnard」から、これまでの彼の作品の中でも最も現場でプレイしている曲をプレイ。楽曲単位ではなく個人として存在感を示せるアーティストという点において、彼の登場はD'Angeloに匹敵するインパクトがあったと思う。共演は、ラッパーとして常に話題の中心に居座り続けているKendrick Lamar。制作中はそこまで深く考えていなかったけど、結果的にこのMixに相応しい選曲だったと思う。

5. Kendrick Lamar - King Kunta (2015)

 「To Pimp A Butterfly」収録曲。おそらく多くの人が2010年代のヒップホップにおける最重要アルバムとして名前を挙げると思う。Robert Glasperらジャズミュージシャンが多数参加しており、1曲目のAugust Greeneでも書いたヒップホップとジャズの融合という点でも象徴的な作品。アルバム全編好きだけど、DJ的にはこの曲を一番現場でプレイしています!

6. The Brand New Heavies - These Walls feat. N’Dea Davenport (2019)

 その「To Pimp A Butterfly」に収録されている”These Walls”を見事にカヴァーしたのが、UKの大ベテラングループThe Brand New Heavies。まるでソウル〜R&Bの往年の名作のような雰囲気が漂っており、彼らのアレンジの手腕の秀逸さだけでなく「To Pimp A Butterfly」が持つ音楽性の豊かも証明した一曲だと思う。この曲もよく現場でかけているけれど凄く反応が良い!アルバム「TBNH」自体も素晴らしく、是非とも聴いてほしいです!

7. St. Panther - Infrastructure (2020)

 昨年リリースされた西海岸在住アーティストによるインディーズ作品。この曲が収録されたEP「These Days」自体も実にカラフルな音楽性で素晴らしい作品!国や地域を問わず、インディーズの作品がアナログでも積極的にリリースされ、流通経路にしっかり乗って販売されていることも、この7年間での大きな出来事だと思う。カセットテープ人気の再燃などもあるし、音楽業界はアナログとデジタルの共存がある程度成立している分野かもしれない。初回プレスのアナログ300枚が即完売し、Michelle ObamaがEPの表題曲をSpotifyのプレイリストに取り上げて話題になった本作は、そんな現在の音楽業界のトレンドを象徴する一枚と言えるかもしれない。

8. You The Rock★ - Move The Crowd, Rock The House (2021)

 THISONE店内にもポスターが貼ってあるが、今年5月12日にThe Blue Herb RecordingsからリリースされるYou The Rock★の11年振りのアルバム「Will Never Die」からの先行シングル。TBHRそしてTBHは、Punpeeも参加したTha Bossのソロアルバムリリース(2015年)、日比谷野音での結成20周年記念ライブ(2017年)、そして5枚目の2枚組アルバムリリース(2019年)と、国内で最も精力的に活動していたレーベル/グループのひとつだったと思う。この曲はエレクトロ感の強いO.N.O.のビートがとてもフレッシュで、説得力とポジティブさを兼ね備えたYou The Rock★のリリックも素晴らしい!アルバムも楽しみ!

9. Buddha Brand - 生きる (2019)

 2019年にリリースされた「これがブッダブランド!」収録曲。1バース目から勢いよく飛ばすDev Largeの若者に対するストレートなメッセージ、続くCQの「夢は残酷だ/だけど夢が無ければもっと悲惨だ」というパンチライン、そして何より「生きる」というタイトルが胸に突き刺さる。2015年のまさにこの時期に届いたDev Largeの訃報には本当に驚いたし、追悼イベント開催日の道玄坂の光景は忘れられない。最後の最後まで、そして今もなお日本のヒップホップ界に影響を与えて続けている人物でありグループだと思う。

10. Toni Braxton - Dance (2020)

 この曲からギアを一段上げる感じの展開に。The Braxtons時代から数えてキャリア30年を超える大ベテランToni Braxtonが昨年リリースした「Spell My Name」からのセカンドシングル。アップテンポでキャッチーな楽曲全体に耳が奪われるが、最大の魅力はなんと言ってもその歌唱力。「Spell My Name」は単なる懐古趣味的なアルバムではなく、圧倒的な歌声を存分に楽しめる素晴らしい作品なので是非とも聴いてみてほしい!

