【6月26日限定】kindle日替わりセール! ウェス・ブッシュ著『PLG プロダクト・レッド・グロース「セールスがプロダクトを売る時代」から「プロダクトでプロダクトを売る時代」へ』試し読み
2023年6月30日限定で『PLG プロダクト・レッド・グロース「セールスがプロダクトを売る時代」から「プロダクトでプロダクトを売る時代」へ』がkindleで日替わりセールを実施します。
通常価格2,310円→キャンペーン価格499円の超お得なセールです!
本記事では対象書籍の「はじめに」「監訳に寄せて」を試し読みいただけます。
はじめに
何を売るかと同じくらい、どう売るかが重要であることを歴史が証明している。ブロックバスターがNetflix(ネットフリックス)に敵わなかったことから分かるように、問題は、売り方を「革新するかどうか」ではなく、「いつ革新するか」の判断だ。
私がこの本を書こうと決めた大きな理由は、あるスタートアップに関わり、本書でご紹介するプロダクト・レッド・グロース(PLG)の威力を直に目撃したからだ。
そのスタートアップは、よく冷えた冬の日、カナダのテクノロジー都市として知られるオンタリオ州ウォータールー市で誕生した。居心地の良いロフト部屋に、ベニヤ板のテーブルが置いてあり、そこに50人のワーカーが各々のノートパソコンを隣同士に並べ熱心に働いていた。みんな、ビデオ技術に夢中だった。
この会社では、家族や友人、同僚、ユーザー、さらには見込み顧客とも、ビデオ通話でやりとりすることがあたりまえだった。当時は珍しがられたが、ちょうどビジネス界ではビデオ通話が流行りはじめたころで、エキサイティングな時代だった。
賢い投資家たちはこの流行の波に乗ろうと、ビデオ通話に関連した企業に金を注ぎ込んだ。同社もその恩恵を受け、開発したばかりの新しいビデオホスティング技術をマス市場向けにプロモーションするなど、マーケティングに多額の予算があてられるようになった。
そして、私はそのマーケターの1人だった。数えきれない顧客獲得チャネルにかなりの額を費やし、リード獲得のために全力を注いでいた。
だが、ばかばかしいほどの予算を浪費するうちに、顧客獲得にまつわる「そもそも、なぜ」という疑問が浮かぶようになった。
なぜ自分は、営業資料をばらまくのに30万ドルも費やしているのだろう、と。
もちろん、理由を説明するのは簡単だ。それは契約に飢えたセールスチームを満足させるため、リードを獲得するためだ。だが、そもそも、その目的を果たすのに営業資料を使う必要があるのだろうか?
我々はごく一般的で使い古されたマーケティング戦略を参考にしていた。それは、コンテンツをつくり、リードを獲得するためにランディングページを用意し、相手が有料ユーザーになる(または退会する)までこつこつ自動メールを配信し続ける、といった手法だ。このような作業に身に覚えがある方も多くいることだろう。
この古びたマーケティング戦略は何かがおかしいと気がついたのは、あるフリーミアムプロダクトの立ち上げに携わったときだった。ここでは、ユーザーにプロダクトの価値をより簡単に体験してもらえるようにしたことで、1年も経たないうちに10万ユーザーも集める強力な顧客獲得モデルへと変革させることができたのだ。
この経験を通して、私は長年感じていた違和感を払拭し、ある考えが確信に変わった。それは、真に素晴らしいソフトウェア会社は、プロダクト主導で設計されているということだ。
この結論に至るのは、さほど難しいことではない。私たちは商品を買う前にまず、試してみたいと思っているはずだ。あなたの日々の生活を思い返してみてほしい。香水、新しいスーツやシャツ、サングラスにしても、買う前にまずは試してみたいと思うはずだ。
商品の購入を決める際、事前にそれを試すことは、これまでも、そしてこれからも大事なプロセスだ。そして、ソフトウェアにおいても同様のプロセスが求められている。PLGを取り入れた企業は、この避けては通れない消費者トレンドに添ったビジネスモデルを展開している。
今後、SaaS市場が進化するにつれ、企業はつぎの2つのタイプに分かれていくだろう。
1.セールス主導型カンパニー
セールス主導型カンパニーは、従来の売り方を象徴している。売る商品は複雑で、必ずしも必要とは限らず、高価だ。購入してもらえるかどうかは、消費者をいかに説得できるかにかかっている。このタイプに当てはまる企業は、消費者を独自のセールスサイクルに乗せようとする。
2.プロダクト主導型カンパニー
プロダクト主導型カンパニーはこの旧来の営業モデルを逆にしたものだ。つまり、見込み顧客を長く決まったセールスサイクルに乗せようとするのではなく、かわりにプロダクトを自分で試せる「鍵」を与える。おかげで、いかに有料プランへのアップグレードを促すかといったことに頭を悩ませる必要はなくなり、ユーザーにより便利なサービスを提供するための改善に注力することができる。
今の時代、強いブランド力と社会的信用だけでは、消費者からの信頼を勝ち取ることはできない。購入してもらう前に、プロダクトを試せる権限を与える必要がある。PLGは、まさに、それを実践可能なビジネス戦略に落とし込んだ手法だ。
現代の消費者に自社のプロダクトを購入してもらえるよう、プロダクト主導型モデルに方向転換するか、それともなにもせず新しいトレンドに押しつぶされるか、いま、私たちは決断を迫られている。
監訳に寄せて
新型コロナウイルスの影響で世の中の働き方は大きく変わった。オンラインシフトが一気にすすみ、Zoom(ズーム)、Slack(スラック)、Dropbox(ドロップボックス)など多くのサービスが新時代のビジネスインフラを担うようになった。これらのプレイヤーが皆、同じ成長戦略を採用していることをご存じだろうか?
