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396 理科実験の事故


はじめに

多くの学校で理科の実験は行われていますが、実はその回数や分野が少なくなっているなんて話を最近よく聞きます。その理由の一つが理科実験の際の事故です。
今日の教育コラムでは、そんな理科の実験について少しお話してみたいと思います。

どんな事故が起きてるの

小学校や中学校の理解の学習内容によっても行う実験は違ってきますが、よくニュースなどにもなってしまうような事故として有名なものがいくつかあります。
例えば、酸素を発生させる実験の際に、二酸化マンガンと過酸化水素水を混ぜ合わせるときに熱が発生しますが、試験管から熱を持った液体が噴き出し、生徒が熱傷をするなどといったものがあります。
また、アンモニア水が飛散する事故により気化した気体を吸い込み、体調の異変等をもたらすといった事故もよく起きます。
事故が起きるたびに再発防止に向け万全を尽くすとしていますが、最近でもいくつかの中学校で実験用のゴーグルを付けずに実験を行い、実験に用いる溶液が飛散し目に入るという事故が起きています。
実験する教室の換気状況、用具の適切な使用状況、実験の手順や用いる薬品の適正量など、事故につながる原因は様々なところに潜んでいます。

実験する状況をどう作るか

硫化水素の実験は、特に事故の多いものです。そもそも、硫化水素の実験は必要なのかという議論があるくらい事故の件数が多いのです。
硫黄と鉄をまず化合して、硫化鉄をつくり、そこにうすい塩酸をかけると、 硫化水素という物質が発生します。
このように2つの反応を連続して行うこの実験では、鉄と硫黄を反応させる際には、とても明るく輝く反応が見られます。さらに、塩酸をかけると匂いのする気体が発生するわけです。
理科に関心を持たせる効果もありますし、硫化水素の臭いを覚えることで、自然界において同様の匂いを感じた際に命を守る行動ができるというわけです。
硫化水素が発生すると、温泉地で嗅ぐような卵が腐ったような臭いがしますが、この濃度が低ければ危険はないわけですが、高くなれば命の危険もあるわけです。最近では、オール電化の住宅が増えていますので、プロパンガスの臭いやそれに伴う火の怖さを知らない子どもたちも増えてきています。このような状況を見ていくと科学の実験はやはり重要な学びと言えるでしょう。
だとすれば、安全な実験環境をどのように整えていくかが重要になります。 理科の実験で事故を誘引する理由として学校の人員と施設の不足が最も大きな要因だと言えます。
指導者つまり実験を司っている教員の力量不足、経験不足も叫ばれていますが、それ以上に生徒の実験が正しく行われているかに目を注ぐ人員の不足が問題です。
教員が単独で30人に上の生徒の実験を行っている状況は、危険に対応できない状況だと言わざるをえません。現に、毎年、複数名の生徒が理科実験中の事故に遭遇していることを見ればそのことは理解できるはずです。
こうした理科実験の危険性を理解している学校では、元教員や大学院生らを理科アシスタントとして雇うなどといった対応をおこなっています。
しかし、多くの小中学校では、補助制度があったとしてもなかなか人員が行き届いていません。
では、せめて理科室に強制換気の設備を設置してほしいと考えるわけですが、こうした設備の充実ですらなかなか進まないのが学校教育の現場の現状なのです。換気システムは大変重要で、それさえあればさらに様々な実験が可能になります。
一部で理科の実験をなくせばとか、映像だけで学べばいいなどという提案をしている専門家もいますが、確かに行わなければ理科室での事故は減るでしょう。しかし事故は防げても自然の中や生活の中、災害時などに自分や家族の命を守る力が十分に身につくでしょうか。
実験という理科の楽しさを感じる場を奪うことでは、理科離れがさらにすすむだけで、問題の解決にはつながらないでしょう。
人員と設備の両方、または設備の充実のみでも進めば、理科実験の事故は軽減されていきます。教育にお金をかけない国の姿が、こうしたところにもあらわれてしまっていることを今こそ多くの人がしっかりと考える時期なのかもしれません。

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