11. Tuxedo - Watch The Dance (2015)

 シンガーを中心にマルチな活躍を見せるMayer HawthorneとプロデューサーのJake OneによるユニットTuxedoの登場は、この7年間のシーンにおける最大のトピックの一つと言えるだろう。キャッチーなメロディや音楽性によってマスに受け入れられただけでなく、西海岸の老舗レーベルStones Throwからのリリース、アンダーグラウンドヒップホップ~メインストリームまで幅広い活動歴を持つJake Oneの参加、そしてSnoop Doggy Dogg "Ain't No Fun"のカヴァー/リメイク的な楽曲"Number One"のシングルカットのリリースといった要素によって、コアなヒップホップ/音楽ファンの信頼を勝ち得たことも成功の要因だと思う。この曲が収録されているファーストアルバム「Tuxedo」(2015) はリスナーの期待値が相当に高まった中でリリースされたが、予想を遥かに上回る内容で大いに楽しませてくれた。当時再燃していたディスコ~ブギー人気を加速させる役割も果たしていたと思う。

12. The Goods - Walking On Fire (2020)

 オーストラリアのシドニーを拠点にしている3人組のバンド。世界的に活躍するプロデューサーやヴォーカリストによって構成されているだけあって、音楽的な引き出しの多さとセンスが素晴らしい。この曲が収められたアルバム「II」はとにかく洗練されていて心地良い。昨年リリースされた作品の中でもおすすめの一枚!
 
13. Yuna - Pink Youth feat. Little Sims (2019)

 マレーシア出身で、現在はLAを拠点に活動するシンガーYunaが2019年にリリースしたアルバム「Rouge」からの選曲。西海岸で活動するG-EazyやTyler, The Creator、あるいはアジア系〜アジア出身のJay ParkやMiyaviなど様々なアーティストなど招き、楽曲も多種多様でとてもカラフル!自らのキャリアや、多民族が共生するマレーシア〜アメリカ西海岸の地域性が反映されたようなアルバムだ。ここではナイジェリア系イギリス人のラッパーLittle Simzをフィーチャーした楽曲をチョイス。Yunaが生まれ育ったアロー・スターという街には以前観光で訪れたことがあるので、それだけで親近感が湧いてしまう。のんびりとした雰囲気の地方都市だった。

14. The Weeknd - After Hours (2020)

 今年行われた第63回グラミー賞で1部門もノミネートされなかったことが大きな話題となったThe Weekndの大ヒットアルバム「After Hours」のタイトル曲。The Weekndはエチオピア系カナダ人。彼のような出自のアーティストの活躍はもはや珍しいことでもなく、そのことが現在の音楽シーンだけでなく現代社会全体を象徴していると思う。

15. Joe Hertz - Colourblind feat. Collard (2020)

 サウスロンドンのプロデューサーで、UKを代表するDJのPete Tongを父に持つJoe Hertzのデビューアルバム「Current Blues」(2020)収録曲。ひたすらキャッチーで心地良く、爽やかさと哀愁が同居したナンバーが続き、まさにジャケットから連想される世界観がそのまま楽曲になったような素晴らしい作品だ。今回プレイした曲が気に入った方は是非ともアルバムをチェックしてみてほしい!