それは、プロダクト・レッド・グロース(PLG)─2016年に米国のベンチャーキャピタルであるOpenView(オープンビュー)が提唱した成長戦略だ。フリーミアムを駆使してユーザーを獲得し、バイラル効果でユーザーベースを広げていく。そして、ユーザーがもっと機能を使いたいと思う絶妙なタイミングで課金をうながす。B2Cにおけるグロースハックの概念をB2Bに応用した考え方である。
現在、米国のソフトウェア・スタートアップ業界において、「2020年はPLG時代」ともいわれ、成長戦略のメインストリームとなりつつある。ではなぜ、ここまでPLGが注目されるようになったのか? その答えはソフトウェアの歴史にある。
ソフトウェアの時代は、大きく3つに分かれるといわれている
まず、2000年以前の営業主導の時代。インストール型のソフトウェアを長い時間をかけてクライアントの経営層に提案する。トップ営業が製品導入の意思決定に不可欠な時代であった。
その後、2000年以降にかけ、Salesforce(セールスフォース)の登場により時代はマーケティング主導へと変化していく。オンプレミスからクラウドへとソフトウェアの主流が変わり、プロダクト導入コストは大幅に下がった。これにより、ソフトウェア購入の意思決定者層の裾野が広がり、ベンダー側もトップ営業からインバウンドマーケティングを主軸に据える戦略に変化をしていった。インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス、分業化により、効率的に商談を進めることが求められる時代になった。
そして今、時代はプロダクト主導の時代へと急速に転換しつつある。テクノロジーの進化でユーザーは自由にプロダクトを選び、試すことができるようになった。営業担当者がコンタクトするよりも先にユーザーはプロダクトにアクセスし、プロダクトの価値を見定めてしまうのだ。
サブスク型サービスやアプリなど、試したい時にすぐに試せる環境に慣れてしまった私たちは、「いかに早く、プロダクトの価値を感じることができるか?」があたりまえになっている。気になるプロダクトやサービスをすぐ試したいのに、トライアル申し込みフォームで、名前、メールアドレス、企業名、職位、業界、従業員数など多くの情報を入力させられてストレスを感じる、といった体験をしたことはないだろうか。
ユーザーにフリクション(摩擦)を与えて、個人情報を取得する、商談に持ち込むという旧来の考え方は、こうしたユーザーマインドの変化に置き去りにされているといっても過言ではない。セールスがプロダクトを売る時代は終わり、プロダクトでプロダクトを売る時代へと一気にパラダイムシフトが起きたのだ。
本書では、自らも事業経験のあるウェス・ブッシュが様々なフレームワークを駆使しながら、新たに到来したプロダクトの時代を生きるための術を具体的かつ実践的に解説している。PLGを選択するためのM(マーケット戦略)O(オーシャン状況)A(オーディエンス)T(タイム・トゥ・バリュー)フレームワーク、バリューメトリクスの見つけ方、オンボーディングのためのボウリングレーン・フレームワーク。実際にPLGを活用している各社の事例も多く交えながら、明日からの一手につながる、わかりやすい知見が詰まっている。
著者も本文中で言及しているが、PLGはすべてのプロダクトにあてはまるわけではない。フリーミアムやフリートライアルという、うまくいけば爆発的なユーザー獲得につながる一方、間違えると売上をすべて失うリスクのある施策を取り扱うので、盲目的にPLGを導入することは、自らの首を締めることになりかねない。自社でPLGを検討するという方は、本書のフレームワークを活用しながら、自社のプロダクトはPLGに適するのか、慎重に見極めていく必要があることに要注意である。
また、PLGは完成された成長戦略ではなく未だ進化し続けている。米国ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツは、PLGのボトムアップ・アプローチと従来の法人営業のトップダウン・アプローチを融合した「グロース+セールス」という考え方を提唱している。同時に、ボトムアップ・アプローチのPLGだけでは、大手企業の大規模導入の機会を逃してしまう可能性もあるとの警鐘を鳴らしている。PLGはあくまで、成長戦略の選択肢の1つであり、この手法1つで成功できるという唯一無二の武器ではない。
