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「反省」と「内省」は違う!経験から学ぶリフレクション #リフレク本

「振り返りがうまくできない」、「振り返りをしていても、次に生かせていない」と悩んだ経験はありませんか?そんなみなさんに、すべての経験を学びに変え、成長につなげるために有効な「リフレクション」という力をご紹介します。
リフレクション(Reflection)とは、自分の内面を客観的、批判的に振り返る行為であり、日本語で言うところの「内省」です。経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」としても重視されています。
※本記事の内容は2021年3月19日発売の『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』より一部抜粋したものです。

経験から学ぶ

目的やビジョンが動機の源につながると、ゴールに向かうためのエネルギーが湧いてきます。しかし、ありたい姿に到達するまでには、様々なハードルがあるはずです。このハードルを越えていくために、ここでは「経験から学ぶリフレクション」を紹介します。

リフレクションと反省を区別する

まず最初に、みなさんと認識を一致させたいことがあります。それは、リフレクションと反省は違うということです。リフレクションも反省も、過去の経験を振り返る行為ですが、振り返る目的が違います。

反省した場面を思い出してみてください。変えることができない過去の間違いを振り返り、言動を悔いたり、重たい気持ちになったりした経験があるのではないでしょうか。あるいは、誰かに責任を追及されたり、評価を下されたりするような、そんな残念な経験だったかもしれません。

リフレクションの目的は、経験からの学びを未来に活かすことです。リフレクションの前提には、「成功しても、失敗しても、いずれにしても、経験したからこそ知っていることがある、経験を知恵に変えることができる」という信念があります。

リフレクションを行うのは、経験を通して賢くなりつづけるためです。良質なリフレクションを行えば、成功も失敗も、その経験を叡智に発展させることができます。

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ですから、失敗をポジティブな気持ちで振り返る力が欠かせません。新たな価値を創造しようというときに、失敗を悔やみ立ちすくむようなら、イノベーションは起こせません。うまくできることだけやっていても、難しい問題は解決されず、成長も進化もありません。

何かにチャレンジして失敗したときに、「できない」と思い込むのか、「これからできるようになる」と可能性に目を向けるのかで、経験から得られる学びの質が変わります。あらゆる経験を糧にするために、「経験から学ぶリフレクション」を身につけましょう。

内面のリフレクションが学びにつながる

経験から学ぶリフレクションには、コルブの経験学習サイクル(図1-10)が欠かせません。

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 経験学習サイクルは、①経験する、②振り返る、③法則を見出す、④次の計画に活かすという4つのステップを繰り返すことで、経験から学ぶ力を高めます。本書では、コルブの経験学習サイクルを実践する際にも、認知の4点セットを使います。

私は以前、350店舗を運営する教育事業会社で、エリアマネジャーと店長の育成に10年ほど取り組んだことがあります。その組織は経営理念に「学び」を掲げていたこともあり、そこに集まる人々はとても優秀で学ぶ意欲も高く、真剣に経験学習サイクルを回す様子が見られました。

しかし、同じように経験学習サイクルを回しているように見えても、学んで成長する人と、学べない人がいました。その理由を調べて明らかになったのは、経験学習に4つのレベルがあるということです。レベルの低いリフレクションをしてばかりでは、自分の成長にはつながらないのです。

経験学習のレベルは、次の4つに分かれています。

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<レベル1 結果のリフレクション>
レベル1は、出来事や結果についてのリフレクションです。事実を正しく捉えるためのリフレクションはとても大切ですが、経験の振り返りがこのレベルに終始していると、経験を学びに変えることはできません。

<レベル2 他責のリフレクション>
レベル2は、他者や環境についてのリフレクションです。どれだけ時間を費やしても、他者や環境に原因を求めていては、未来を変えるヒントを得ることはできません。
人材育成のリフレクションでは、多くの人がレベル2に終始しています。「指導に時間を費やしているのに、部下が育たない」と悩む人は、部下の課題に神経を集中させています。しかし、ここで留まっていてはいけません。状況を変えたいのであれば、部下の課題を横に置いて、自分の関わり方や指導方法についてリフレクションを行いましょう。

<レベル3 行動のリフレクション>
レベル3は、自分の行動についてのリフレクションです。自らの行動を振り返り、結果と結びつけることで、次に取るべき行動が見えてきます。しかし、「自身の行動を振り返っても、状況を変えることができない」と悩んだ経験もあるかもしれません。
経験を振り返っても、次の打ち手を試してみても、課題を解決できないときには、行動の前提にある自分の内面に意識を向ける必要があります。

<レベル4 内面のリフレクション>
レベル4は、自分の内面のリフレクションです。行動の前提にある持論(過去の経験から導かれた法則)を、認知の4点セットで振り返ることで、行動の前提にある自分の考えを俯瞰することが可能になります。本書では、レベル4の「経験から学ぶリフレクション」ができるよう解説します。

私たちの行動の前提には、「こうすれば、うまくいくはずだ」という考えがあります。意識せずとも、過去の経験で培った知恵を活かし、日々行動しているのです。
ところが、ときどき、過去の経験に基づく成功法則が通用しないことがあります。そんなときには、「こうすれば、うまくいくはずだ」と思っている自分の内面を振り返る必要があります。

変化の激しい時代には、前例を踏襲することはリスクを伴いますから、自己の内面を振り返るレベル4のリフレクションの習慣は、ますます重要性が高まっていきます。

自己完結する仕事は少なく、他者や環境を無視することはできません。しかし、他者の状況や環境を正しく認識した上で「自分の仮説はどうだったのか」「何を変えれば『ありたい姿』に近づけるのか」を考えていくのが、成長につながるリフレクションです。

著者プロフィール
熊平美香(くまひら・みか)

昭和女子大学キャリアカレッジ 学院長
一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事

ハーバード大学経営大学院でMBA取得後、金融機関金庫設備の熊平製作所・取締役経営企画室長などを務めた後、日本マクドナルド創業者に師事し、新規事業開発を行う。1997年に独立し、リーダーシップおよび組織開発に従事する。2009年より日本教育大学院大学で教員養成に取り組む傍ら、未来教育会議を立ち上げ、教育ビジョンの形成に尽力。2015年に一般社団法人21世紀学び研究所を設立し、リフレクションの普及活動を行う。昭和女子大学キャリアカレッジではダイバシティおよび働き方改革の推進、一般財団法人クマヒラセキュリティ財団ではシチズンシップ教育に取り組む。Learning For All等教育NPO活動にも参画。文部科学省中央教育審議会委員、内閣官房教育再生実行会議高等教育ワーキンググループ委員、国立大学法人評価委員会委員、経済産業省『未来の教室』とEdTech研究会委員などを務める。2018年には、経済産業省の社会人基礎力に、「リフレクション」を提案し、採択される。著書に 『チーム・ダーウィン「学習する組織」だけが生き残る』(英治出版)がある。


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