16. Tom Misch - Your Love feat. Alexa Harley (2015)

17. Tom Misch - South Of The River (2018)

 Tom Mischは、この7年間の音楽シーンで最も話題となったアーティストの一人。デビューアルバム「Geography」(2018) は日本の音楽ファンにも幅広く受け入れられたが、昨年アナログ盤が再発された「Beat Tape 2」(2015)、そして同じく昨年に初めてアナログ化された「Beat Tape 1」(2014)と、ミックステープ時代のディスコグラフィーを辿ると、彼の音楽的な源流がヒップホップにあることがよくわかる。今回はミックスの流れ的に「Beat Tape 2」と「Geography」から、いずれもヴォーカル曲を選択。"South Of The River"で見せるD'Angelo "Lady"のフレーズの大胆な引用は、彼がヒップホップの感覚と優れたポップセンスを持ち合わせていることを端的に象徴している部分だ。

18. Moonchild Sanelly - Come Correct (2020)

 南アフリカでシンガー/ダンサーとして活躍し、Beyonceの「The Lion King: The Gift」(2019) にも参加したMoonchild SanellyのEP「Nudes EP」(2020) 収録曲。様々なジャンルの要素をごった煮にしたような作品で、とてもパワフルなサウンドが楽しめる。その中からEPのラストを飾るダンスチューンを選曲。日本の童歌にも通じるような独特のメロディラインと疾走感溢れるサウンドの組み合わせが新鮮でかっこいい!

19. Anderson .Paak - Luh You (2014)

 3、4曲目に続き三度登場のAnderson .Paak。前曲のグルーヴを引き継ぐような楽曲をファーストアルバム「Venice」(2014) からチョイス。ちょうどTHISONEがオープンした年のリリースだ。当時は新譜をくまなくチェックしている一部のリスナーが本作に反応していたが、翌年にリリースされたDr. Dre「Compton」(2015) への客演やセカンドアルバム「Malibu」(2016) 、あるいはNxworries「Yes Lawd!」(2016) などで彼の存在を知った方も多いと思う。Minnie Riperton "Inside My Love"をサンプルした"The City"など、素晴らしい楽曲が揃った聴き応えのある作品!

20. Mark Ronson - Uptown Funk! feat. Bruno Mars (2015)

 "Luh You"に続く流れは今回のミックスで最も選曲に悩んだ部分だったけど、ふとSilk Sonicが頭に浮かびこの曲をチョイス。文句無しに良い楽曲なのだが、Bruno Marsの「24K Magic」(2016) も含めて、あまりにもヒットしてしまったことで、逆に現場ではプレイしにくくなってしまった印象がある。今回は後続にファンク色の強い楽曲を続けてプレイすることで、この曲本来の魅力であるファンクネスの部分に注意が向けられることを心掛けた。文脈(選曲やプレイの流れ)によって楽曲の印象を変えることは、DJプレイの一番面白い部分だと思う。

21. Boca 45 - Move A Mountain feat. Louis Baker (2019)

 UKのブリストルのベテランDJ/プロデューサーBoca 45が2019年にリリースしたアルバム「Forty Five」収録曲。Nasの主宰するレーベルMass Appealから発表されたことが意外だったが、中身はファンクネスとUKらしさに満ちている。ジャケットも表裏ともにかっこいい!今回のミックスでは"Uptown Funk"にも引けを取らないキャッチーさを持つヴォーカル曲をプレイ。楽曲の構成を生かしてファンキーな流れを作れたと思う。

22. Mofak - Do Better feat. Feevah (2018)

 フランスのマルセイユ出身のDJ/プロデューサーMofakのアルバム「Drunk Of Funk」(2018) 収録曲。現行のファンクはほとんど知識の無い分野だが、全ジャンルがコンパクトにまとまっていて新譜の回転が早い下北沢JET SETに行くようになってから、このようなヒップホップ以外のジャンルも積極的に買うようになった。全曲最高に気持ち良く素晴らしいアルバム!おすすめです!