そして、最も大事なことは、ユーザーにとってマスト・ハブであるプロダクトが前提にあるということだ。PLGを本書に則って実践しても、そもそものプロダクト・クオリティが低ければ元も子もない。ユーザーペインを解決する芯を食うソリューション、魅力的なデザイン、プロダクトの本源的価値に誘うUI/UX、すべてを兼ね備えた上で、PLGが活きてくるのだ。
プロダクト導入の意思決定者は、経営者から部門責任者、そしてエンドユーザーへと変化してきた。成長戦略も意思決定者層に最適化され、時代と共に変化を遂げている。エンドユーザー中心となった今、PLGの流れを知ることは、これから10年続くプロダクト主導の新時代を生きる羅針盤となる。2010年台後半、海外から沢山のSaaSノウハウが日本に流入し、多くのSaaSスタートアップが非連続な成長を遂げていった。
PLGが体系的に日本に紹介されるのは本書が初となる。本書を起点にPLGの体系的な知見が広がり、日本でも多くのPLGを実践する企業がうまれ、日本のプロダクトが世界中に広がる日が来ることを期待している。
株式会社UB Ventures 岩澤 脩
続きが気になる方は
目次
Part I 戦略をデザインしよう
第1章 PLGの重要性が急速に増しているのはなぜ?
第2章 武器を選ぼう―フリートライアル、フリーミアム、デモ、どれが最適?
第3章 海(オーシャン)のコンディションを調べる――あなたのビジネスはレッド・オーシャン? それともブルー・オーシャン?
第4章 オーディエンス――販売戦略はトップダウン型とボトムアップ型のどちらか?
第5章 タイム・トゥ・バリュー――いかに早く価値を示すことができるか?
第6章 MOATフレームワークでPLGモデルを選ぶ
Part II 自社ビジネスの基盤を築こう
第7章 プロダクト主導型ビジネスの基盤を築く
第8章 プロダクトの価値を理解する
第9章 プロダクトの価値を伝える
第10章 価値を提供する
第11章 プロダクト主導型ビジネスにおける最もよくある過ち
Part III 成長エンジンに火をつけよう
第12章 最適化プロセスを開発する
第13章 ボウリングレーン・フレームワーク
第14章 ユーザーごとの平均収益(ARPU)を上げる
第15章 チャーンビーストをやっつける
第16章 真に成功している企業はなぜプロダクト主導型なのか?
著者について
ウェス・ブッシュ Wes Bush
プロダクト・レッド・インスティチュートの創業者・学長。日々、教壇に立ち、どのようにすれば旧来の営業手法から離れ、プロダクト・レッド・グロース・メソッドを使ってSaaSビジネスの成長エンジンに火をつけることができるかを教えている。
ウォータールー大学グローバルビジネスおよびデジタルアーツ学部卒業。ビジネスコンサルタントとしても多くの信頼を得ており、並外れた優れたプロダクトから得られる価値は、きらびやかなマーケティングや売り込みと引き換えにできるものではないことを理解している。
訳 八木映子(やぎ・あきこ)
岡山県生まれ。幼少期と学生時代をカナダ・東京・ハワイで過ごす。大学卒業後、国内システムインテグレーター会社勤務。大学院卒業後、ITリサーチ会社にてカスタマーサクセスに従事。
現在は主に事業会社にてウェブサービスの顧客関係管理を担当中。
監訳 岩澤 脩(いわさわ・おさむ)
ベンチャーキャピタリスト UB Ventures代表取締役 マネージングパートナー
リーマン・ブラザーズでの産業調査、野村総合研究所での経営コンサルティング・M&A・事業再生業務を経て、2011年ユーザベースに参画。
日本・アジアでの事業立上げに従事後、2018年より現職。国内外20社を超えるSaaSスタートアップへの投資・成長支援を行う。慶應義塾大学理工学研究科修了(工学修士)。
監訳 高野泰樹(たかの・たいじゅ)
UB Venturesベンチャーパートナー
2018年UB Venturesに参画。国内外SaaSスタートアップへの投資業務に従事後、2021年より熊川哲也主宰のK-BALLETに参画、プロデューサーとしてバレエ企画・製作業務を掌管。現在UB Venturesでは、ベンチャーパートナーとしてPLG企業への投資・成長支援を行う。
国際基督教大学教養学部卒業。
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仕事でも、ZOOMやSlackを利用しています。サービスが広がっていった背景にある戦略、ぼくもこれから読むのが楽しみです。 (営業部伊東)
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