K

和歌山県出身、藝大院在学中、社会学・メディア学、日英翻訳家、青毛ピアス

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和歌山県出身、藝大院在学中、社会学・メディア学、日英翻訳家、青毛ピアス

最近の記事

On the Road 〈前書き〉

3月、25歳の誕生日翌々日、昨冬に見限ったひとに会った。 そして「タイミング合わせて一緒にニューヨーク行く?」と言われた。まさに青天の霹靂である。 会った時はそんな言葉が来ることなんて予想だにしてもいなかった。そもそもニューヨークに戻る(2019年夏から約1年間住んでいたけど、コロナや大学卒業の関係で帰国)チャンスが、間も無く脱サラして大学院をはじめる新生活準備に追われていたあのタイミングでやってくるなんて、全くの計画外だ。 まあ、計画があるようでない人生なのだけど。 生

    • Hope Sandovalになれなかった思い出

      一年に数回、Mazzy Starを聴きたくなるフェーズが来るんだけど、今この瞬間がそれ。 その度に私にMazzy Starを教えてくれた先輩を思い出すなあ。 18の時、悲願の大学に合格して、憧れの東京にやってきたはいいけど、いざ来てみると意外とみんな普通で、ろくに音楽の話もできる人がいない。 期待はずれな街だな〜と思ってたら、Facebookで繋がった同じゼミの先輩が、私のいいねしたページ欄を見たかなんかで(今思えばこの人は相当私に興味持ってくれてたんだろうな)、「俺と音楽

      • 不自由のテキサス

        自分のSNSからはほとんどその痕跡を消したけれど、18から21になる前までテキサスにいた。 テキサスは想像通りマジでカウボーイがいて、果てしない平地にコピペしたような都市計画がある。家の形は3種類くらいしかなくて、それらが変わりばんこに並ぶ住宅街を抜ければ、終わりない空がすっぽり包むもと、意味不明にでかい施設が等間隔に設置されている。車がなきゃなんもできないし、車があっても特別いく場所もない。テキサスに通う私を見る教授に「絶対つまんない都市でしょ」とか言われたりして、たしか

        • 『EUPHORIA/ユーフォリア』から見える、ダークでタフなZ世代の生き方

          気づけばZ世代の話しかここに書いてない、いろんな視点ではあるけど。 今日もZ世代の話です。 ずっと観ようと思って観れてなかった話題になったHBOドラマ「EUPHORIA/ユーフォリア」シーズン1全8話を、一昨日から昨日にかけて一気観しました。 先に言っておくけど、このドラマの細かい解説とかは、他にたくさん丁寧に書いてあるサイトやブログがあるので探してください。 後、ネタバレダメな人はこの先自己責任でお願いしますね。いいレビューを書くつもりも、ストーリーを細かく書くつもりは

        On the Road 〈前書き〉

        • Hope Sandovalになれなかった思い出

        • 不自由のテキサス

        • 『EUPHORIA/ユーフォリア』から見える、ダークでタフなZ世代の生き方

          ピアスで位相を変える

          昨日ニップルピアスを開け、本日無事血塗れ起床。 なんでそんなとこに開けようと思ったかはさておき... 身体中に穴開けてる人がこぞって「一番痛かったのは乳首!」と言うのは有名な話で、心底ビビりながら、一応保険で別の箇所も検討していざ出陣。心の準備できてないのに見切り発車、私あるある。 ピアッサーさんに相談しようと思っていたけど、もちろん最終的に決めるのは自分。まだ心は準備できていなかったけど、ピアススタジオに着いている時点でもう別の選択肢なんてなかったですね。 ピアススタ

          ピアスで位相を変える

          Z世代と性生活の話

          2021年2月に書きかけてすっかり忘れていたやつ。せっかくなので続きを書いて公開。 まず導入として、昨年秋に発表されたAriana Grandeの新アルバム「Positions」の話から。 発表されてすぐにSNS上で話題を集め、本国アメリカではTikTokチャレンジに使われたりなど初手から快調なスタートだったと思います。私も最初は軽くしか聴いてなかったんですが、あまりに耳にするので自然と歌詞まで覚えちゃってる曲もあったり... 私自身アリアナはちゃんと追ってなくて、彼女