23. Moniquea - Under Control (2020)

 ジャクソン・ファミリーの生地として知られるシカゴ近郊の都市ゲーリーで生まれ、カリフォルニア州パサデナで育ったシンガーMoniqueaが昨年リリースしたアルバム「Los Robles & Washington」(2020) の収録曲。同じくパサデナを拠点に活動し、日本人アーティストとのコラボレーション作品も多いXL Middletonが大半の楽曲を手掛け、Mofakも一曲参加している。今回選曲したのは疾走感溢れる楽曲だが、極太のファンクサウンドを軸に様々なチューンが収録されていて聴き応えのある一枚!こちらもおすすめ‼︎

24. Suff Daddy - Club Bob Needed More Sex Drugs (2020)

 ドイツ、ベルリン在住のプロデューサーSuff Daddyの2020年作「Pompette」収録曲。この作品には多くのラッパーやシンガーが参加しているが、ここではインスト曲を選択。ファンキーでシンプルなビートにキャッチーな声ネタを乗せた構成は、2000年前後に流行ったトラックスものやビッグ・ビートを彷彿とさせ、個人的にとても気に入っている曲だ。アルバムにはGuilty SimpsonやIlla Jなども参加していて、全体としては落ち着いたBPMの楽曲が多く、ヒップホップファンにもおすすめです!

25. Kaytranada - The Worst In Me feat. Tinashe (2019)

 ハイチ生まれカナダのモントリオールで育ちのプロデューサー/DJのKaytranadaが2019年12月にリリースしたアルバム「Bubba」収録曲。彼は今年のグラミー賞ベストダンス/エレクトロニックアルバム部門を受賞したが、この部門での黒人アーティストによる受賞は2005年の創設以来初めてだった。その意味でも本作は今回のミックスで取り上げたかった。多くのシンガーやアーティストが参加しているが、ミックスの流れからTinasheが参加したセカンドシングルを選曲。重量感溢れるサウンドが疾走する感覚が非常にかっこいい!

26. Mary J Blige - Telling The Truth feat. Kaytranada (2017)

 ラストもKaytranada関連作。大ベテランのR&BシンガーMary J Bligeの通算13枚目となるアルバム「Strength Of A Woman」(2017) から、Kaytranadaをフィーチャーした楽曲を最後の一曲に選んだ。プロデューサーにはBadBadNotGoodも名を連ねている。前の曲までの勢いをある程度残しつつ、落ち着いたテンションに着地できたかなと思う。Mary J Bligeは2021年に50歳となり、デビュー30周年を迎えた。同時期に活躍したシンガーやラッパー、プロデューサー達の多くが今もなお存在感とスキルを示していることこそ、90年代がR&Bやヒップホップの黄金期であった理由を端的に表していると思う。単なるノスタルジーではなく、純粋に才能を持ったアーティスト達がとにかく多い時代だった。

DJ H!ROKi - THISONE 7th Anniversary Mix (2021-04-28)

August Greene - Optimistic feat. Brandy (2018)
Common - What Do You Say (Move It Baby) feat. PJ (2020)
Mac Miller - Dang! feat. Anderson .Paak (2016)
Anderson .Paak - Tints feat. Kendrick Lamar (2018)
Kendrick Lamar - King Kunta (2015)
The Brand New Heavies - These Walls feat. N’Dea Davenport (2019)
St. Panther - Infrastructure (2020)
You The Rock★ - Move The Crowd, Rock The House (2021)
Buddha Brand - 生きる (2019)
Toni Braxton - Dance (2020)
Tuxedo - Watch The Dance (2015)
The Goods - Walking On Fire (2020)
Yuna - Pink Youth feat. Little Simz (2019)
The Weeknd - After Hours (2020)
Joe Hertz - Colourblind feat. Collard (2020)
Tom Misch - Your Love feat. Alexa Harley (2015)
Tom Misch - South Of The River (2018)
Moonchild Sanelly - Come Correct (2020)
Anderson .Paak - Luh You (2014)
Mark Ronson - Uptown Funk! feat. Bruno Mars (2015)
Boca 45 - Move A Mountain feat. Louis Baker (2019)
Mofak - Do Better feat. Feevah (2018)
Moniquea - Under Control (2020)
Suff Daddy - Club Bob Needed More Sex Drugs (2020)
Kaytranada - The Worst In Me feat. Tinashe (2019)
Mary J Blige - Telling The Truth feat. Kaytranada (2017)



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