          Z世代と性生活の話

          終章 アジア人としてのHip Hopとの交流

          前章でも少し触れたが、日本におけるHip Hopというものは、未だアンダーグラウンドな印象が強い、好んで触れない限りは遠い存在ではないだろうか。筆者自身も、ニューヨーク市で生活するまではHip Hop文化とはほぼ無縁な生活を送っていたし、正直興味もあまりなかった。しかし渡米をきっかけに、その価値観は180度変わることとなった。ストリートアートにあふれた街並みを見ながら通学し、地下鉄に乗ると、車両中に響く音量でラップミュージックを聴きながらブレイクダンスをしている乗客に出会うこ

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          終章 アジア人としてのHip Hopとの交流

          第4章 ニューヨーク市Gen Z世代におけるHip Hopの意義

          4.1 Gen Zの定義

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          第4章 ニューヨーク市Gen Z世代におけるHip Hopの意義

          第3章 2020年ニューヨーク市に応答するラップミュージック

          3.1 社会に直接届けるブラックの声としてのラップミュージックHip Hopと言われれば、まず音楽ジャンルであるラップミュージックを想像する者も多いだろう。そのラップミュージックの起源はニューヨーク市ブロンクス区南部にあるとされている 。 ブロンクス区はニューヨーク市の5行政区の中でも最も貧しい地域として知られている。その理由はハーレムと同様で、ブロンクス区は元々ヨーロッパ系ギャングが蔓延っていた地域であり、その治安悪化により当時多くの物件が余っていたことと、「アフリカ系アメ

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          第3章 2020年ニューヨーク市に応答するラップミュージッ…

          第2章 ストリートアートとBlack Lives Matter運動

          2.1 ニューヨーク市におけるストリートアートの認識ストリートアートは英語でGraffitiと呼ばれ、建物の外壁や公共物にスプレー缶などで違法に描かれる落書きのことを指す。街におけるストリートアートの存在は、その違法性から該当エリアの治安レベルとよく結び付けられる。知らない地域に行った際にストリートアートが多く目に入ってくれば、なんとなく治安が心配になり胸騒ぎがする経験をしたことがある人もいるのではないだろうか。 ニューヨーク市でのストリートアートの発生も、治安悪化に関連して

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          第2章 ストリートアートとBlack Lives Matter運動

          第1章 ニューヨーク市とブラックコミュニティ

          1.1 Black Lives Matter運動までのニューヨーク市ブラックコミュニティの歴史1.1.1 南北戦争終了まで アメリカでの黒人差別の歴史は、ヨーロッパ諸国植民地時代に実施されていた奴隷制度にまで遡る。それはニューヨーク市でも同様で、ニューヨーク市がオランダの植民地「ニューアムステルダム」として知られていた1626年に最初の黒人奴隷が流入したとされる 。18世紀当時のニューヨーク市の人口の五人に一人が黒人であったとされ、そのほとんどが奴隷であった。1709年から1

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          第1章 ニューヨーク市とブラックコミュニティ

          序章 2020年ニューヨーク市に対峙するHip Hop

          0.1研究の背景と目的2020年は世界中のどの地域でも予想だにしないイベントが起こり続けた、いわば異常事態イヤーであることは周知の事実だ。特にコロナウイルスの世界的流行は、市民の健康を脅かすだけでなく、経済や政治をも動かす要因となった。「世界の中心」とも呼ばれるアメリカ合衆国・ニューヨーク市は特にその大きな被害を受け、2020年10月現在までに約2万3千人もの市民が命を落とした。そのように、コロナウイルスの影響をもろに受けたニューヨーク市は3月22日よりおよそ3ヶ月間のロック

          序章 2020年ニューヨーク市に対峙するHip Hop